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「あなたにとってポルノグラフィティとは?」 激動の時代25年、第一線で闘い続けてきた偉業

嚴島神社でのアコースティックライヴの様子

嚴島神社でのアコースティックライヴの様子

25年間ファンを魅了し続ける要因は、“進化への執心”

 また、彼らの本領はそれだけではない。全国のホールはもちろん、アリーナやスタジアムクラスも常連といえるまでになり、デビュー10周年と20周年にはドーム公演を敢行している。生演奏と生歌で勝負できるライヴバンドとして、この25年間ファンを魅了し続けてきたことも忘れてはならない。

 そこにはやはり、彼らの“進化”への執心が大きく影響している。それも、貪欲なまでに泥臭いこだわり。例えばオリコンで過去に行なったインタビューでも、彼らは作品ごとに“進化した姿”と“次への布石”を語っていた。

 「“限界までいこう”っていうのが僕の中でのテーマだったので、どうせテンポ上げるならギリギリまでいってやろうと思っていて。変な話、そういうのにチャレンジすると、僕的には歌が変わっていく。これを歌い切れたことで、また次の歌にチャレンジできるんですよね。『THE DAY』を作って、すごくそれを思った。ライヴをやると、自分の喉が研磨されていくのも感じるんです」(岡野)

 「本間さんに頼らずに作っていこうという形になってから7〜8年、いろんな試行錯誤をしてきた中で、そのサイクルがここに近づいてるというか。自分の中では、ポルノルネッサンスというか、ポルノグラフィティ再評価というか。もちろん、ここからまた違うベクトルのものを作りたくなることもあるとは思うけど、自分では、今がポルノグラフィティ再評価の期間なんですよね」(新藤)
※2016年11月、「LiAR / 真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ」インタビュー

 「例えば車で言うと、日頃からほどほどにギアを上げていないと、いざというときにスピードは出ないと思うんです。現役でありたいと思うなら、ある程度の大きいギアを入れなきゃいけない。下げることもできるんだけど、そうすると違うステージに行かなきゃいけないわけです。それこそヒット曲があれば、お金を儲けるためにやるというシフトダウンもできるかもしれないけど、そうはしたくないから、走るしかない。ゆっくり走るのは嫌だから、ギアは下げないんだと思います」(新藤)
※2017年9月、「キング&クイーン/Montage」インタビュー

 デビュー25周年イヤーとなった2023年9月からは、嚴島神社でのアコースティックライヴの無料配信やアリーナ規模の全国ツアー、ふたりの故郷である因島にて島を丸ごと使い、様々な企画を行った「島ごとぽるの展」などを開催。そして今年の9月には、「因島・横浜ロマンスポルノ’24〜解放区〜」と題して因島運動公園と、横浜スタジアムにてライヴを行った。その中で私が見た1日目の横浜スタジアムは、広がる空と風の流れ、観客の情熱が会場いっぱいに広がり、まるでひとつの生きた島のように生命力で溢れていた。ここでは少しだけ、8年ぶり5回目となる横浜スタジアム公演を振り返ってみる。

どんなMCよりもまっすぐに彼らの想いを伝えていた、「解放区」

「因島・横浜ロマンスポルノ’24〜解放区〜」横浜スタジアム公演

「因島・横浜ロマンスポルノ’24〜解放区〜」横浜スタジアム公演

 セットリストは、アニバーサリーライヴだからといってヒット曲やファン人気の高い曲を総動員するなんてことはなく、むしろ25年間でポルノグラフィティを支えてきた曲たちや、今伝えるべきメッセージが込められた曲たちが中心。結局のところそうした選曲が最もファンを興奮させるわけで、1曲目の「おいでよサンタモニカ」から、ここはライヴハウスだったかと一瞬戸惑うくらいの熱気がステージに向かう。

 万人の知るヒット曲や、ライヴで支持される曲を年代無関係に並べられるのは、それぞれの楽曲がリリース当時の流行りに翻弄されていなかった証だ。淡々と弾いているように見えて、じつは随所で複雑なギターテクニックを入れ込んでくる新藤。目測で70〜80mはあるであろうステージを右へ左へと、歌いながら何度も走る岡野。他の誰にも真似のできない楽曲構成と歌詞、ピンと張った歌声と「どこを切ってもポルノだわ!」と思える曲の連打が相変わらず心地よく、25年を経ても目の前の巨大なステージに彼らがいることを、あらためて心の底から誇りに思った。

 満席の観客は、「OLD VILLAGER」「THE DAY」といった豪速な曲では飛び跳ね続け、「シスター」「愛が呼ぶほうへ」といったメロウな曲では涙を浮かべる。とにかく余すことなく、全身全霊でポルノグラフィティを浴びようとしている。夕方に差し掛かり、ステージの照明が色濃くなってきた頃に聴かせた「ひとひら」は、まさにこの会場に集まった、成長と変化をとげながら大事なものだけ抱えて生きてきた人々を優しく包み込んだ。世の中に、目的に向かって進む人を讃える歌は多いものの、進んできた自分を慈しむ歌はあまりない。少しの迷いや後悔はありつつも、また新しい一歩を踏み出す勇気を歌ったこの曲こそ、リアリズムを核とした、ポルノグラフィティのもっとも柔らかくて真摯な部分を表していると感じた。

 踊りすぎて歌いすぎて、関係者席で見ていた私ですら汗だくになった横浜スタジアムのライヴ。本編ラストに披露した最新シングル「解放区」は、どんなMCよりもまっすぐに彼らの想いを伝えていた。

 変わることを恐れずに、自分たちの歩き方で進めばいい。進めないときは、信じることだけすればいい。そんなふうにとれる同曲は、信念のもとに自らの道を歩んできたポルノグラフィティと、その生き様に共鳴してきたファンとの絆が今後も続くことを誓っていた。そして演奏後、大画面には以下のメッセージが流れた。

「わしらにとってポルノグラフィティとは
あなたにとってポルノグラフィティとは
いつか答え合わせしよう」

 最後の一行は「幸せについて本気出して考えてみた」のサビのフレーズだ。ポルノグラフィティとは? ──その答えはきっと、簡単にはわからない。というよりも、まだ、わからなくていい。それは、彼らは今後も進化し続けるからだ。答えを出す=形を決めることよりも、考える=進化することを表明した、じつに彼ららしい25周年だったと思う。

(文:川上きくえ)

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