甘く見てはいけない
クラシカルなスタイリングとスポーティーな走りが身上の「トライアンフ・スピードツイン」。往年の名車の名を冠する生粋のスポーツバイクは、その名に恥じない本格的なパフォーマンスと、オーナーの所有欲を満たす上質さを併せ持つ一台に仕上がっていた。
80年の時を経て復活した伝説の車名
例えばどこかの試乗記に、「その鷹揚(おうよう)としたハンドリングに身をゆだね、まろやかに回るバーチカルツインの鼓動を感じながら……うんぬん」なんて書いてあったなら「なるほどそういうバイクか」と納得してしまいそうだが、トライアンフ・スピードツインの実態はまったく違う。
先ごろ日本へ導入されたこのモデルは生粋のスポーツバイクであり、エンジンもサスペンションもディメンションもそれにのっとったもの。「ネオクラシックとしては」という“ことわり”を必要としないほど明確にパワフルで、ツインショック以外のすべてが現代的なパーツで構成されている。
スピードツインという車名は、かつて存在したモデルの名を復活させたものである。“かつて”と言っても実に80年以上も昔の話で、1937年7月にロンドンで発表された499ccの「5Tスピードツイン」がそのオリジナルだ。当時のトライアンフは1929年に始まった大恐慌のあおりをまともに受け、業績不振の真っただ中にあった。1936年には四輪部門と二輪部門が切り分けられ、いよいよ末期かと思われたそのときに、起死回生の一台として市場に送り込まれたのである。
シングル(単気筒)が全盛だった時代に、ツイン(2気筒)というだけでも目立つ存在だったが、最高速は150km/hをうたうなどパフォーマンス面でも話題を呼び、大ヒット。結果的に窮地に陥っていたトライアンフを救うことになったのである。...