究極の究極
ブラック基調のドレスアップやスポーティーなチューニングを特徴とする、ロールス・ロイスの2ドアクーペ「レイス ブラックバッジ」に試乗。メーカー自ら「ロールス・ロイスブランドのダークな側面を強調した」とアピールする、走りの質を報告する。
いま風のロールス・ロイス
朝の清冽(せいれつ)な空気のなか、クジラのごとき巨体を持つ真っ黒けのクーペがいつの間にか出現していた。車名のwraithとは、英語で「(人の死の直前に他人に見えるという)生霊(いきりょう)、死霊、亡霊、幽霊」のことだという。「やせ細った人」という意味もあるみたいだけれど、この場合は当てはまらない。
黒いボディーには赤いコーチラインが入っていて、筆者は即座に徳大寺有恒さんが乗っておられた「コーニッシュ」を思い出した。つまりこれは伝統的な組み合わせとして昔からある、ということである、たぶん。「昔」っていつのこと? という質問に対してお答えできるほど筆者の知識は十分ではないのでなんですけれども、徳大寺さんのコーニッシュ、内装もたしか黒で、もちろんウッドパネルが貼ってあって、ダッシュボードの上に小さなバラのつぼみが一輪さりげなく置いてあった。そういうキザが誠に似合うクルマだった。
目の前のレイスは、2016年3月のジュネーブショーで正式デビューを飾ったブラックバッジと呼ばれる高性能版である。4ドアサルーンの「ゴースト」と同時に発表され、コンバーチブルの「ドーン」にものちに追加されたブラックバッジは、パワートレインを強化し、足まわりを見直すという高性能モデルの王道を踏まえつつ、内外装にダークな味付けを加えたところがこんにち的なわけである。『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーとか、欧米で人気の吸血鬼モノとか、あるいはヒップホップとか、いまの文化状況を反映している、といえるかもしれない。...