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「間違いは名作の始まり」バナナグフ、左利きのザク誕生の背景…意図せぬミスが面白いガンプラの芸術性

(写真左)『バナナグフ』 制作・画像提供/ワンチームイチ氏 (写真右)『カッコよく汚したザク』 制作・画像提供/BB58氏の息子・ぷーすけ君 (C)創通・サンライズ

(写真左)『バナナグフ』 制作・画像提供/ワンチームイチ氏 (写真右)『カッコよく汚したザク』 制作・画像提供/BB58氏の息子・ぷーすけ君 (C)創通・サンライズ

 ガンプラモデラーの間で、共通言語のように言われている言葉、それが「ガンプラは自由だ」。固定観念に縛られることなく、想像(創造)力を働かせて、作ったガンプラは全て正しく、間違いはないという考え方のことをいう。今回紹介する2組のモデラーは、ガンプラ制作中に、本来のモビルスーツの姿とは異なる形になりながらも、オリジナリティあふれる形で作品を完成させ、賞賛を集めた。説明書通りではないからこそ面白い、“名作”はどのように誕生したのか? それぞれ話を聞いた。

失敗は成功のもと、既成概念や固定概念に縛られて思考が硬直化するのはよくない

 ブルーの機体が印象的なグフを、大胆にも黄色に塗装し、衝撃的な印象を残したモデラーのワンチームイチさん(@deguichi_one)。このような作品にしようと思ったのには、あるきっかけがあったという。

「ガンプラ仲間の城戸敬太さんが、グフの画像をアップされていたのですが、その肩アーマー部分についている“ツノ”が逆さま(逆方向向き)でついていたんです。間違ってつけられた肩の“ツノ”が、『まるでバナナだな』と思ったら、黄色で塗るしかなくなりました(笑)」

 仲間のモデラーのまさかの“ミス”だったが、それを見た瞬間、衝撃が走ったという。

「自分の中の『ツノはこうあるべきだ!』という固定概念があったことに気付いて、ショックを受けました。そして、城戸さんは『絶対直すべきではない』と思いました。偶然とはいえ、このミスを作品の個性として受け入れるべきだと。大げさにいうと、ガンプラだけの話しではなく、社会の寛容性に関わることだと思いました」

 実際、城戸さんは自分への戒めとして、修正せずにそのままの形で作品を発表し、この作品に感化されたモデラーたちが「#春のバナナグフ祭り」として、肩の“ツノ”を逆につけた作品を発表した。

「失敗は成功のもとです。ミスはみんなでフォローするもの。既成概念や固定概念に縛られて思考が硬直化するのはよくないことだと思い、ツイッター上の皆さんだけでも、自分の思いが伝わればいいなと、こうした発信をしました。まぁ伝わったかどうかはわかりませんが(笑)」

 この一連の出来事をきっかけに、ワンチームイチさんは、肩アーマーのツノをバナナに見立て、黄色い塗装を施すことに。塗装も「バナナに近づける為に下地に黒を塗ったり、黄色も異なる黄色を2色重ねて塗りました」とこだわり、結果、大きな反響を巻き起こした。

「もともとは城戸敬太さんの間違いグフがもとなんですが、それを知らない方でも、『バナナ風が新鮮』『かわいい』『面白い』という反応をたくさんいただきました。内輪で受ければいいやって作ったので、びっくりしました」

 そんな同氏は、ガンプラは「自由の象徴」「白いキャンバス」だという。

「先述の通り、既成概念や固定概念に縛られるのではなく、ミスさえも個性として受け入れ、自由な発想で、ガンプラを表現できたらいいなと思ってます。あくまでも自分が楽しむのが大前提ですが。決して思想信条を伝える為にガンプラやってる訳ではありません(笑)」

父親の監督不行き届きなはずが『5歳で左利きのザクをつくるとは、アレンジ力がすごい』

 一方、3歳からガンプラに興味を持ち、4歳から一緒に制作。5歳となった今では、でウェザリングまで施す立派なモデラーとなった息子を持つ、親子モデラーのBB58さん(@BB58_chokugeki)。その近作である、ウェザリングを施したザクがSNSで絶賛された。

「私が以前、ディランザをザクっぽく改造してウェザリングを施した作品を作ったのですが、それが息子に刺さったようで、『自分もザクを作って汚してみたい』と言い出したのがきっかけです。息子は、子どもなのにやたらと趣味がシブくて、陸戦の香りがするモビルスーツ(MS)、泥臭さが似合う機体全般に興味があるようです。ザクももちろん大好きですが、他にも陸戦型ガンダム、EZ-8、グフなどが好きだそうです」

 父親である同氏も「思いがけずカッコよく仕上がったので私自身も感心していたのですが、ここまで多くの反響をいただけるとは思っておらず、驚いております。『うちの子、スゲーな』と(笑)。あと個人的には、私が気合い入れて作った作品よりも多くの『いいね』をもらっていることについて、いくらか嫉妬もしております。『自分の力で勝ったのではないぞ!リアルタッチマーカーの性能のおかげだと言うことを忘れるな!』と言ってやりたいです(笑)」と、驚くほどの作品を仕上げ、嫉妬するほど賞賛されたこのザク。だが、同氏は、制作をサポートする際にある“ミス”を犯してしまったという。

「実は、今回左右の腕を間違えて逆に組んでしまっていて、右肩がスパイクアーマー、左肩がシールドになっているのですが、それに対して『5歳で左利きのザクをつくるとは、アレンジ力がすごい』といったコメントをいただきました。私の監督不行き届きで組み間違っているだけなのですが、それがいい具合にオリジナリティになってしまいました(笑)。5歳の息子が、大人を唸らせることができるって、すごいことですよね」

 一般的なMSとは逆手で武器を構えるザク。一方で、それがそれまでの概念になかった“左利きのザク”を生み出したともいえ、フォロワーはその世界観を絶賛した。このように自由な発想で、今後も“親子モデラー”としてガンプラを制作していきたいと話す。

「子どもと同じ趣味で楽しめるというのは、本当に幸せなことだと感じます。実は、公園などで、野球やサッカーを教えているパパを見かけるたびに『かっこいいな、自分もあんな風になりたいな』とうらやましく思っていました。でも、子どもとガンプラ趣味を共有できるというのも、なかなかいいものですね。
 私たち親子にとってガンプラは、『男同士だから分かる共通の楽しみ』になってくれています。息子の上に娘が3人いるのですが、残念ながらガンプラに興味を示していません。家族の中で私と息子だけが分かる楽しみとして、かけがえのないものになっています。
 息子は、自分で好きな色を塗ったり、改造したりして、オリジナル作品を作れるようになりたい、と言っています。コンテストとかにも興味があるようなので、応援・サポートしてあげたいと思います。そして、もうちょっと大きくなったら、お互いの作品で競い合ったり、アイデアを出し合って共作したりして、もっと世界を広げていきたいと思います」

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