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(更新: ORICON NEWS

『相席食堂』P語る、マンネリ&コンプラ回避する千鳥の手腕「コンビの阿吽が桁違い」

旅人選びの基準は「『相席食堂』を知らない人」、予定調和を徹底的に排除した番組作り

 千鳥のツッコミはマンネリ=様式美化しつつも、視聴者を飽きさせないのは、個性豊かな旅人の存在も大きい。これまで長州力、研ナオコ、奥田民生、志茂田景樹、明日花キララ、吉瀬美智子など、ロケのイメージのない著名人らも単独でキャスティングし、『相席食堂』ならではのスイングを見せてきた。

「理想は、『相席食堂』を知らない方。制作陣の意図を汲み取ったりせず、突っ走ってくれる人の方が絶対面白くなるので。大御所の方が面白いのは、そういうところです。こっちに合わせてきませんから(笑)。こちらとしても、予定調和を徹底的に排除したいので、事前に旅人に台本も渡さないですし、『こんなお店があるので、こんなこと言ってください』といった指示もしません」

 そうなると、ロケの達人・千鳥の才覚もまた光る。VTRを見ながら、「本当はこう思ってるだろうな」といった旅人側の心情がわかるからだ。実際、当番組を見ていると、“めちゃくちゃ面白い人達と一緒にテレビを観ている”感覚になる。素人目線では気づかない笑いのポイントやロケの解説を千鳥がしてくれたり、「おもんない」「もうええって」などと“代弁”したりしてくれることで、退屈なやり取りや何てことないシーンも、爆笑VTRに様変わりしてしまうのだ。

「大悟さんの観察眼の凄さには驚かされます。ノブさんはVTRを見て誰よりも早くツッコミどころを見つけようとしている、いわば特攻隊長。一方で、大悟さんはVTRを見ると同時に、そのノブさんが『ここで来るのでは?』という面を、千鳥としてどう落とし込んでいくか俯瞰しているんです。この技術はとんでもない高レベルなもので、なかなか出来ることではない。コンビとしての阿吽が桁違いですね」

 確かに、2人が双子のように声や仕草を揃えてコメントしている場面が度々見られる。以前、大悟が「相席食堂でやっていることは、ワシとノブが高校時代に家でやってきたことだから」と漏らしていたことがあるそうだ。同級生の2人が肩ひじ張らず、VTRを見て仲良く大笑いしている様子は、予定調和やオーバーリアクションを嫌う若者にもヒットした。

“テレビ観ない”若者にも愛される理由 「逆張り」ネット配信が奏功、キー局も追従

 身近で接する高木Pも、「千鳥さんには嘘がない。だから年が離れた若者も楽しめるのではないか」と分析する。また、ローカル番組がここまで幅広い知名度と支持を獲得できたのは、TVerやVODの恩恵も大きい。テレビ業界全体が尻込みしていた中、『相席食堂』は局の反対を捻じ込み、早々にネット配信に踏み切った。

「この番組は“タレントありき”で作った分、面白いけど視聴率が出にくく、コアなファンがつくタイプだとは思っていました。だからこそ生き残っていくために、ネットを通じて全国にコアなファンを作ればいいと思いました。しかし業界内では、ネット視聴者が増える分、テレビ視聴者が減ることを危惧する風潮が強かった。その“逆張り”をしたところ、結果がついてきてくれた感じですかね」
 キー局含め、各番組がまだTVerやVOD配信に消極的だったからこそ、関西ローカルでも全国的に目立つことができた。2020年には、ローカル番組でのTVer再生数1位を記録。そして、いまやキー局が追従するまでの手法となった。“逆張り”が効かなくなった今、高木Pは次なる一手を打つ。テレビ番組として異例の“公式アプリ”をローンチしたのだ。

「『相席食堂』は熱量の高いファンに支えられている番組です。僕たちは何よりも、最初のファンを大事にしたい。故に、同アプリではファンコミュニティを大事にする予定です。新しいオープニング案を募集したり、ファンが選んだ神回をディレクターズカットで配信するとか、1時間の尺にこだわらない形も作っていきたい。ほか、この街にこんな面白い人がいましたとか、リサーチャーを視聴者に委ねるなど、これまでの作り方の常識を変えていきたいと考えています」
 また、アプリ限定で放送前に配信されるロケ映像を見ながら、テキストでツッコミを入力し、ファン同士で共有できる。つまり、スタジオMCである千鳥の疑似体験ができるのだ。それがOAの時に千鳥との答え合わせになるし、見るだけでなく“参加”ができるバラエティコンテンツを作ろうとしている。

「今のテレビ局は、ある程度のものを作ればいいというマインドになっているように思います。ただでさえ、テレビ番組は放送尺や放送時間が決まっていて圧倒的不利の中、本当に楽しめる番組を作らないと、テレビ局のバラエティは終わってしまう。ですから、OA前に楽しめるコンテンツや、放送後だから楽しめる事をサイクルとして作っていく。それこそが、この先のバラエティを生き残っていくための答えになるだろうと考えています」


(取材・文/衣輪晋一)

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