楽しいったら ありゃしない
名車「ポルシェ911」の誕生60周年を記念する限定モデル「911 S/T」に、イタリアのワインディングロードで試乗。軽量な車体とパワフルなエンジンを得たその走りは、“最高の911”と言い切れるほど楽しさに満ちたものだった。
高性能化を求めた60年
今からちょうど60年前の1963年9月。「901」、のちの911がデビューした。とはいえデビュー当時の“ナロー”にモータースポーツのイメージはまだほとんどなかった。水平対向エンジンこそ6気筒となって大きな力を得ていたものの、2+2でより大きなサイズのボディーをまとっていたからだ。ポルシェ側の思いはともかく、高性能版の「356」ユーザーの目には堕落に映ったのではあるまいか。
現代に生きるわれわれは911の歴史的な成功の要因がモータースポーツ活動によることをよく知っている。けれども60年前、そのクルマは言ってみれば“でかいエンジンを積んだメタボなモデル”だった。もちろん、それを望んだのもまた市場だったけれど(フル4シーターだって検討されていたのだ)。
もっとも、熱心なユーザーのなかにはそんなことなどお構いなしに911をサーキットへと連れ出す猛者が少なからずいた。ルマン24時間レースにも早々に登場したし、アメリカではSCCAプロダクションレースでクラス優勝も飾っている。
プライベーターの熱心な活動はいつだってメーカーを刺激するもの。ポルシェが高性能版である「911S」を市場へ投入したのは1966年秋のこと(モデルイヤー67、Oシリーズ)で、排気量こそ変わらず1991ccながら160PSの最高出力を得ていた。
またこの時代、「911R」の存在も忘れてはならない。わずか24台のみの生産にとどまった911Rだが、後世の高性能版911シリーズに与えた影響は大きかった。
モデルイヤー70 (Cシリーズ)を迎えて911は2リッターの壁を初めて越えた。911S に2195cc≒2.2リッターの180PSエンジンが搭載されたのだ。けれども排気量アップによってレースレギュレーションの対応では従来と異なる戦略をとる必要に迫られる。1.6〜2.0リッタークラスから2.0〜2.5リッタークラスへと“格上げ”されてしまったからだ。...