進化する猛獣の憂鬱
量産バイクとしては世界最大の排気量を誇る、2.5リッター直列3気筒エンジンを搭載した「トライアンフ・ロケット3」。その最新モデルが「ロケット3ストーム」だ。よりパワフルに、しかも乗りやすく進化した“怪物”に、昔を知るテスターはなにを思ったか?
スゴみの利いたルックスとは裏腹に
トライアンフのロケット3は、量産車最大排気量となる2458cc 3気筒エンジンを搭載したマッシブバイクだ。実を言うと初代の「ロケットIII」が登場した頃にしばらく乗り回していたことがある。撮影が終わってもしばらく走っていたくなるくらい気に入っていた。信号が変わった瞬間、回転を上げ気味にしてクラッチレバーを離すとトラックに追突されたような勢いで巨体が飛び出していく加速がとても楽しかったのだ。最新のロケット3はあの頃よりも大幅に軽量化され、パワーが向上しているのだから、さらにすごいことになっているに違いない。興味津々での取材となった。
実車を見るとエンジンの存在感の大きさに驚かされる。ネイキッドでエンジンがむき出しになっていることに加え、車体をむやみに大きくしていないからだ。極端に言えば、巨大なエンジンに極太のタイヤを装着して、その上にライダーがまたがるようなイメージである。ただ、カウルやパニアを付けたツーリングモデルほど巨大ではないから扱いはそれほど難儀しない。シート高も773mmだから足つき性も良好。重心が低いこともあってバイクを支えるのに苦労することはなかった。ハンドル位置は低めだが着座位置も低いので前傾にはならず、ステップは前にあって足を前に投げ出して乗るようなポジションになる。長距離の走行でも疲れは少ないだろう。
エンジンを始動してレスポンスを確認しようと空ぶかしをしてみると、ずいぶん穏やかな感じがする。排気音が静かなことに加え、スタンダードモードにしておくと空ぶかししたときのレスポンスがマイルドになり、2000rpm以上は回らなくなっている。それでもこの排気量だから低く響くような迫力が伝わってくる。手なずけられた猛獣が目を覚ましたような雰囲気だ。
街なかでは2000rpm前後を多用することになるが、この回転域ではとてもスムーズ。トルクはあるけれど十分に扱いやすく調教されているので、低速域での走りは極めてジェントル。乗りにくさはみじんも感じない。...