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“推し活”需要がバレンタインの追い風に…渡す相手も“リアル”である必要はない?

 1年で一番チョコレート市場が盛り上がるバレンタインデー。かつては、主に“女性が男性にチョコレートを渡して思いを伝える日”として親しまれてきたが、近年はジェンダー意識の変化やコロナ禍、“推し活”需要の影響等でイベントを取り巻く環境も大きく変化している。“義理チョコ”や “友チョコ”のようなトレンドも生まれたが、2023年はどのような“〇〇チョコ”が誕生しているのだろうか。移り変わるバレンタインのトレンドについて、日本で初めてバレンタインギフトを提唱したメリーチョコレートの広報宣伝部・山本竜さんに聞いた。

1年に1度、女性から男性へ愛の告白…時代と共に“Love”の意味も多様化

  • 1958年にバレンタインフェアに登場した初のチョコレート

    1958年にバレンタインフェアに登場した初のチョコレート

 日本で初めてバレンタインフェアが開かれたのは、1958年。「海外では2月14日に花やカード、チョコレートを贈り合う習慣がある」と聞いたことをきっかけに、メリーチョコレートは都内の百貨店でフェアを開催。当時はバレンタインデーを知る人は少なく、初年度の売り上げは50円の板チョコが3枚と、20円のメッセージカードが1枚、合計たった170円の売り上げだった。

 その後、女性の社会進出が活発になっていく時代の流れにともなって、バレンタインの習慣も徐々に受け入れられるように。1年に1度、「女性が男性に愛を伝える日」としてチョコレートを渡す文化が定着していった。バレンタイン前のチョコレート売り場は女性客で溢れ返り、好きな人に渡す「本命チョコ」と、会社などで配る「義理チョコ」も定番化。バレンタインデーは、“愛の告白の日”として、広く認められるようになったのだ。

 しかし、近年その風潮は大きく変化。売り場には自分のために買うチョコレート好きの男性も増え、仲のいい人同士で渡し合う“友チョコ”や、自分へのご褒美として購入する人も。さらに、コロナ禍でリモートワークが増えたことにより、義理チョコ文化も次第に減っている傾向にある。
「今やバレンタインは、1年に1度、世界中から様々な種類が集結する“チョコレートの祭典”という位置づけになったように感じます。当社でも男性にあげることを意識した商品ではなく、“自分だったらどういうチョコレートが欲しいか”という部分で開発に注力しています」(山本さん)

 2011年の震災以降は“絆チョコ”という言葉もトレンドに。それまでは愛の告白がメインだったが、感謝を伝える気持ちが占める割合が大きくなった。義理、友、感謝、絆…といっても、それぞれの中心にあるのは“愛”。その対象が時代の流れとともに多様化し、気持ちの表現方法も変化してきたと言えるだろう。

“推し活”需要がバレンタインにも、チョコを渡す相手はリアルには存在しない?

2023年にメリーチョコレートが展開する『推しと、私と、チョコレート。』

2023年にメリーチョコレートが展開する『推しと、私と、チョコレート。』

 2月14日のバレンタインデーに向け、各社から趣向を凝らした商品の情報が出始めるのは、11月末〜12月初旬。クリスマス頃には、一気に百貨店などでも次々ラインナップが発表され、予約がスタートする。年々早まっている印象があるが、商品の企画はさらに前から始まっているという。
「弊社では今年の2月の商品は、2021年の12月から開始していました。22年の(バレンタイン)フェアでお客様の反応を見逃さないように早くから仮説を立て、その年の状況を見ながら検証していきます。そのため昨年の12月からは、24年に向けた企画もスタートさせている状況です」(山本さん)

 1年以上前から練られた、今年のメリーチョコレートのテーマは「気持ちをつなぐ、チョコの糸」。コロナ禍でなかなか会えなかったり、コミュニケーションが不足しがちだったりした時期を経ての原点回帰。チョコレートという糸で、再び人と人の気持ちをつなぎたいという思いが込められている。気持ちをつなぐ、愛を贈る相手は、必ずしも「人」だけではないのが今年のトレンドともいえる。
  • 沼にハマった状態をチョコレートで表現した『推しぴ沼チョコレート』

