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「常識の海」から抜け出す方法


AIがあらゆる職場に浸透する日も遠くないかもしれません。そんな時代に、私たちに何よりも必要とされるのが「自分の頭で考える力」です。ベストセラー『地頭力を鍛える』で知られる細谷功氏が、主に若い世代に向けて「自分の頭で考える」とはどういうことかについて解説した最新刊『考える練習帳』。本連載では、同書のエッセンスをベースに、「自分の頭で考える」ことの大切さとそのポイントを、複眼の視点でわかりやすく解説していきます。

常識の海の「深海魚」になっていないか?

知識重視の価値観からの転換は、予想以上に厄介です。

何事も初心者(学習における子どもや学生も含む)が基礎を固めるのに必要なのは、定石や「型」といったいわば定型的なパターン(=知識)の習得なので、まずは、しばらくはその世界に浸って基礎を固めることが重要です。

ただし、そこである程度の基本的な知識を身につけたならば、それにこだわることなくある知識を再構成し、新しいものを生み出していくこと(=自ら考えること)が重要になってくるのです。

そこでは、それまでの価値観を逆転させて、むしろ逆向きのギアにして走り始める必要があります。

ここで、それまでの知識の価値観に最適化されてしまった頭や心を、どのように切り替えられるか、どこまで自ら考えられるようになるかが決まります。これを模式的に示したのが以下の図です。

この図は、左から右は時系列を示しています。

まずは、何も知らない「素人」がそれなりの1つの分野での専門家として一人前になったのちに、再び新しい境地を切り開けるかを「常識の海」を用いて説明したものです。

「常識の海」というのは、特定の領域で当たり前とされている、その領域におけるそれまでの知識の集大成です。

何も知らない素人は、まずその海に飛び込んで最低限の常識を身につけて、ある特定の領域で専門家になっていきます。その後のステップが大きく2つに分かれます。

ギアの向き(価値観)をそれまでと同じままでさらに「その先」に進んで知識の世界を極めるか(これが「深海魚」です)、完全な逆向きに「ギアチェンジ」をし、それまでに得た常識を再構成して、再び水面から上に上昇していって「新大陸」を発見しにいくか(これが「トビウオ」)です。

たとえば、仕事における新人からベテランへの進化の過程を考えるとわかりやすいでしょう。

まず、新人は何の領域においても基本的な知識を身につけなければなりません。そこで常識の海に飛び込むことで基本的知識を身につけるわけです。それは会社の常識であったり、業界や社内の常識であったりといったものです。ある程度、それらを身につけた状態が一人前の仕事ができる中堅社員と言えます。

ここからが2つに分かれます。

(1)常識を身につけた代償として、新しい変化に抵抗を示すようになり、それまでの成功体験だけで一生を乗り切ろうとする人と、(2)それまでに身につけた常識を一度捨て去ってでも、その後の変化に対応しようという人です。

伝統的な会社では、前者に属する管理職が良くも悪くも会社の主力となって普段の業務を回す「オペレーター」として会社を動かしていきます。

その代わりに新しい変化に対応しようという「イノベーター」に対しては(本人の意図せざるところで無意識に)「抵抗勢力」となって立ちはだかるのです。

常識の海に沈んでいく一方という点で、この種の人は、常識の海の「深海魚」とでも呼ぶことができるでしょう。

思考回路をリセットできる「トビウオ」型人材とは?

これに対して「思考回路のリセット」ができる人は「重力に逆らって」再び海の上に飛び立ち、また新たな世界を見にいくことができます。

こういう「羽」を持っている人たちは、しばしば「流れに乗じて」自由に飛翔することができるのです。

先の深海魚に対して、こちらの人はいわば「トビウオ=イノベーター」とでも呼ぶことができるでしょう(当然おわかりのように、本書で目指すのは「トビウオ」型の思考回路です)。

このような進化(と退化)の構図は、1つの仕事でもそうだし、人生そのものにおける成長においても当てはまります。

「働き盛り」を迎えた後に「成功体験による逃げ切り」を図ろうとする深海魚型の人と、そこから再浮上しようとするトビウオ型の人たちです。

その鍵は、それまでの知識と経験を「忘れる」ことができるかどうかです。

もちろん、読者の皆さんには、後者の「新大陸」を目指すイノベーター(トビウオ)たちを目指してほしいと思います。

※次回は、11月28日(火)に掲載予定です。

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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