“跳ね馬”以外の何者でもない
フェラーリ初の4ドア・4シーターモデル「プロサングエ」に、冬のアルプス山麓で試乗。一部から「SUVの跳ね馬なんて……」と懐疑的な目で見られていたマラネッロの新作は、V12フェラーリの血統を確かに受け継ぐ、由緒正しきスーパースポーツに仕上がっていた。
拡販目的のSUVなどではない
これは「812GTC4ルッソ」だ。最初の試乗を終えた私はいささか興奮気味に担当エンジニアにそう伝えた。その心は、「まるで『812』のようなスポーツカーであると同時に、『GTC4ルッソ』のように、いや、ドアが+2であるぶんルッソ以上に実用的なGTである」。
フェラーリ初の4ドアモデル。そのうえ、マラネッロは決してそうは言わないけれど、世間からすればどこからどう見てもSUVスタイルだ。他のスポーツカーブランドと同様、ついにフェラーリも台数倍増作戦に打って出たか。さめた口調でそうおっしゃる向きも多かった。とはいえ単純な拡販目的のSUVではないことは、そして他に例のないナカミを持ったモデルであることは、その全容が明らかになった時点で筆者も指摘しておいた(参照)。
まず生産台数は、この手のモデルとしては異例に少ない。つまり台数拡大を狙ったモデルではない。誤解を恐れずに言えば、それこそ「FF(フェラーリ・フォー)」やGTC4ルッソの代わり、だったのだ。さらにメカニズムを注視すれば、V型12気筒を完全にフロントミドに置き、新たなサスペンションシステムを導入している。それゆえ筆者は、「たとえハイトなワゴンスタイルであっても、フェラーリらしく走るのだ」というマラネッロの主張を、まずはそのまま受け止めておいたのだ(車両概要を詳しくご存じでないという方は、読み進める前にぜひ、過去の記事を参照してほしい)。
もっとも、そんなことは実際に乗ってみなきゃ分からない。物理的にハイトがあって重いSUVスタイルのモデルを、どこまでスポーツカーらしく、いや、フェラーリらしく走らせることができているのか。そして、既存のライバルたち=このビジネスモデルに先鞭(せんべん)をつけた「ポルシェ・カイエン ターボGT」や、マイチェンなった「ランボルギーニ・ウルス ペルフォルマンテ」、さらには最もスポーツカーらしく走った「アストンマーティンDBX707」などと比べて、一体どこがどう違うのだろうか。近年、これほど試乗を心待ちにしたモデルはほかになかった。想像がつかなかったからだ。...