スーパースターも楽じゃない
992型後期世代の「ポルシェ911」にも「カレラT」が登場。各部に他のモデルと同等のアップデートを受けたのはもちろんのこと、なんとトランスミッションまで刷新されているというから見逃せない。「ピュアで爽快なドライビングプレジャー」の真偽を確かめた。
数少ない3ペダルの911
911の歴史において、992型前期は最も成功したモデルとなるのではないだろうか。コロナ禍を挟んでも年間販売台数は衰えをみせず、2022年には4万台を、2023年と2024年は5万台を突破している。モデルライフのおおむねをカバーする2019年から2024年の総数は25万台に限りなく近い。オプション込みでの平均客単価を控えめに2000万円と想定しても5兆円かよ……と、iPhoneの計算機を横にしてあまり意味のないソロバンをはじいては唖然(あぜん)とさせられる。そんな数字を知るにつけ、「ロードスター」は頑張っているなぁとつくづく感心させられるわけだ。
もはやポルシェにとっては立派なドル箱だろう。しかもこの直近の成功を受けてのモデルチェンジなのだから、992型後期を取り巻く関係者のプレッシャーはいかばかりか。その景気づけとして用意されたのが911初のハイブリッドパワートレインを搭載した「GTS」シリーズだったわけだ。「919ハイブリッド」のMGUともつながる電動ターボによる過給と回生の緻密なコントロールにより、「GT3」シリーズとは正対する頂点である「ターボ」シリーズに肉薄するほどの動力性能を得ることになった。この技術的な前進が992型後期へとスイッチする必然、つまりは新型登場の露払い的な役割を果たすことになったのだと思う。
と、そこにさらなる援護射撃として加わったのが、この「T」だ。911におけるTは、ナローの世代にモータースポーツに用いられることも想定した最もシンプルなグレードに与えられたコードだった。現在、ポルシェは公式にツーリングのTであるとうたっている。
それが復活したのは991型後期で、狙いとしてはGT3やターボの高性能化が著しいなか、身の丈で存分に運転を楽しめる走り好きのためのしつらえというかたちだったようにうかがえる。当初から7段MTが設定されていたが日本仕様はPDKのみの設定だった。これが992型前期では7段MTも選べるようになり、新車の911では数少ない3ペダルのモデルとなったわけだ。...