「きっちり説明したつもりなのに、なぜか伝わらなかった」
そんな経験をしたことがある人は少なくないだろう。
ある若手社員が、新規事業のアイデアを上司に提案した。
スライドには市場調査のデータ、競合の分析、収益シミュレーションがびっしり。彼は自信満々に一通り説明を終えたが、上司の反応は冷たかった。
「で、結局、うちにとってどういう意味があるの?」
若手社員は愕然とした。
これだけ丁寧に説明したのに、なぜ伝わらないのか?
頑張っているのに、なぜ刺さらない?
多くの人がやっている「説明」は、情報をそのまま相手に渡す行為に近い。
事実やデータを順序立てて並べれば、十分伝わると信じている。
しかし、相手にとってはどうだろう。
忙しい上司や顧客は、膨大な情報を聞いている暇はない。
しかも、聞き手は必ずしも「前提条件」を共有していない。
話し手が当然と思っている前提知識が抜け落ちていると、相手には断片的な情報の束にしか見えなくなる。
「だから何なのか?」が一瞬で理解できなければ、心に響かない。
ここを踏まえた説明でないと、単なる情報の羅列の説明に感じ、人は動かないのだ。
一流は何が違うのか?
一流はここが違う。
彼らは「情報を相手の文脈で翻訳する」ことを徹底している。
例えば、先ほどの新規事業提案なら、こうなる。
「この事業は、今後3年以内に競合が必ず参入する領域です。
しかし、今参入すれば“既存顧客の強み”を活かして、初年度から5億円の売上を狙えます。今動かなければ、確実に機会損失が発生します。」
同じデータを使っても、相手の意思決定の軸に沿って再構成している。
これが「言語化」だ。
言語化とは単なる「要約」ではない。
相手の立場に立って価値判断の基準を理解し、その基準に沿って情報を並び替えることだ。
だからこそ、聞き手は自分ごととして受け止められるのである。
三流と一流は何が違う?
言語化は何も大きな提案だけではない。
日常の報告や指示でも差が出る。
?三流の報告:「売上は先月比で5%伸びました」
?一流の言語化:「売上が先月比で5%伸びました。要因はリピート率改善にあるため、今後も継続的に伸びる可能性が高いです」
?三流の指示:「もっと具体的にやってみて」
?一流の言語化:「この資料は、初めて読む人が5分で全体像をつかめるようにまとめてほしい」
たったこれだけの違いで、相手の理解度と行動の質が大きく変わる。
さらに言えば、この差が積み上がると、組織全体の生産性や成果に直結する。
説明で終わるチームは「情報はあるが動けない組織」になり、言語化できるチームは「行動が速い組織」になるのだ。
「説明」を「言語化」に変えるポイント
「言語化」と聞くと、センスや才能が必要だと思うかもしれない。
だが実際には、ある程度、再現可能な技術だ。
その代表が、私が提唱しているPMM(Product Market Matching)だ。
具体的には「誰が・何をして・どうなった」と3要素を言語化し、伝えたいコンセプトにするのだ。
この枠組みで考えるだけで、情報は「説明」から「言語化」に変わる。
例えば、
「誰が:月末になると資金ショートの不安に怯える、年商3億円規模の製造業経営者が」
「何をして:◯◯社以上が導入済の入出金をリアルタイムで可視化し、1年先までの資金予測ができるクラウド型資金管理サービスを導入したことで」
「どうなった:毎月の資金繰りに追われるストレスから解放され、金融機関との対話もスムーズになった。その結果、事業拡大に向けた設備投資に踏み切る意思決定が加速した」
といった具合だ。
「なんだ、そんな簡単なことか」
と侮るなかれ。
私は今まで1000人以上のPMMを見ているが、1回でこれを的確に表現できた人は10人に満たない。
簡単そうに見えて、実に奥が深いのだ。
三流が一流になる分かれ道とは?
三流は「説明」で満足してしまう。
二流は「報告」で終わる。
だが、一流は「言語化」で相手を動かす。
この差は小さいようで、キャリアや成果に決定的な違いを生む。
説明で終わる人は「わかりにくい人」で終わるが、言語化できる人は「信頼される人」になる。
言葉で人を動かす技術は、誰にでも身につけられる。
そのための具体的な手法をまとめたのが『【スーパーパワーアップ版】稼ぐ言葉の法則』と『コピーライティング技術大全』だ。
情報があふれる現在、説明は「ノイズ」にすぎない。
自分が考えていることを相手に確実に伝えるためには言語化力が成否を分けるのだ。
(本原稿は、『コピーライティング技術大全──百年売れ続ける言葉の原則』と『【スーパーパワーアップ版】稼ぐ言葉の法則 ── 貧す人が稼ぐ人に変わる「売れる法則85」』の著者による特別投稿です)