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ORICON NEWS
裏社会ジャーナリスト・丸山ゴンザレスが感じる“真の恐怖”とは「日常の些細なことのほうがよっぽどリアル」
「犯罪でもなければ裏社会でもない。けれども面白い…そういった場所が世界にはある」
そんな彼が物書きとしてジャーナリストを名乗り始めたのは2011年3.11東日本大震災の時。それ以前はノンフィクションライターを名乗っていた。記事を執筆するようになったのは出版系の人から「書いてみたら?」と勧められたから。元々彼は大学時代に考古学を専攻しており、大学院まで履修。だが平成不況で特に文系出身者には職がない時代での卒業だったため、歌舞伎町などをフラフラしながら、日雇いやバイトで食いつないでいた。そこからノンフィクションライターへ。書くテーマや媒体が大きくなり、現在に至るという。
「ですから僕が裏社会、危険地帯のジャーナリストという肩書でよばれるのは、あくまでいろいろやっているなかでの裏社会なんです。そもそも裏社会だけを追っていても広がりはない。それらに付随した街や制度、スキーム、そこに暮らす人々を取材してこそ成立するジャンルなんですね。海外でもスラムに限らず、ちょっとヤバいところにも行きます。だが国によって合法・違法の事柄も違う。つまり、犯罪でもなければ裏社会でもない。けれども面白い、そういった場所が世界にはあるということなんです」
例えばアメリカのマリファナ事情では、その地域では合法であるため表立って取材ができる。そういったグレーゾーンのカルチャーに惹かれるのは「面白いから」と丸山氏。夕方や夜のニュースを例に挙げ、「殺人事件の報道が多い。それは皆が興味あるから。あとは食えない時代に事件ものを扱うと記事が売れた。その実体験が皆が興味を持っているという根拠にもなっている」と解説する。
街に死体が転がっていても銃撃があっても恐怖を感じない「僕にとってのリアルではないから」
その動画のなかで丸山氏は「最後に、この人がマフィアだったら嫌だなと思って、“あなたたちはカタギだということですが、マフィアと見分けるポイントはないかと尋ねたんですよ。すると銃が新品だったりすると危ないと。確かに彼らの武器はボロボロだった。だが、取材が終わった時に部下らしき人間がその人に何かを運んできてたまたま転んだ。すると、なかからピカピカの銃が現れて、これはヤバイかもと思って見て見ぬ振りをしました」と話している。さらには2ショットの写真を撮ることをほぼ強要。「なんか嫌だな」と思いながら仕方なく受けた。
後に詳しい人に話を聞くと「その写真はおそらく“手配書”として回されるもの。早くこの街を出たほうが良い」と警告を受けた。そして帰国2週間後。マフィアカルテルのメンバーが射殺されたという報道が流され、それを見た丸山氏は「あいつだ!」とゾッとしたと話している。
そんな経験も積みながら番組ではルーマニアにあるマンホールタウンにも潜入。現地の人でも“関わりたくない”感じがわかるマンホールタウンへ入る許可を得て、そこのボスからご馳走になったりもした。その時に「出された物は過剰にでも食べることで仲良くなれる」と話しており、今はそれなりの危険回避法もある程度は習得。同番組の神回ともいわれている。
「でもたとえば今ここで銃撃が起きたら逃げるだけなのであまり怖いという感情は生まれない。死体だって動かないからフィギュアと変わらないし、銃の音も意外と軽かったりする。怖いのは、偉そうな人がただじっとこちらを見ている時。あとは支払い用の現金がないとか締め切りを忘れていたとか、乗り換え時間が間に合わないとか日常の些細なことのほうが怖い(笑)。人間は、その人によってリアリティーに感じる設定やシチュエーションがあるから、人によるんですよね。(それらの恐怖は)僕にとってのリアルではないんです」
YouTubeの規制も強化傾向、“ヤバめ”のネタはオンラインサロンで 「安全圏で見る危険」を今後も提供
これには視聴者のニーズを自分のなかに落とし込み、この先の取材活動に活かすというマーケティング的要素もある。また本ではなく、“もの”を作ることに興味を持ち、アパレル系やグッズなどのアイテムをすでに作り始めている。これにもメリットがあり、たとえばデザイナーなどのクリエイターから直接意見をもらえたことが、新たな柱として自身の栄養となるのだと語る。
「あとは古き良き海の家みたいな感じのフェスで、裏社会っぽい人たちを集めてオフ会のような形とか。ぼったくりっぽい“体”でひねってやれたらおもしろいですよね(笑)」
確かに彼のチャンネルでは元組長など、反社の人々との対談の動画再生数が圧倒的に高かったりもする。それは単なる好奇心を超え、人が“危険”や“スリル”を求める一面もあるからではないかと考えられる。社会の発展により生命の危険が比較的少なくなってきた。その反面で、動物としての“刺激”が足りなくなり、それを補うために“危険”や“スリル”を求める。代表例としては絶叫系の乗り物やホラー映画などがあるが、これはあくまで、自分の身が安全である場所から感じられる“危険”である。
“危険”を安全な場所から“覗き見”したい。それが彼の取材や動画の魅力であり、実際に“危険”を目の当たりにしている彼が語る“裏社会などの恐怖”と、それを構築している精神構造、理論は非常に興味深い。
■丸山ゴンザレス倶楽部
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