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痛みで全身麻酔も…タトゥーのカジュアル化に医師が提言「除去には3〜5年、国産車を買えるくらいの費用がかかる」

 近年、カジュアル化が進んでいるタトゥー。かつての“入れ墨(刺青)”のイメージは変わり、若い世代を中心にファッション感覚で入れる人が増え、その様子がSNSで多数配信されている。現在ではプールや温泉など公共施設でも寛容になりつつある。一方で身近になった分、学生が夏休みなどに軽い気持ちで入れ、のちに後悔して除去するケースも。個人を尊重する社会的な風潮と共にタトゥーへの意識は変わりつつあるが、社会生活の一部ではいまだ弊害になることがある。タトゥー除去をした場合の費用や期間、施術方法や痛みなどのリスクについて、共立美容外科の新宿本院院長兼総括院長の浪川浩明さんに聞いた。

B型肝炎やMRI検査の弊害は? カジュアル化するタトゥーの身体的リスク

――先日、防衛省が少子高齢化が進む中、自衛隊の人員を確保するためにタトゥーを入れていても採用すべきかどうか、検討する意向を示し、話題になりました。近年、若者の間ではファッション感覚で気軽にタトゥーを入れる人が増えています。カジュアル化が進む一方で、後悔し除去に踏み切るケースも増えているのでしょうか?

浪川浩明さん タトゥー除去に訪れる人は、一定割合(数)おります。そしてそれは、文化や風土など地域によっても差があります。例えば、新宿本院では月間10名程度ですが、入れ墨を入れることに比較的寛容なとある地方の漁師町などでは、分母となる入れ墨人口が多いためなのか、1日のうちに3名、あるいはそれ以上のことがあります。そこには、やはり若い人が目立ち、タトゥーがファッション化していることを感じます。

――タトゥーを入れることの医療的観点からのリスクを教えてください。

浪川浩明さん 入れ墨そのものには、長い歴史的背景もあります。それ自体に特別なリスクがあるとも言い切れませんが、例えば、色素によるアレルギーや発がん性などの問題も完全には否定できないでしょう。ただ昔から使われている色素は淘汰されることによって経験上問題の少ないものが残っており、さらに新しい色素は近代科学の叡智が加わっています。実際のところタトゥーによる皮膚障害の報告は、私の知る限りではほとんどありません。

――B型肝炎へのリスクを聞いたことがあります。

浪川浩明さん 昔は色素を入れる針の使い回しで、B型肝炎などが多く見られました(感覚的には、半数以上がB型肝炎キャリアーの印象があります)。現在はさすがにそこまでではないと思います。もちろん衛生管理を厳格に行うといっても医療機関ではないわけですから、感染症のリスクはゼロではありません。また海外で入れる場合は、なおのこと衛生管理が十分とは言い切れないと思われます。

――顔面や頭皮にタトゥーを入れる人もいます。入れる場所によるリスクもあるのでしょうか?

浪川浩明さん 基本的に皮膚に色素を入れるだけなので、前述のリスクと同じです。体の場所によって変わることはありません。

――タトゥーがあるとMRI検査を受けられないと聞きます。

浪川浩明さん 入れ墨の色素に重金属が使われている可能性があるからでしょう。カドミウムや鉛は黄色、水銀や鉄は赤、銅やコバルトは緑〜青など、金属酸化物は色目を持ちます。特に鉄やコバルト、ニッケルなどは磁性があるため、MRIの強磁空間では熱を発することがあります。結果、皮膚が加熱し、火傷を負う可能性があります。ただし重金属は毒性があるものも多く、現在の日本では基本的に鉱物由来の色素は使用されていないと思います。色素は、植物由来または合成有機系が使われていることが多いと聞きます。ただ、入れ墨を施行する施設は医療機関ではないので、どのような色素が使用されているのか、完全に把握はできていません。

外科手術で皮膚を取り除くかレーザーの2択、通常除去までに3〜5年かかる

――タトゥー除去治療には、どのような方法があるのでしょうか?

