懐かしのファントゥドライブ
ボディーもパワートレインも専用仕立て……なのだが、「GRカローラ」を走らせてみると、どこか懐かしい感じがする。何かが突出しているわけではなく、すべての要素が高バランス。この味わいはまぎれもなくカローラだ。ただし、その速さはとんでもない。
昭和世代のクルマ好きに刺さるデザイン
夜明け前の薄暗い道路の脇に小さく喉を鳴らしながら野獣がうずくまっていた……的な情景を思い浮かべながら待ち合わせの場所に赴くと、白いボディーカラー(プラチナホワイトパールマイカ)のせいだろうか。意外にも(!?)爽やかな雰囲気で、「トヨタGRカローラRZ」がこちらにお尻を向けて止まっていた。
リアバンパー下部の大げさなディフューザーと3本出しマフラーが初見の者には奇異な印象を与えるが、センターのそれは、304PSにまでチューンされた1.6リッター3気筒ターボの性能を引き出すべく、回転数に応じて開閉するバルブを備えた機能部品。見かけのインパクトを狙っただけではない。
同様に、フロントバンパーやボンネット、大きく左右に張り出したフロントフェンダー後部などに設けられたエアアウトレットやインレットには、機能性を誇示するかのように実際に穴が開けられている。
言うまでもなくGRカローラは、5ドアハッチの「カローラ スポーツ」にビタミン剤とプロテインをふんだんに与え、ノスタルジーのスパイスを効かせてマッチョに仕上げたスーパーカローラである。いささか政治ショーの色彩が強いとはいえ内燃機関の禁止が取り沙汰される今日このごろ、そのトレンドに背を向けるかのように「高性能=たくさん熱が出る」を視覚化したデザインをまとった外観は、ことに昭和世代のクルマ好きには刺さるんじゃないでしょうか。ワタシのハートにもズキュンと来ました(キモッ)。
いやでも目につく車幅の拡張は、ノーマルカローラから+60mm。GRモデルの迫力をいや増しているのはコスメティックな変更にとどまらず、ハイスピードでのコーナリング性能を引き上げるべくトレッドが前後とも広げられていることで、フロントは60mm、リアは85mmワイドにされた。グッと大地に踏ん張る姿が、ちょっぴりユーモラス。
GRバージョンへの変容ぶりを見て個人的に思い出すのは、「ランチア・デルタ インテグラーレ」である。ジウジアーロの手になるクリーンな5ドアハッチがラリーフィールドを駆け巡り、年を経るに従って各所に穴が開きフェンダーが膨らんでいって、その即席風のモディファイがかえって実戦的でカッコよかったなァ。
しかし21世紀の東洋のスポーツモデルはそんなまどろっこしい過程を経ずに、いきなり「最終形態かッ!?」という姿で登場するらしい。弟分の「GRヤリス」には、WRC(世界ラリー選手権)に出場するためのホモロゲーションモデルという箔(はく)がついていたが、GRカローラにおいては、カローラに眠っていたモータースポーツの遺伝子を目覚めさせ、スーパー耐久シリーズで鍛え上げたというのが、トヨタの主張である。...