DA PUMP・KENZO、安室奈美恵のダンス振付秘話語る

 DA PUMPのメンバーとしてアーティスト活動を行う一方で、ダンサー・コレオグラファーとしても注目されるKENZO。振り付けのオファーが絶えず、国内外で幅広く活躍する彼に、コレオグラファーとして求められている要素や、今後のビジネスチャンスについて話を聞いた。

音楽番組は画角的に顔を抜かれることが多く、顔周りに印象的な手振りを持ってくると有効

 世界各国でパフォーマンスを行い、昨年はダンスの国際大会で前人未到の8年連続優勝を達成したダンサーのKENZO。国内ではDA PUMPのメンバーとしても活躍する彼は、多くのアーティストから信頼される振付師としての顔も持つ。
「僕はバレエからストリートまでダンスはオールジャンル素晴らしいものだと思っています。だから、ダンサーとしての自分のスタイルとはまったく違う振り付けも創作できるんです。今のユーザーは振り付けに両極端なものを求めていますよね。歌って踊れるアーティストなら突き抜けた超絶テクを驚きと絶賛を交えながら見たい。キャッチーな振り付けなら自分でも踊ってみたい、という。その両方に応えられるのが、振付師としての自分の強みだと思っています」

 2012年、安室奈美恵の楽曲「Damage」や20周年5大ドームツアーの振り付けなども、安室自身からオファーされたものだった。
「僕が振り付けを担当したある曲のMVとテレビ番組のパフォーマンスを観てオファーしてくれたそうです。安室さんの世界観とはタイプが違うものだったので意外でしたが、きっと新しいエッセンスを求めているんだろうと考え、過去のライブ映像やMVをすべて観ました。その上で、同じ振り付けは一切入れないことを自分の中のテーマにしたんです」

 5人組ダンス&ボーカルグループ・フェアリーズは、育成から現在に至るまで振り付けを担当している。
「彼女たちは歌って踊れて、そして若くて可愛いという強みもあります。当然、音楽番組のパフォーマンスは画角的に顔を抜かれることが多くなる。だから顔周りに印象的な手振りを持ってくると有効なんですよ。TWICEのTTダンスはまさにその成功例ですよね。ちなみにTTダンスの振り付けをしたリア・キムとは一緒に作品作りをしていたこともある友だちで、この間も『TT、流行ったね』という話をしました(笑)」

 KENZO 自身も、MY NAMEやパク・ジュニョンといったK-POPアーティストに振り付けを提供している。
「K-POPがダンスに重要性を置いているのは、ワールドマーケットを意識しているからだと思います。歌詞もローカライズしていますが、何よりダンスは言葉の壁を越えますからね。また日本では静と動の中で美学を感じるような振り付けを好むのに対して、韓国アーティストはドーンと派手な振り付けが多いんです。それは国民性的な好みの違いもあるけれど、やはり世界を照準においたマーケティングの側面が大きいと思いますね」

エンタメ業界とダンス業界の幸福なマッチングを目指して

 KENZO には、ダンサーの派遣や振り付け、映像制作などダンスを軸としたさまざまな事業を手がけるBrush UP の代表取締役というビジネスパーソンの顔もある。
「世界ではダンサーの地位は決して低くありません。だけど日本ではまだまだ、ビジネスとして成立できていないダンサーも多い。日本のダンサーのレベルって世界的にもすごく高いんですけどね。要はエンタメ業界とダンス業界をうまくマッチングするエージェントが必要だと考えて、会社を立ち上げたんです」

さらに振り付けを依頼する側が、的確に要望を伝えられるフォーマットの開発も構想しているという。
「クライアント側にも“こんな振り付けが欲しい”というイメージは必ずあるんです。ただダンスって言葉で伝えるのが難しいじゃないですか。そこの意思の疎通をスムーズにするシステムがあれば、クライアントも振付師も喜ぶと思うんですよね」

 ストリートからメジャーの音楽業界へ、さらにビジネスへと幅を広げながら、貫くのは「今まで自分を食わせてくれたダンスへの愛」だ。
「だけどそれは『俺のダンスすげえだろ』という視野の狭い愛じゃない。クライアントにもアーティストにも、バックダンサーにも、それぞれのダンスへの愛の形がある。振付師としては、そのすべての愛を受け入れるのが役割だと思っています」

(文:児玉澄子)

KENZO プロフィール

KENZO(けんぞー)
2008年にDA PUMP の新メンバーに加入。個人としても数多くのTV番組や映画、CMなどに出演し、ダンサーとして2010年から2017年にかけて、数々の世界大会で8年連続優勝を勝ち取る。その実力を評価され、世界大会を含め150回以上、ストリートダンスの主要大会で審査員を任される。振付師として、安室奈美恵、trf、back numberなどの作品を手がけており、アーティストの振り付け提供先は100曲を超える。

DA PUMP オフィシャルサイト(外部サイト)
KENZO オフィシャルサイト(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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