傑作の予感
マツダのグローバルな名称を冠し、「アクセラ」から生まれ変わったCセグメントモデル「MAZDA3(マツダ・スリー)」。歴史ある多くのライバルがひしめくなか、どのような魅力を持ったモデルに仕上げられたのか。発売後、初試乗となったテストコースから報告する。
デザインは引き算の美学
クルマのデザインで興奮したのは久しぶりだ。マツダ3のハッチバック版である「ファストバック」は、世界中で絶賛されたコンセプトカー「マツダ・ビジョン クーペ」と同種の美しさを備えている。しかも全長4460mmという、現代においてはコンパクトと言いたくなるサイズのなかで伸びやかさを表現しているあたりが、拍手喝采だ。
そして、「これだけカッコいいんだから中身は多少ボロくても目を瞑(つむ)ろう」と思ったけれど、ハンドルを握ると傑作の予感がした。「傑作」ではなく「傑作の予感」としたのは、試乗したのが路面の滑らかなクローズドコースだったからだ。一般道で乗ればまた別の感想を持つかもしれないけれど、以下、傑作の予感がした理由を、順を追って記したい。
Cセグメント、つまり「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「ルノー・メガーヌ」と同じクラスに属するマツダ・アクセラがフルモデルチェンジを受け、国内での車名は海外市場と同じくマツダ3へと変更されることになった。
マツダはこれまで、クルマづくりの技術においては「SKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジー」を、デザインにおいては「魂動(こどう)=Soul of Motion」というコンセプトを標榜(ひょうぼう)してきた。マツダ3はその両方において次のステージへと進んだ第1号車とのことであり、つまりこのクルマを見ればマツダの未来が想像できるということでもある。
5月24日より販売が開始されたマツダ3に試乗したのは、栃木県のGKNドライブラインジャパンのテストコース。試乗は、高速周回路とハンドリング路を組み合わせて行う。
まずは、目がハートの形になってしまったデザインについてふれたい。マツダは2010年に「魂動=Soul of Motion」というデザイン哲学を打ち出し、2012年に発表した「CX-5」以降、生き物のようにダイナミックかつエレガントな動きを感じさせる造形が好評を博してきた。
では、“魂動デザイン第2章”となるマツダ3は、どんな方向に進んだのか。ひとことで言えば、削(そ)ぎ落とす方向、引き算の美学だ。ファストバックの写真をご覧いただくとわかるように、クルマの個性を演出する常とう手段だったキャラクターラインではなく、きれいに湾曲した面の張りの豊かさで勝負している。
この日は、梅雨の合間の青空が広がっていた。Cピラーからリアフェンダーに至るボリューム豊かな面には青空と白い雲が映り込み、その雲が流れていく。クルマのデザインにはまだまだ可能性が残されているんだとうれしくなる。...