浪川浩明さん 大きく分けて2つの方法があります。1つは、レーザー照射による色素の除去。もう1つは、色素が入れられている皮膚そのものの外科的除去です。ただ外科的除去には条件があります。除去して欠損した皮膚を補うのに十分な皮膚量が確保できているかどうかということです。

――具体的に外科手術ができない場合を教えてください。

浪川浩明さん タトゥーのサイズが大き過ぎる場合、残った健常皮膚が不足して縫えません。またサイズが小さくても、手の甲や指など、皮膚そのものの量にもともと余裕がない部分も縫合が困難です。お腹や背中、太ももなどは皮膚量に余裕がありますので、仮に手のひらサイズ大のタトゥーでも場合によっては、むりやり縫い寄せることも可能です。ただし、タトゥーのサイズが大きいことは、そのまま傷の大きさにも比例します。外科的なテクニックをどんなに駆使しても、傷は残ります。ただ外科的除去の最大のメリットは、治療が1回(ないしは少数回)で済みため、時間がかからないことです。

――もう1つの方法はレーザーですが。

浪川浩明さん レーザーとは、組織(皮膚)を傷つけず、色素だけを選択的に取り除く方法です。最終的なキレイさでは、レーザーの方が圧倒的に有利です。また、外科的除去で制約されたサイズや場所の問題もありません。ただデメリットは、回数と時間がかかることです。多色か単色か、彫師のクセなど条件によっても異なりますが、通常は20回前後、3年以上はかかります。

――なぜそんなに時間がかかるのでしょうか。

浪川浩明さん レーザーは、光なので表面の色素から反応していきます。彫り師にもよりますが、タトゥーは入れる色素の密度や深さで色の濃淡をつけます。技術のある彫り師ほど多層に入れて、黒の色素でも淡い黒や鮮明な黒などグラデーションを出します。レーザーの場合、単層で狭い範囲だと光線に反応しやすいのですが、多層だとやっかいです。

――繰り返し照射が必要になるのですね。

浪川浩明さん レーザーは短時間で色素単体にエネルギーを集中して壊すので、熱が拡散せず火傷にはなりません。一方、表面の色素から反応し、それより深いところには光線が届きません。いたずらに出力をアップすれば熱の影響による火傷の可能性があるので、回数を重ねる必要があります。また、1回照射してから通常は3ヵ月ほどのインターバルを取りながら除去します。理想は3ヵ月ですが、急ぎの場合でも2ヵ月。それを平均20〜30回行うので、除去できるまで3〜5年ほどかかります。

――多色のタトゥーはさらに時間がかかるのでしょうか。

浪川浩明さん レーザーは特有の波長を発生させる機械ですが、1レーザー1波長。フィルターなどを変えて波長を変えることできません。吸収性の高い黒を除いて、一色に対して1種類のレーザーが必要です。多色刷りには複数のレーザー機材を用いないといけないので、時間も費用もかかります。

レーザー除去の痛みで全身麻酔も…多色の場合ほど費用がかかる

――SNSなどでは、レーザー除去はタトゥーを入れるときの100倍痛いという声もあるようです。

浪川浩明さん 入れる時よりも痛いのは間違いありません。注射で薬液を入れる麻酔は、色素の色目が希釈されてレーザーの反応が鈍くなるので使用しないことが多いです。一般的には、皮膚の表面に塗るクリーム麻酔を使います。レーザー照射1〜2発だったら麻酔なしでもいいかもしれませんが、1回に何百発、範囲が広ければ何千発と当てます。そうなるとその痛みはとんでもなく大きい。タトゥーを入れる時の痛みに耐えていても、大抵の人はレーザー除去の痛みに顔色を変えます。痛みに弱い人やクリーム麻酔で効きが不十分な人は、全身麻酔を使うケースもあります。

――レーザー除去の費用はどのくらいになるのでしょうか。

浪川浩明さん レーザー機械は非常に高価で、新車Sクラスベンツが変える金額です。またミラー、レンズなど使用劣化によって交換が必要な部品も多く、ランニングコストもかかるため、必然的に高額になります。通常の施術は、1センチ四方で1万円くらいが相場です。タトゥーの大きさにもよりますが数百万かかり、国産車を買えるくらいの金額になるでしょう。また、多色の場合はさらにかかります。

――色素は完全に落とせるものでしょうか。

浪川浩明さん 十分なインターバルを取って忍耐強く続けていけば、単色であればほぼ入れる前の状態まで持っていけます。市販の器具を使って自分で入れたタトゥーや、指に入れた指輪のようなものは、単色単層のためキレイに消えることが多い。一方、多色だとそこまでいけないケースもあります。明るい色は色素がレーザー光線を吸収せず反射してしまうので、反応しにくい。黄色系などはレーザーで消しきれないことがあります。その場合は、まわりの色素を落として範囲を狭めてから外科的処置で切除したりします。

