うれしいような 悲しいような
コンパクトスポーツカー「アウディTT」の最新型に、同車ゆかりの地であるイギリス・マン島で試乗。エクステリアデザインやパワートレインをはじめとするマイナーチェンジの成果を、高性能モデル「TTS」で確かめた。
その車名に歴史あり
1907年の初開催以来、「世界で最も危険な市街地レース」として名をはせてきたイギリス・マン島のTTレース(TTはTourist Trophyの頭文字)。それゆえに世界中のモーターサイクリストから“聖地”とあがめられ、レースが開催される5月下旬ないし6月上旬には数え切れないほど多くのバイク乗りたちがこの島に集結する。
しかし、全長60km以上のサーキットは、まさに死と隣り合わせ。比率的には住宅地を通過するセクションが大半を占めるものの、たとえ市街地でもコースはゆるやかなコーナーの連続で、いまやトップクラスの平均速度は200km/hを超える。ところが、市街地コースゆえにランオフエリアは基本的にゼロ。しかも、転倒したライダーを待ち受けているのは、表面のギザギザが残ったまま薄くスライスした石を積み上げた石垣なので、まさに凶器そのもの。100年を超す歴史で200名以上の犠牲者を生んだというのも無理からぬ話だ。
それだけに、マン島で勝ち取った栄冠には格別の重みが伴い、優勝したメーカーが“TT”の名を冠した量産モデルを世に送り出すことも珍しくなかった。例えばNSUは1954年に250cc以下のクラスで1〜4位を独占する大成功を収めると、1960年にはこれを記念して「クイックリーTT」という名のモーターサイクルを発売。この伝統は四輪車にも受け継がれ、1965年にはスポーツモデルの「NSUプリンツTT」が世に送り出されることとなった。そのNSUが1968年にアウトウニオン傘下に入り、現在のアウディを築く礎となったことは皆さんもご存じのとおりである。...