源泉かけ流し
踏めば速いことは間違いないが、この「BMW M850i xDriveクーペ」にそうした乗り方はふさわしくない。真に味わうべきはスピードではなく、あふれ出るパワーと最新のテクノロジーがもたらす、ゆるりとした贅沢(ぜいたく)なひとときではないだろうか。
復活した「8シリーズ」
いきなり身もふたもない言い方かもしれないが、1700万円あまりもするBMWのフラッグシップクーペに何かしら不足に感じるところがあるわけがない。何しろほぼ20年ぶりに復活した「ザ・8シリーズ」である。素晴らしくて当たり前、そうでなければBMWの沽券(こけん)にかかわるというものだ。ご存じのように、これまでは「6シリーズ」がハイエンドラグジュアリークーペの需要を受け持ってきたが、すでにこの2ドアクーペに加えて「コンバーチブル」も発表されており、また4ドアの「グランクーペ」が追加されることになっている。さらにサーキットではいち早くGTレーシングカー仕様が猛威を振るっている「M8」の登場も明らかにされており、今後、BMWの豪華高性能クーペシリーズは「8」で統一されることになる。
8シリーズのようなトップエンドモデルは、台数を売るというよりも、さすがはBMWの最高峰、と世の中をうならせ、羨望(せんぼう)のまなざしを集めることが第一の仕事である。それゆえに、伸び伸びとした優雅で大柄なボディーの中には、可変駆動力配分4WD機構の「xDrive」や後輪操舵システムから、最新の運転支援システムやインフォテインメントまで、BMWのほとんどあらゆる技術が詰め込まれている。
BMWのスポーティーさとラグジュアリーを象徴するフラッグシップクーペの全長はおよそ4.9m、全幅1.9m、ホイールベース2820mmで、そのボディーサイズを目いっぱいに使ったいかにも贅沢なクーペスタイルが特徴だ。シュッとシャープに下るルーフラインと細くなった「ホフマイスターキンク」(Cピラー基部)が新しい世代を感じさせる。ボディーはもちろんカーボンファイバーやアルミ、スチール材を組み合わせたカーボンコアボディーで、ボンネットやドア、ルーフパネルはアルミ製(ただしこのクルマはオプションのカーボンルーフ付き)だが、抑揚が強いリアフェンダーまわりだけは深絞りのためにあえてスチール製だという。...