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【話題のマンガ試し読み】日本のwebtoon誕生から10年、変わりゆく業界でマンガ家の本音は? 縦読み初のヒット作『ReLIFE』の裏側
10年前は「読者が初めて読む部類のマンガ」、現在は大手出版社もwebtoonに参入
夜宵草「読み慣れない」といった声は意外と少なく、みなさんスムーズに新しい文化を受け入れていたなぁという印象です。描く側はてんやわんやでしたが(笑)。
――意外ですね。
夜宵草『ReLIFE』は国内オリジナルでは初めてのwebtoon作品の一つでしたので、相当に珍しい…というか、読者にとって初めて読む部類のマンガだったと思います。でも、反発というのはほとんどなかったですね。連載媒体がwebtoonのみを掲載するアプリだったので、それを読みたい人がきていたからでしょうか。横読み作品群の中に掲載されていたら、また違ったかもしれません。
――今では日本の作家や国内で制作されたwebtoon作品もだいぶ増えてきました。この10年作品を出し続けてきた先生から見て、マンガ業界の意識の変化は感じますか?
夜宵草国内のwebtoonの歴史は今年で10年目になりますが、ここ2〜3年ぐらいで特に、大手出版社も動き出したり、個人作家ではなくスタジオ制作の作品が増えてきたりと、変化を感じています。「長年続けてきたことがやっと実を結び始めたかな」といった思いが強いですね。業界全体が盛り上がっていて、とても嬉しいです。
――韓国の作家さんが手掛けるwebtoon作品も人気ですが、日本の作品との違いを感じることは?
夜宵草うまく言語化できないのですが、パッと作品を見ただけで「韓国の作家さんかな」とわかるぐらいには、違いがあると思います。やはりwebtoon文化が日本よりも先に進んでいただけあって、作り方のノウハウやクオリティがとても高いなと感じますね。
先に流行していた韓国作品を参考にするも…、横読みマンガとの違いにパニックに
夜宵草きっかけは、webtoonアプリのオープニング作家に…との依頼を受けたことですね。私は「楽しそう!」と即答でお引き受けしましたが、当時は「もうちょっと怪しんだほうがいいよ」と周りからは言われました(笑)。こうして『ReLIFE』をwebtoon形式で描くにあたって、韓国の作家さんの作品を参考にしたのが2013年の夏頃。日本では始まっていないものが、韓国ではすでにかなりの盛り上がりを見せていました。でも、いくつかの作品を拝見しても、まっっったく描き方がわからなくて。横読みマンガの原稿用紙のようなテンプレートもなく、すべてが手探り。「こんな状態でフルカラーの作品を1週間に1話? 描けるものなの?」とパニックでした(笑)。
――大変なことも多かったのでは?
夜宵草モノクロの横読みマンガとフルカラーのwebtoonの両方描いてきた私個人としての意見ですが、横に比べて縦のほうがラクかなと感じています。マンガ家が一番悩むのってネームの工程かなと思うんですが、webtoonはページの概念がない分、そこがかなりラクです。1ページにコマが多すぎて収まらないとか、ヒキやめくりを考えなくていいので、自由度はかなり高いです。ただ、色に関してはやはり大変。着彩の工程は自由度が高く表現の幅が広い分、どう表現しようか迷うことが多いです。コマ割りも色も、自由度が高い分、“それがラクな時もあれば難しい時もある”という感じでしょうか。
――縦読み&フルカラーだからこそできる表現方法もありますか?
夜宵草縦であることで、“間”の取り方が演出しやすいなと思います。ページの制限がないので、贅沢に間隔を空けて“間”を表現できるのはwebtoonならでは。単純な時間経過もそうですが、ちょっとした言い淀みとか、そういったものも縦だからこそ演出しやすい場面が多々あるなと感じています。
――ストーリー展開にも影響するんですね。
夜宵草ページをめくれば、ある程度先まで見える横読みと違って、スクロールをしないとまったく視界(画面)に入ってこない、という仕組みはおもしろいなぁと思います。あとフルカラーの利点としては、時間帯や場所による環境光が表現できることですかね。夜・夕方・曇り・居酒屋など、シーンに合わせた色合いにすることで、より説得力や没入感、加えてドラマティックさなども底上げできると思っています。
――最新作『ツギハギミライ』で、webtoonならではの表現は?
夜宵草“嘘”で“つくろった日常”という設定の中で進んでいく物語なのですが、キャラ同士の会話で言い淀みを入れたり、表情は笑っていても背景のカラーリングを不穏にしてみたりと、色々工夫している部分はあります。
週刊連載をフルカラーで?「正気の沙汰じゃない」webtoon連載をどう実現するか
夜宵草これは明確に違いがあって、例えば企画案を編集部へ出すと「これは横読み向きだね」と指摘されることもあります。複雑に伏線が張り巡らされていたり、頻繁に前のシーンを読み返して確認をしたくなったり、そういった作品はwebtoonに向かないとは言われますね。“ページ”ではなく“膨大な縦長の画像”なので、webtoon作品は読み返しが大変なんですよね(苦笑)。なので、重厚な推理モノやミステリーモノなどはwebtoonだと珍しいんじゃないでしょうか。
――小説が原作の作品があったり、スタジオ形式(分業制)で作られることも多いですが、マンガ家としてはどう感じますか?
夜宵草多様化されてきていいなぁと思います。自分で描いていて言うのもなんですが、webtoonって作るのが大変だと思うんです。マンガ家の間だと、「週刊連載は正気の沙汰じゃない」なんて言われることも多いですが、それをフルカラーでやるなんて「何を考えてるんだ?」と(笑)。そんな認識の中で、原作が用意されていたり、スタジオ制作で分業されたりすることは、作品を楽しみに待っていてくださる読者さんたちのためにもとてもいい選択だなと思います。
――webtoon市場は、世界規模で広がっています。海外の読者を意識することも?
夜宵草横読みマンガ以上に、視野に入れる必要があると思います。海外は日本に比べて家族を大切にする意識がとても強いので、『ツギハギミライ』でも“家族のつながり”を今まで以上に強調しています。
――webtoon、横読みマンガともに発展してほしいというお考えですか?
夜宵草マンガ家としても選択肢が増えるので、両者ともに発展してほしいですね。ただ、webtoonはスマホと共に発展してきた文化なので、この先スマホの形が大きく変わったりした時にどうなるんだろう…と考えを巡らせたりはします。「いつか横読みマンガはなくなるのでは」なんて危惧する声も聞きますが、webtoonにもその可能性はありますし、どちらも続いていってほしいなと願っています。
――webtoon市場で10年間活躍してきた先生から、これから挑戦する人に伝えたいことは?
夜宵草今後、「白黒の横読みマンガは描いたことがなくて、初めて描く作品がwebtoonです」なんて作家さんも出てくるんだろうなと、ワクワクします。原稿の長さにほぼ制限がなく、フルカラーで表現できて、描きたいものを思いきり描けるのがwebtoonの良さかなと思いますので、ぜひ楽しんで描いてほしいです!
――今後に期待することは?
夜宵草「10年経って、やっとここまで広がってきたなぁ…」と感慨深いものがありますが、まだまださらなる盛り上がりをみせていくのではないかな、と楽しみです。今はwebtoonでの読みやすさや・とっつきやすさ優先で、ジャンルがやや偏っている印象なのですが、描き手と読み手がさらに増えていけば、webtoonでは難しいとされているジャンルの作品なども、生まれやすくなるのではないかなと。そうなっていったらいいなと、期待しています。
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