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「人生の最後に、自分の大切なものを『諦めろ』は酷」犬・猫と入居できる老人ホーム、現場を10年見つめてきた中での課題とやりがい

「高齢者がペットと暮らし続けるための支援のあり方を、社会全体で考える必要がある」

 では、高齢者施設にペットを受け入れることへのハードルはあるのか。意外にも「環境面ではハードルは低いんです」と若山さんは話す。

「たとえば滑りにくく、汚れに強く、転んでも怪我をしにくい床材。あるいは車椅子がぶつかっても傷がつきにくい壁材。そうした介護用の建築資材って、犬や猫が暮らす環境にも適しているんです。またアルコール消毒などの感染対策は高齢者施設では日常的なものですから、衛生面にも問題はありません。一昔前の高齢者施設は入居者さんの失禁など臭いとの戦いでしたが、今は空気清浄機や洗剤も格段に性能が良くなっています。便や尿の処理もスタッフは手慣れたものですから、今は臭いで困っている高齢者施設はほとんどないと思います。そこにペットが加わっても特別な対策は必要ないんですよ」

 では、制度面ではどうなのだろうか。

「おそらくそこが一番のハードルかもしれません。横須賀市は殺処分ゼロをいち早く実現していたりと動物行政に理解がありましたが、許可の出ない自治体もあります。動物と人間の関係がこれだけ変わった今、高齢者がペットと暮らし続けるための支援のあり方を、社会全体で考える必要があるときに来ていると思います」
 なお、さくらの里山科では入居者はもちろん、スタッフも“完全なる犬猫好き”に限定して配備している。

「ただ犬猫のお世話は本来の業務ではないですし、スタッフの負担を考えればもっと増員するべきなんです。しかし高齢者施設はどこも人手不足ですし、経営も常にギリギリ。『犬猫がいるからここで働きたいんです』と言ってくれるスタッフに甘えてしまっているという点では、私は経営者失格ではないかと思うこともあります」

 特別養護老人ホームの運営には介護保険から経費(介護報酬)が交付されるが、あくまで“本来の業務”に使うためのお金。犬猫に関する年間300万円の費用が運営を圧迫しているのも事実だ。
「どんなに厳しくなっても止めるつもりはありませんし、ペットと高齢者が暮らすことを特別なことだとは思っておりません。旅行が好きな人を旅行に連れて行く、美味しいもの好きな人は美味しいもの食べれるようにするというように、ペットと暮らしたい人がペットと暮らせるようにしたいと考えております。その人にとって、人生で大切なものを諦めないようなホームにしていきたいです。

 私はそもそも、特養もデイサービスも、楽しいだけでいいじゃないかと思っています。人生の最期をここで過ごすんだから、楽しいほうがいいに決まってる。とはいえ、いまだに福祉の世界では、贅沢なことや楽しいことはよくないみたいな価値観は残っています。

 以前、祐介くんという猫と一緒に入居された方がテレビのインタビューに『今が至福の時です。人生の中で今が1番楽しい』で話してくれたんです。これは嬉しかったですね。やっぱり高齢者がみんなそう言えるような世の中になってほしいです。若い頃も楽しかったけど、今が1番楽しいよって。普通の人と同じように高齢者も普通の生活を楽しめる。そういう社会になってほしいですね」
(取材・文/児玉澄子)

『犬が看取り、猫がおくる、しあわせのホーム』(石黒謙吾 文・写真/光文社)

『盲導犬クイールの一生』の著者が刊行後23年目に贈る、静かな感動の記録ふたたび。横須賀にある老人ホームはしあわせの場所だった。人の死期を悟って看取る奇跡の犬・文福、そして「同伴入居」で老人と一緒に施設に入る愛犬・愛猫。さらには、保護犬。保護猫たちもやってくる。そして、一緒に暮らして最期のときまで寄り添う犬猫たち。老人護施設には、今日もあたたかな時間が流れる。犬と猫と人、みんな一緒に老いていく。

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さくらの里山科 
公式HP:http://sakura2000.jp/publics/index/8/
看取り犬・文福くんほかホームで暮らすワンちゃんネコちゃんの日常をつづったブログ
https://ameblo.jp/sakuranosato-yamashina/

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