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ビジネスの先を見通すのに役に立つ世界標準の経営理論


Photo:iStock
入山章栄(いりやま・あきえ)早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授慶応義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。 三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。 2013年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。2019年から現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。 著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)がある。Photo by Aiko Suzuki

入山章栄氏の最新刊 『世界標準の経営理論』は発売から1カ月で5万部を突破し、なおも好調な販売が続いている。800ページを超える本書は、約30の経営理論を網羅する。内容は章ごとに完結しており、いつ、どこから読んでも良い。ビジネスに関わる全ての人が、辞書のように利用できる。

取引費用理論(transaction cost theory あるいはtransaction cost economics:以下TCE)は、「人の将来を見通す認知力の限界」を前提にする。ビジネスに不測の事態が起こったとき、いかにコストをコントロールするかを思考する際の道標になる。巨大コングロマリットが解体され、生まれながらにしてグローバルな企業が台頭している理由も、TCEから読み解くことができる。

取引ガバナンスの関係

(図表5) 拡大画像表示

さて、ここまではTCEによる「市場vs.ハイラーキー(企業)」という二者択一のガバナンス選択を述べてきたが、現実のビジネスにはその中間形態もある。市場と企業の混合という意味で、ハイブリッド・ガバナンスと呼ばれる。

代表的なのは、企業間提携(アライアンス)関係だ。アライアンスは、複数の企業が互いに何らかの経済取引を行っているという意味では、市場取引の側面を持つ。一方で、複数社がそれぞれの経営資源を持ち寄って、一つの組織として共同作業をすることも多い。その意味ではハイラーキーの要素もある。

さらに言えば、ハイブリッド・ガバナンスであるアライアンスにも、純粋市場に近いものからハイラーキーに近いものまで、濃淡がある。例えば技術ライセンシングは、契約をして技術のやりとりをするだけなので市場取引に近い。他方、共同R&Dでは、両社が様々な知識・技術を持ち寄って一つのチームとして共同作業をするから、ハイラーキーに近くなる。さらにハイラーキーに近いのは、複数社で資金を出し合って新しい会社をつくるタイプのアライアンスだ。すなわち合弁事業である。

図表5は、横軸に純粋市場取引とハイラーキーを両極として、様々な取引ガバナンスを並べたものだ。横軸を右に行くほど、ハイラーキーに近づく。TCEの視点で言えば、(1)不測事態の予見不可能性、(2)取引の複雑性、(3)資産特殊性、が高まるほど、企業は右方向の取引ガバナンスを選択した方がよいことになる。

縦軸は、上に行くほど取引コスト以外の費用(投下する資金・生産コスト・販管費など)を抑えられる。一般に、取引コストを抑えようとするほど、相手をコントロールする必要があるので、そのために投下する資金・生産コスト・販管費などがかかる。逆に合弁企業のように新しい組織をつくるよりは、技術ライセンシングの方がはるかに投下する資金はかからない。...

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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