――レーザー除去でその部分の皮膚がケロイド状になるようなことはありませんか。

浪川浩明さん レーザーは基本的に熱光線ですから、周囲の細胞を熱で壊さないように、ゆるいエネルギーで薄い層を少しずつ削っていきます。2度の深度熱傷以上になると跡が残る可能性がありますが、2度でも浅い熱傷なら一時的な発赤はあっても跡は残りません。レーザーはそのレベルでとどまるようにエネルギー調整されています。

――除去する部位によるリスクはあるのでしょうか。

浪川浩明さん 基本的にはそこまでのリスクはありません。除去は医療機関が行うので感染症を起こすこともまずない。ただ、レーザーは黒に反応するので、頭皮の場合は色素のみならず毛根に反応して、脱毛してしまうリスクがあります。また、皮膚に膿瘍がある場合や、強い麻酔を使う可能性もあるので妊娠初期の方、熱性疾患や衰弱性の疾患にかかっている方は通常やりません。

20〜30代前半で就職や結婚のために除去するケースが多い

――どういう理由で除去しに来院する方がいますか?

浪川浩明さん 例えば、若気の至りで肩にタトゥーを入れた学生が、消防士になるための条件にひっかかるので除去しに来たことがあります。レーザーだと3年はかかりますが、就職までに半年もない。時間をかけられないということで、傷は残りますがタトゥーを切り抜く外科的処置を選びました。

――除去が特に大変だった事例はありますか?

浪川浩明さん 特にはありません。ただ、痛みや金額的な問題などで、途中断念して来院しなくなるケースがあります。考えてほしいのは、タトゥーが良い悪いかは別にして、技術のある彫師が入れたタトゥーそのものは芸術です。ところが中途半端に消したものは芸術でもないし、心象が良いわけでもない。入れるにしても消すにしても、中途半端が一番よくないと感じます。

――除去しに来る人の年代的な特徴はありますか?

浪川浩明さん 血気盛んな10代に入れて、就職や結婚など人生の転機で後悔するパターンが多い。男性は20〜30代前半が増えています。女性は、主婦になって、あるいは子どもの手前ということで30代前半が多いです。

――いまタトゥーを入れる若者世代が増えているということは、この先、除去する人も増えてくるのでしょうか。

浪川浩明さん そういうことですね。いま現在はそれほど増えている実感はありませんが、現在進行形の人たちは10〜20年後になるので、タイムラグがあるでしょう。

――掘るのは彫り師の元でできますが、除去するための選択肢は医療機関しかありませんよね。

浪川浩明さん そうですね。病院でも引き受けているところがないわけではありませんが、そこを探すのはなかなか大変です。美容外科が駆け込みやすい施設だと思います。費用的には相場があり、だいたい変わりません。一方、極端に安いところは怪しんだほうが良いでしょう。医療行為であることを考えて、しかるべき施設で受けることをお勧めします。

――タトゥーがカジュアル化している現状に思うことはありますか?

浪川浩明さん 個人の自由が尊重される社会的風潮の中、タトゥーはファッション性があり、個性を出せると考える若者が増え、それを容認する世の中になるのは悪いことではありません。ただ、タトゥーを入れたことを長い人生の中で、後悔しないかということです。ファッションには流行もあります。そして、時間を経て生活のステージや社会的立場が変われば、社会への意識や考え方も、ライフスタイルも変わります。タトゥーは入れるより除去するほうがはるかに大変。時間も費用もかかるし、大きな苦痛もある。入れるのであれば、生涯後悔しないかの覚悟が試されます。

(文/武井保之)
共立美容外科 新宿本院院長兼総括院長 浪川浩明先生

プロフィール 共立美容外科 新宿本院院長兼総括院長 浪川浩明先生

1991年、帝京大学医学部医学科を卒業。
同年、東京厚生年金病院の形成外科に入局。
2006年、共立美容外科・歯科に入局。
2009年、共立美容外科・歯科 新宿本院の院長に就任。
2009年、共立美容グループの副院長に就任。
2020年、共立美容グループの総括院長に就任。

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