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クールジャパン機構 新CEO・北川直樹氏が語る、これまでの5年間と次の5年への展望

「クリエイティブな発想からグローバルシナジーを生み出す」
 日本のコンテンツやサービスの海外需要開拓や拡大を支援するクールジャパン機構が本年6月に経営体制を刷新し、7月30日には新体制による今後の方針が示された。新社長は元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役で日本レコード協会会長も歴任した北川直樹氏。エンタテインメント分野をはじめとする投資の展開を今後どのように進めていくのか、ご本人に伺った。

民間企業と近い距離で海外需要を開拓、促進

――クールジャパン機構の代表取締役CEOに就任されました。その経緯を改めて教えてください。
北川直樹世耕弘成経済産業大臣に「エンタテインメントを熟知している方に代表取締役を務めていただきたい」とおっしゃっていただき、まずは真摯にその言葉を受け止めました。SMEやレコード協会を通じて、これまでにも長く海外展開については考える立場にありましたので、民間の海外展開を支援する役割を担うクールジャパン機構の仕事を務めることができるのではないかと判断し、最終的にお受けしました。

――専務取締役COO兼CIOに就任した元ペルミラ・アドバイザーズ日本法人代表取締役社長の加藤有治氏の起用には、どのような点で期待を持たれていますか?
北川直樹加藤氏の起用にあたっては、経済産業省やクールジャパン機構で議論のうえ、お願いされたと聞いています。私はSME時代にソニー全体のグループシナジーを考えて事業投資をする際などに、投資会社様とのお付き合いはありましたが、投資の実務そのものについての経験はございません。ですから、投資の実務面では、加藤氏を非常に頼りにしています。イギリス系投資会社のトップも務めた加藤氏は、投資について当然ながら十分に理解されていますから、日々勉強させてもらっています。また現地の視点で投資のグローバルシナジーを考えていくことは、加藤氏のこれまでの経験が活きることになるでしょうから、期待しています。

――では、ご自身の経歴から、クールジャパン機構の代表者としては何が期待されていると考えていますか?
北川直樹エンタテインメント分野の方が海外展開に対して真剣に取り組まれようとしているのは十分に理解していますので、海外需要を開拓し、促進する組織に今いる私ができる一番重要なことは、民間会社の方々と近い距離感でいることだと思っています。たとえば、成長を続けるアジアで何かやってみたいと考えていらっしゃることがあれば、ぜひ私どもにお話しいただき、そのつど我々ができることを考えていき、情報をフィードバックしながら、対話を進めていきます。北川の顔を知っているということで、導入のハードルが下がるはずです。ちょっと聞いてみたいということがあれば、いつでも相談ができるような組織にしていきたいと思っています。

――投資対象は(1)メディア・コンテンツ(2)食・サービス(3)ライフスタイル・ファッションに加えて、観光・インバウンド、インターネットなど切り口の違う業種横断も検討を進めていく方針が発表されました。
北川直樹設立当初から変わらない活動方針となります。我々は民業を圧迫せずに民間ができないようなリスクマネーの供給を積極的に行う立場にあります。これは大変難易度の高い命題ですが、多方面からマトリックスを考え、キャッシュフローを重視した投資などを行い、グローバルシナジーを追求していきます。

――なかでも「波及効果」を強調されていますね。
北川直樹1つの作品のなかにはいろいろな要素が含まれています。音楽でしたら、アーティストの髪型から立ち振る舞い、ライフスタイルなどもそうでしょう。そこから生まれる影響力は計り知れないものがあります。こうした波及効果は、エンタテインメントに限らず、ほかの業種からも見込めます。ライフスタイル分野の投資先であるSAS ENISさんがパリで日本の伝統工芸品を販売するセレクトショップを展開されています。これが現地で大変な人気を集めております。販売している数量や店舗展開から見ると、規模は決して大きいものではありませんが、現地で長期的に展開していくことで大きな効果に繋がっていきます。日本で丁寧に作られている伝統工芸品のなかから、確実に現地に届くものを選ばれて、丁寧に売っていくというリレーションのすべてを丁寧にやられています。

――音楽関連では「Zepp」を拠点にしたアジア展開がありますね。音楽業界のクールジャパンの動きについては現在の立場からどのように感じていますか?
北川直樹欧米、日本、アジアの状況を見たときに、日本の音楽は厳しい、アメリカは復活しているなどと言われていますが、どの軸で見るかによってその見方は変わるのではないかと思います。コンサートホールの運営からアーティストまで、いろいろな方々が音楽業界に携わっていらっしゃっているなかで、多くの方が海外ビジネスについても真剣に考えられていますから、そういった皆さんと対話するなかで新たな海外需要が作られると思っています。

