多部未華子、演技派女優の意外な顔 「演じたい役がまだない」
人間ドラマが描かれた『ツバキ文具店』の世界観に共感
多部 主演女優賞をいただきまして、ありがとうございます。素敵な賞をいただくことができてとても嬉しいです。
――このドラマのお話を頂いたとき、印象はどうでしたか?
多部 『ツバキ文具店〜鎌倉代書屋物語〜』は、それぞれに悩みを抱えた登場人物たちが周囲の人たちに支えられながら生きていく物語で、主人公の鳩子もその中で少しずつ成長していきました。大きな事件が起こるドラマではないのですが、淡々とした中に、人間ドラマが描かれていて、その世界観にとても共感しました。
――撮影はいつ頃行われたのですか?
多部 2月〜5月初旬までありました。撮影し始めの2月は、鎌倉でのロケが寒かったです。
――大変だったことはありますか?
多部 とても楽しい現場でした。台本の内容や撮影のスケジュールが、私のなかで腑に落ちる部分の方が多かったので、体力的にも精神的にも安定した撮影でした。はーたん(守景陽菜役/新津ちせ)が、すごくかわいくて現場が和みました。
――このドラマは、事件らしい事件が起こらないので、逆に演じることが難しかったようにも感じますがどうでしたか?
多部 鳩子に代書を頼む依頼人(ゲスト)の方たちが、すごくドラマの世界観にあったお芝居をしてくださいました。私は、それを受けて演じていたので、とても演じやすく、大変なことはなかったです。
――『ツバキ文具店〜鎌倉代書屋物語〜』のように事件らしい事件が起こらないドラマは、NHKならではだなと思います。多部さんのように、それを上手く演じられる女優さんはなかなかいないと思いました。続編も観たいと思いました。
多部 原作には続きの物語があって、それもすごく良いお話です。ドラマの続編ができたら嬉しいですが、鳩子が成長した姿が、最終回でしっかりと描かれているので、終わり方はこれでいいかなとも思いました。
――印象に残っているシーンはありますか?
多部 バーバラ婦人(江波杏子)が、毎回とても良い言葉を言うんです。それがすごく印象に残っています。
初めてギャル役に挑戦、恥ずかしかったです(笑)
多部 初めてギャル役に挑戦しましたが、スタジオでの撮影は恥ずかしくないんですけど、ロケでの撮影がとても恥ずかしかったです(笑)。
――今後は、どういう作品に出てみたいですか?
多部 すごく演じたい役というのがまだなくて、いつもお話を頂いてから考えています。だから最近は、家でいろいろなドラマを観るようにしています。演技が素敵だったから一緒にお芝居をしてみたい、作品が好きだからそのスタッフと一緒にお仕事してみたい、そういうことを自分で言えるようになりたいと思い、勉強しています。
――多部さんは、どんな役も演じ、まるでドラマの中で1つパーツになっているように感じます。
多部 1つのパーツというのはそうかもしれないですね。今後は、いろいろなことを勉強して、仕組みがわかった上でお仕事を考えていけたらなと思います。
――このドラマは、手紙が重要なエピソードとなっていますが、ネットの普及などで、手紙を書く機会が少なくなりました。多部さん自身はどうですか?
多部 ドラマに出演して、手紙っていいなって思いました。プレゼントを頂いたりすると、ポストカードにお礼を書いて送っていますが、ちゃんとしたお手紙ではなくて。鳩子のように、相手のことを思いながら便箋や封筒を選んで手紙を送るのは、すごく素敵なことだなと思いました。
(写真:西岡義弘)