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なぜ、百貨店の催事では、職人による実演販売が多いのか?


「どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか」――。この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、同書に収録されている75の事例の中から、特に現場で導入しやすく、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選して紹介していきます。

人だかりの中心に、
包丁を研ぐ職人がいる

百貨店の催事場に行くと、自然と足が止まる一角があります。それが、職人による実演販売のコーナーです。

包丁を研ぐ、革製品を縫う、和菓子を仕上げる。プロの手が生み出す繊細な動き、道具の音、商品の香りや熱気。気づけば人が集まり、そして、見るだけだった人が、なぜか財布を開いて買っていく。

実はこの実演販売は、単なる職人のこだわりを披露する場ではありません。

目の前で完成させるプロセスを見せることで、商品の価値を何倍にも高め、お客様が納得して財布を開く「売れる流れ」を意図的に作り出す、非常に効果的な販促戦略なのです。

「すごい!」という感動が、
信頼と価値を一瞬で生む

人は、「目の前でモノが作られる瞬間」に心を動かされます。

・職人が目の前で削った置物は、値段が高くても「価値がある」と感じて買いたくなる
・練りたてのわらび餅は、普段なら買わない値段でもつい財布を開く

これは、「見る」「聞く」「嗅ぐ」といった五感を通じた体験によって、商品の価値が一気に何倍にも跳ね上がる典型的な例です。

「目の前で見る→感動する→信じられる→欲しくなる」という、最短距離の購買ルートが、その場で完成するのです。

この体験は、「イケア効果」と「エンダウメント効果(保有効果)」を先取りする効果があります。

ここでいう「イケア効果」とは、人は、自分が少しでも関わったもの(完成までのプロセスを見たもの)に対し、実際以上の価値を感じる傾向があることをいいます。

また「エンダウメント効果」とは、商品が自分のものになる(購入する)前から、完成品への愛着や執着が強まり、購買の意思決定が加速するというものです。

対面販売でしか得られない
「安心感と物語」

実演販売にはもう一つ、非常に強力な効果があります。それは、「誰が作っているか」が明確になることです。昨今はインターネットでの買い物が増え、商品が「顔の見えないもの」になりがちです。

そんな中、職人がその場で語り、手を動かしながら説明することで、

・「この人が作っているなら、きっと間違いない」という信頼
・「本当に手間と時間がかかっているんだな」という納得
・「この人から買って応援したい」という共感

といった共感と納得が一気に生まれるのです。

つまり、「性能や値段で比べる」商品ではなく、「背景にある物語や人に共感して選ばれる」商品になる瞬間を生み出しているわけです。

限定感 × ライブ感が
購買を後押しする

百貨店の催事には、「期間限定」「今だけ」「職人来場中」という空気が強く漂っています。

これは実演販売との相性が抜群です。

「今日しか見られない」
「目の前で作ってもらえるのは今だけ」
「数量限定」

これは、「希少性の原理」と「社会的証明の原理」を複合的に作用させています。

ここでいう「希少性の原理」とは、「今買わないと手に入らない」「目の前で職人から買えるのは今だけ」という時間的・機会的限定が、お客様の損失回避の心理を刺激し、購買を急がせることをいいます。

また「社会的証明」とは、実演に集まる人だかりが、「この商品は価値がある」という社会的証明となり、購買の決断を後押しするというものです。

他のお店でも応用可能な
「実演の力」

実演販売は、百貨店だけのものではありません。規模の小さな商店やイベントでも、次のように応用可能です。重要なのは、全てを見せる必要はないということ。

「この人は本物だ」と思わせる、数秒間の「プロの技」の披露で十分なのです。

・生花店・フラワーショップ:花束やアレンジメントを作る際、ただ束ねるだけでなく、バラのトゲを丁寧に取り除く繊細な作業や、花の茎を斜めに切るプロの技術を、お客様の目の前で数秒間あえて見せる
・お茶・日本茶専門店:茶葉の試飲を提供する際、ただ淹れるだけでなく、急須への茶葉の入れ方、湯温の調整、蒸らし時間、茶碗への注ぎ方といった「お茶を最も美味しくする一連の作法」を、一言も喋らずに静かに披露する
・自転車店(スポーツバイク専門店):定期メンテナンスや、カスタムパーツの取り付けを、お客様が待機できるガラス張りの作業スペースで行う。プロメカニックが、高価な工具を使い、わずかな音の変化や歪みをチェックする様子を見せる

まとめ

百貨店の催事で職人による実演販売が多いのは、単なる「こだわり」ではありません。

それは、「見せること」によって、

・「イケア効果」「エンダウメント効果」により、商品の価値を感情的に底上げし
・信頼(誰が作ったか)を与え
・「希少性の原理」により、その場限りのライブ感で「今買う理由」を生み出す

という、極めて合理的で、かつ感情的な販促戦略になっているのです。

あなたの商品・サービスにも、「実演できるポイント」や「見せられる工程」はありませんか?

少し手間をかけて見せるだけで、「お客様に伝わる力」は何倍にもなります。

(本稿は『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』の一部を抜粋・編集したものです)

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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