クールジャパン投資にはイマジネーションが必要

――政府出資額は586億円が投じられており、世間からは厳しく見られてもいます。
北川直樹反応する民意は避けられないものだと思います。1つひとつの案件について時間をかけて調査し、投資するまでの間にトライアンドエラー繰り返しながら精査しています。出資後もそのつど、各案件から報告を受けています。クアラルンプールの三越伊勢丹の店舗についても実際に事業展開するなかで、現地のニーズに対する調整が遅れ、改善の方向性として「クールジャパン発信」だけではないアプローチも必要ということになりました。そのため当機構の“目的”に縛られない事業を行うために、三越伊勢丹側が独自に展開できるよう、エグジットに至ったわけです。このように事業者側の海外展開と「クールジャパン発信」は必ずしも一致しないケースがあります。今後もクールジャパンを発信していくという目的に変更はありませんが、現地のニーズを汲み取りながら適宜、違う要素を入れたり、必要ならば早い段階でのエグジットも検討する必要はあると思っています。

――三越伊勢丹店舗の撤退の判断は新体制によるものでしょうか。
北川直樹決定したのは私の就任前の話になります。オブザーバーとして会議には出席していましたが、いくつもの会議や議論を重ねながら、慎重に判断した結果であると受け止めています。

――ガバナンスの強化はどのように図っていきますか?
北川直樹クールジャパン機構は約70人の体制でこれまで620億円を投資しています。もちろん、回収率については100点満点ではないことも理解しています。規律性をもったファンドのやり方はそのままに、国の判断も加えられながら、会議時間の調整や効率性なども考慮してガバナンスの強化を図っていきます。

――5年間で29件、620億円の出資額。撤退もあるなか、案件の数を絞っていく方針なのでしょうか。
北川直樹むしろ投資規模を大きくしていくことを考えています。経済に見合うコストを考えると、大規模投資も考えていく余地があるからです。クールジャパンが届いていくもので、リターンがきっちりあるものという方針を変えずに、視点を変えていきたい。バイアウトなども含めて、投資の手法を多様化させていくやり方も1つあると思っています。

――クールジャパン施策が、実態から離れているように感じることはありませんか?
北川直樹会社名の「クールジャパン機構」という言葉の響きが一人歩きしているようには感じています。「クールジャパン」という名前がわかりやすいからでしょうが、これまでの批判のなかにはクールジャパン機構が手掛けていない案件も含まれているようにみえます。本来の正式名称である「海外需要開拓支援機構」という名前の方が事業の本質がわかりやすい。海外の需要を開拓して支援していくという原点を打ち出していった方が良いのではないかと思うところはあります。それはとても重要なポイントだと思っています。我々の事業に対して認識を持たれていることは素晴らしいことですが、実を遂行していくやりやすさも考えていく必要があります。

――存続期間は約20年となっています。設立からのはじめの5年間をどのように分析されていますか?
北川直樹未知の領域に取り組んだはじめの5年は大変だったと思います。5年の期間で試すことができなかったことを、新たな視点でこの先の5年で進めていくと、自ずと答えが出てくると思っています。案件によって、場所もプレイヤーも異なりますから、すべての案件について1から精査し、実行していく繰り返しのなかで、精度も上がっていくでしょう。相手先がいますから、その国の方々がどのようなことを考えていらっしゃるか、何を望んでいるのかをいち早く掴んでいくことも重要です。そこに民業を圧迫しないことが命題にありますから、イマジネーションも必要になります。ファンドは横ではなく、縦に変えていくという考え方が私にとって新鮮に感じています。

――最後に、今後の中長期的な展望や成長イメージについても教えてください。
北川直樹案件によって時間軸や求める効果も異なります。投資事業の価値は世界の状況が変わることで100倍の価値にもなります。たとえばJapan Centre Groupとともにロンドンで開業したばかりのフードマーケットは思わず感心してしまう洗練さです。今後の展開に期待できます。国をまたいだグローバルシナジーは今後もクリエイティブな発想から生まれていくものだと思っています。
(文/長谷川朋子 写真/逢坂聡)
北川直樹氏/海外需要開拓支援機構 代表取締役社長CEO
Profile/きたがわ なおき
1953年生まれ。1977年に中央大学商学部卒業、CBS・ソニー入社。1993年、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント出向。2001年、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ代表取締役に就任。2007年、ソニー・ミュージックエンタテインメント 代表取締役 コーポレイト・エグゼクティブ CEOに就任。2011年、日本レコード協会 会長に就任。2015年、ソニー・ミュージックエンタテインメント 代表取締役副会長に就任。2018年6月、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)代表取締役社長CEOに就任(現職)

提供元: コンフィデンス

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