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格安ヘアカット「QBハウス」に予期せぬ新規顧客? “コスパ&タイパ”重視のZ世代にマッチ

 1996年11月、国内初の“ヘアカット専門店”として東京・神田美土代町に1号店をオープンし、以後全国各地で店舗展開してきた「QBハウス」。一般に“ヘアカット専門店”と言うと、主にサラリーマンが利用する「格安カット」のイメージが強かったが、それも今は昔。近年では、都心を中心に “Z世代”の顧客が増加中だという。今、QBハウスで何が起こっているのか? 担当者に話を聞いた。

“10分1000円”で瞬く間に大ヒット だが、理美容業界からは冷ややかな反応

 美容院ではカット、シャンプー、ブローにカラー、パーマなどさまざまなサービスがあるが、その中で「カット」に特化し、“10分1000円”の価格でスタートした「QBハウス」。当時、誰も思いつかなかった画期的なサービスを発想したのは、理美容業界とは全く無縁だった創業者の故・小西國義氏だった。
「数あるサービスの中で、カットの部分だけを切り離すなんて、理美容師の人たちには考えつかなかった。創業者は美容師ではなかったからこそ発想できたわけで、それを本当にやってしまう実行力があったのだと思います」(キュービーネットホールディングス株式会社 広報担当 平山貴之さん/以下同)

 ただし、それまでになかった業態を理解してもらうことは大変だったという。「途中でうまくいかなくなって、夜逃げされるんじゃないか…」と思われ、テナントを借りるのも難しかったそうだ。

 とはいえ、一般ユーザーからは「面白いね」「こういう店あっていいよね」など、興味関心は高く、手ごたえはあった。その反面、理美容業界の人たちからは「まあ一過性のものだろう」「お客が入るはずがない」と冷ややかな反応だったという。
「現在のように台頭してくるとは、皆さん思ってなかったのでしょう。ただ個人でやられている理髪店さんや床屋さんからしたら、かなり脅威だったのではないかと思います」

 創業者は、このビジネスモデルを保つためには『忙しくて時間のない人』『カットサイクルが早い人』が必要と判断。そこでサラリーマンをメインターゲットとし、1号店も神田美土代町にオープンした。その読みが見事に当たり、創業当時から着実に店舗数を伸ばしてきた。当然、男性客が多かったものの、女性客もある一定数は存在していた。
「時間に余裕があって、『おしゃべりしたい』『イケメン美容師に切ってほしい』という方なら時間が長くてもよいですが、家事や子育てで忙しい主婦の方は『早く(カットを)終わらせたい』と思っていらっしゃいます。また『美容師と話したくない』という方や、『長時間、同じ姿勢を保っているのが難しい』という高齢の方もいらっしゃいます。そのような方々が弊社を利用してくださっていました。現在でも約13%が女性のお客様です」

高齢層は来店するが格安店でのカットに恥ずかしさも…一方、Z世代は合うと思えば堂々来店「“自分”をしっかり持っています」

 創業以来、その利便性が受けて順調に店舗を広げてきた「QBハウス」だが、一方でスタッフの人材不足も予想された。「自社で教育していかないとまかなえなくなるだろう」と危機感を覚え、2012年に社内カットスクールの「ロジスカットスクール」をスタートさせる。

 同スクールのカリキュラムは半年間。カットの技術はもちろん、仕事への取り組み方、接客マナー、業界の知識など幅広く指導し、一人前のスタッフを育成している。
「理美容業界って、“見て覚える”が基本で“人に物事を教えない”のが通例ですが、ロジスカットスクールでは手取り足取り教えています。スクールを立ち上げる時、『技術だけ覚えて、すぐに辞めちゃうんじゃないの?』という声もありましたが、そこは面接を強化して人を選ばせていただいています。『単に技術力がないだけで、人柄は良い』という人は、うちで教えればいいので採用しますが、その逆の場合は、どんなに(カットが)上手くてもお断りしています」

 人材育成するとともに、「サービスの質向上」に務めてきた同社だが、そこから思わぬ副産物も生まれた。ここ3〜4年の間、都市部ではZ世代の顧客が増えているという。同社で実施しているマーケティング調査によると、「Z世代がQBを選んだ理由」の1番目は「短時間で終わること」、2番目が「親しみやすさ」、3番目が「接客の良さ」となっている。

 この意外な需要に平山さんも「Z世代は映画なども倍速で観るなど、タイパ(=タイムパフォーマンス)の意識が強いので、短時間で終わるQBはマッチしているんだと思います」と分析。さらに「われわれがお客様の満足度を上げていこうとサービス向上に取り組んできた結果、Z世代の人たちが『親しみやすさ』『接客の良さ』を支持してくれました。これはうれしい誤算でしたね」と、理美容業界を救うために始めた取り組みが、新規顧客の獲得につながる結果となったようだ。
「たとえば上の世代だと『安いカット店を利用しているのを、人に知られたくない』と考える人もいますが、Z世代の人たちにはその感覚がありません。彼らは“自分”をしっかりと持っていて、自分が『良い』と思えば(店を)利用してくれるんです」

 また、QBハウスを体験したユーザーはリピーターになることが多いという調査結果も。10年前には顧客の7〜8割がリピーターだったが、現在では実に93%を超えているという。平山さんも「この数字を見た時、『すごい』と思いました。やはりわれわれがサービスの質向上に取り組んできた成果が表れているのかなと思います」と胸を張った。

「“ブラック”と言われる理美容業界を“ホワイト”に」、タイパ&コスパ重視とは異なるコンセプトショップや海外展開に注力

 同社では、2020年より「QBプレミアム」という新たなコンセプトショップをスタートさせた。ここではアプリでの予約が可能になり、簡単なスタイリングもしてもらえる。さらに店舗によって異なるものの、プレミアムコーヒー(有料)、充電スポット、フリーWi-Fiを提供する待合スペースを完備するなど、従来の「QBハウス」よりも多くのサービスを提供している。

 「QBプレミアム」は東京・大手町の1号店を皮切りに、梅田(大阪)、北綾瀬(東京)、新百合丘(神奈川)、渋谷(東京)と出店し、6月30日に東京・行徳に6号店をオープンした。立地場所には一見脈絡がないようにも見えるが、決して無作為に出しているわけではない。
「東のビジネス街、西のビジネス街、郊外、若者の街など、あえていろいろな場所に出店し、これを今後の店舗に活かすためのモデルケースと考えています。この『QBプレミアム』は10年後の『QBハウス』のスタンダードを目指しています。そのために、お客様に何が必要とされるか、何が必要とされていないのかを検証し、戦略を立てることが重要なポイントだと考えています」

 10年前に人材不足を懸念してロジスカットスクールを展開し、2020年にはコンセプトショップのスタートと、同社は「常に10年後を見据えて展開している」という。

 現在、海外ではアメリカ、香港、台湾、シンガポールに店舗展開しているが、今後は「アメリカの店舗をさらに広げ、海外展開に注力したい」とも平山さんは語る。それと同時に、「ブラックと言われる理美容業界を、ホワイトカラーにしていきたい」という強い思いも。
「理美容業界は『サービス残業は当たり前』という過酷な労働環境にあり、以前から本当に厳しい業界だなと思っていました。もっとホワイトな業界の企業を作らないと、理美容業界から人がどんどん出て行って、業界全体が沈んでしまう。なので、うちがトップを切ってこの業界を変えていきたいと思っています」

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