水素がかなえる洗練と上質
歴代モデルの伝統を色濃く受け継ぐ「トヨタ・クラウン セダン」のなかから、水素で走る燃料電池車(FCEV)に試乗。先進のパワートレインを搭載したクラシックなサルーンは、私たちにどんな世界を見せてくれるのか。FCEV独自の魅力に触れ、その普及に思いをはせた。
伝統を受け継ぐFRの正統派セダン
現行の16代目クラウンがデビューする1年ほど前から、「次期クラウンはFF系プラットフォームのSUVになる」とうわさされ始めた。1955年に誕生し、15世代にわたってFR系プラットフォームの正統派セダンとして生き永らえてきたクラウンも、時代の流れには逆らえないのかと一抹の寂しさを覚えたものだが、2022年の発表会の場では、「クロスオーバー」「セダン」「スポーツ」「エステート」と4種類を取りそろえ、そのうちセダンはFR系のプラットフォームが採用されると知ってうれしくなった。
たしかにここ数世代のクラウンは、セダン離れの波に翻弄(ほんろう)されて右肩下がりの苦戦を強いられてきたが、16代目は多種多様なラインナップを取りそろえ、海外展開にも取り組むという抜本的な改革の鉈(なた)が振るわれたのだ。これは最近のトヨタが採用している群戦略によるものでもある。群とは文字どおり「むれ」「集まり」のことで、ビジネスで群戦略をうたい始めたのは、ソフトバンクの孫 正義氏である。グループ企業を永続的に価値向上させる戦略を指すが、トヨタでは製品群としても用いている。「センチュリー」や「アルファード/ヴェルファイア」はフラッグシップ群とされ、このたびそこに“クラウン群”が誕生。ラインナップを増やすだけではなく、クラウン専門のブランド拠点「THE CROWN」の展開にも取り組むという力の入れようだ。クラウンはトヨタの単なる一車種ではなく、新しい体験や価値を提供する製品群となったのである。
今回試乗したのは、第3弾商品となるクラウン セダン。第1弾のクロスオーバーが販売台数や海外展開ではメインとなるが、クラウンというクルマの歴史を思えば、「新時代の正統派セダンを継承する、ニューフォーマルセダン」と銘打たれたこのクルマこそが、その王道といっていいだろう。...