    沼にハマった状態をチョコレートで表現した『推しぴ沼チョコレート』

 同社では、同じ物を愛する仲間との時間をつなぎ、大切な人、大好きな人への思いを表現して楽しむチョコレート、すなわち「推し活」をテーマにした商品を提案。『推しと、私と、チョコレート。』シリーズは、主に“推しがいる人”をターゲットに、自分で楽しむことはもちろん、推しのいる友人にも贈ることができる商品だ。

 2010年頃からアイドルを対象に、グループの中で自身がイチオシのメンバーを表現した“推しメン”という言葉が使われるようになり、時代と共に対象は変化。アイドル以外にもアニメや漫画、ゲーム、キャラクター、歴史、スポーツ…と挙げればキリがない。近年はSNSでも推しのぬいぐるみやアクリルスタンド、写真などと共にイベントを楽しむ姿が散見される。同社でもその傾向を見逃さず、企画には“推し”がいる社員の意見も積極的に取り入れた。

 『推しごとチョコレート』は、自分好み(推し好み)にデコレーションが楽しめる商品だ。
「もともとは6色の予定でしたが、企画メンバーのひとりから、“自分の推している色がない”という意見があがり、最終的には8色まで増やしました。やはり推し色は重要な要素なので、少しでも多くの方の要望に応えられるように開発を進めました」(山本さん)

 また、『推しぴ沼チョコレート』は、推しの「沼にハマった」状態をチョコレートで表現しており、人型のチョコレートを自分に見立て、ピンクチョコレートの沼に沈める、というユニークなもの。デコレーションなどをたしなみながら、推しと共に過ごす尊い時間や、推し色は色だけでなく味にもこだわったチョコレートが楽しめるよう製作した。

日本に浸透して65年、バレンタインが形骸化しなかったワケとは

  • 猫好き向けに作られた『ねこみゃみれ』シリーズ

    猫好き向けに作られた『ねこみゃみれ』シリーズ

 推しを食べてしまう、という商品も登場。猫好き向けの『ねこみゃみれ』シリーズは、猫を飼っている社員にアンケートを行ない、商品を開発した。『猫缶(チョコレート)』は愛する猫と同じようなものを食べている感覚になれ、肉球型チョコやしっぽなど、猫好き目線で作られ気持ちをくすぐるモチーフばかりだ。デザインに関しても、社員の愛猫をモデルに写真をベースにしたイラスト調デザインを採用する試みも。描かれたイラストは約600枚から選出し、よりリアルな猫のかわいらしさを表現。

 こういった社員からアイデアを募り開発を進めていくことは、会社としても新しい発想となり、士気もあがったと山本さんは言う。愛の告白や義理チョコが形骸化されたように感じていたコミュニケーション型のバレンタインだが、今年は「推し活」を起爆剤を起爆剤として多方面で盛り上がりを作っている。実際に、社会全体で見ても、推し活が及ぼす経済効果は増加し続けており、推しを愛でる熱量が世の中を明るくしているといっても過言ではない。

 時代が変わり楽しみ方は変化したが、盛り上がりは年々増す傾向に。最初は売り上げ170円だったバレンタインがここまで浸透した理由について、山本さんはこう分析する。
「バレンタインが国民的になったのは、変化に対応できる柔軟性があったことが大きいと思います。我々もバレンタイン文化のリーディングカンパニーとして新しい楽しみ方を提案しますし、消費者のみなさんも新しい楽しみ方をしてくださる。時代に合わせて変化できたことが、飽きずに楽しんでいただけている理由の一つではないでしょうか」(山本さん)

 今後も、SNSやデジタルツールを使って誰かと楽しみを分かち合える商品開発を目指しているというメリーチョコレート。今年新たに発売された“推し活”をテーマにした商品のように、今後も市場には様々なタイプが生み出されていくだろう。果たして今年人気を集めるのはどんなチョコレートなのか、新たな一石を投じるブームが現れるのだろうか。国民的イベントであるバレンタインの変化から今後も目が離せない。

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