ラグジュアリーEVの新基準
メルセデス・ベンツのフラッグシップ電気自動車(EV)「EQS」が上陸。新開発のEV専用プラットフォームや斬新な内外装デザイン、一充電あたり700kmを誇る走行距離など、自動車大変革時代の嚆矢(こうし)たる存在の仕上がりやいかに。
眼前に広がる新しい世界
メルセデス・ベンツのEVにおける最高峰、EQSと初対面して、こりゃ新しいと思った。新しいといってもヘッドランプの形とかルーフラインがどうこうという表面的な新しさではなく、フロントのオーバーハングがぎゅっと詰められた、全体のフォルムが新しい。
ご存じのとおりクルマは馬車の後継で、馬車というのは4頭仕立て、8頭仕立てと、馬の数が多くなるほど高級だった。つまり先っちょが長くなるほどエラかったわけで、それはクルマにも引き継がれた。8気筒、12気筒と、先っちょが長くなるほどエラかったのだ。
けれどもEQSは、そうした文脈とお別れをした。メルセデス・ベンツのEVとしてすでに世に出ている「EQA」「EQB」「EQC」は、エンジン車の基本骨格を使いまわしてつくったEVだった。けれどもEQSは、EV専用の基本骨格で開発されている。つまりボンネットの下にエンジンがあるというこれまでの常識から離れて、ゼロから設計したのがこのEQSというわけで、これが先っちょの短い新しいフォルムが生まれた理由だ。
独立したトランクのある3ボックスのオーセンティックなセダンではなく、ハッチバックのスタイルを採っていることも、新しさを強調している。
エンジン車の父であるメルセデス・ベンツが、ついにエンジンがないことを前提にしたクルマをつくるようになった……、と、新しい時代を迎えるワクワク感が半分、エンジンにサヨナラする感傷的な気分が半分、といった心持ちでドアを開けようとすると、ドアと一体化していたドアノブが、ドライバーを手招きするようにポップアップした。ドアノブを引いて運転席に座ると、眼前にはこれまた新しい世界が広がっていた。...