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“ラノベ異世界モノ”は児童書市場も席巻? 出版社が続々と児童書ジャンル参入のワケ

  • アルファポリスから出版された児童書レーベル「アルファポリスきずな文庫」(C)oricon ME inc.

    アルファポリスから出版された児童書レーベル「アルファポリスきずな文庫」(C)oricon ME inc.

 小説、漫画、実用書など10を超えるレーベル数を持ち、多彩なコンテンツを世に送り出している出版社・アルファポリス。今年8月には、新たに小学生〜中学生をターゲットにした「アルファポリスきずな文庫」をスタートさせ、“異世界ファンタジー”を中心としたさまざまな作品をラインナップしている。大人世代へ向けた作品をWeb発で多数生み出して同社が、新たな読者層に目を付けた理由とは。

成長する「児童書」市場へ参入 近年はより女子をターゲットに展開

 近年、紙の書籍市場が厳しい中、児童書市場(雑誌・コミック除く)は4年連続でプラス成長と堅調に市場規模を拡大させている(公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所調べ)。そんな背景を受け、同社でもさらなる読者層の獲得を目指し、児童書市場への本格参入を決意。今年8月に児童書の新レーベル「アルファポリスきずな文庫」を立ち上げた。

 児童書といえば、本来小学生までが読むものであったが、昨今は作品によっては中学1、2年生の女の子が読んでいるケースも多くみられたため読者層を広げ、女子を基本ターゲットとした作品作りを意識しているという。

 同社は2000年の会社設立から、総合出版社としてWeb発のあらゆるジャンルを出版。ライトノベル、コミックス、実用書、絵本など、現在では10以上のレーベルを展開している。「アルファポリスきずな文庫」のラインナップの中心となっているのが“異世界ファンタジー”だ。同社の数あるレーベルのなかでも、「ファンタジー」は特にシェアが厚い。なかには女性向けに特化したレーベルもあり、対象年齢の差はあるものの、今回のターゲット層にも合致している。

 「〜きずな文庫」スタート当初は、20〜30代の女性向けで展開している新感覚ファンタジーレーベル「レジーナブックス」の作品に、ルビや挿絵を入れて体裁を変え転用するケースが多かった。
「『レジーナ〜』の作品には、可愛い動物が出てきたり、主人公がそもそも幼かったり…といったものも多く、そのまま女子児童が楽しめる内容もあるんです。もちろん大人向けの作品もあるので、そういったものは除外しています」(編集四部部長・倉持真理さん)

小・中学生にも人気の「ラノベ」 “異世界”のドキドキ&ワクワクは不変ながらもより多様化

  • 『ほっといて下さい1』(作:三園七詩、イラスト:あめや/税込748円)

    『ほっといて下さい1』(作:三園七詩、イラスト:あめや/税込748円)

 魔法や不思議な生物、体験を題材にしたファンタジー作品は、昔から児童書としても親しまれ名作と呼ばれるものもある。しかし今主要ジャンルとなりつつあるのは、ライトノベルでの“(異世界)ファンタジー”作品だ。30〜40代のコア層を持つが、小学生〜中学生にもシェアが広がってきているのを感じているという。

「『レジーナ〜』読者である大人女性の場合、“現実世界ではしんどいことが多いので、異世界でちょっと癒されたい”というニーズが多いと思います。でも子どもの場合、“癒されたい”というよりは、もっと純粋に物語を楽しみたい、ワクワク、ドキドキしたいという気持ちが大きいのかなという印象がありますね」(同・倉持部長)

 「レジーナブックス」から作品を選定する場合は、転生先でカフェを開きスローライフを送ったり、現代の知識を活かして周囲の人たちを救ったりと、異世界を舞台に子どもでも理解できるストーリーをピックアップするよう心掛けているという。創刊から約4ヵ月。児童書で異世界ファンタジーを出している出版社はまだ少ないこともあり、読者からは好評を得ている。

 倉持さんは「ファンタジー以外にも、サバイバルやホラー、ミステリー系もティーンには人気があります。ゲーム性があるもの、どれだけキャラクターに感情移入できるか、というのも人気が出るポイントになっているので、児童書であっても細部まで作りこんだものを出していきたいです。男女問わず10代の層をもっと取り込むため、より注力したいです」と、ジャンル拡大へも意欲を見せる。

“作家側”の児童小説への参入欲求も年々増加、読み手と同年代の10代作家の台頭も顕著

  • 第11回アルファポリス絵本・児童書大賞 読者賞受賞作『魔法使いアルル1』(作:羽織かのん、イラスト:kaworu/税込748円)

    第11回アルファポリス絵本・児童書大賞 読者賞受賞作『魔法使いアルル1』(作:羽織かのん、イラスト:kaworu/税込748円)

 同社は書籍出版のほかに、誰でも自由に小説や漫画等の作品を投稿・登録できるWebルサイトも運営している。投稿される小説のジャンルは、恋愛、ミステリー、ホラー、ファンタジーなど様々。

 2008年からは自社サイト内で「Webコンテンツ大賞」をスタートしており、「恋愛小説大賞」「ホラー・ミステリー大賞」などジャンルごとに毎月1回開催。期間中、サイトでエントリー作品が発表され、読者投票、アクセス数などを加味して「大賞」「読者賞」などを選出し、受賞作は出版化のチャンスが与えられる。スタート時から、読み手、書き手ともにかなり反響が大きいコンテンツとなっている。

 今回の「〜きずな文庫」でも『第11回アルファポリス絵本・児童書大賞』読者賞受賞作がラインナップされている。レーベルの立ち上げ時から「子どもたちに向けて異世界ファンタジーを書きたい」という作家の声も寄せられており、書き手の需要も強く感じているという。

 2000年代初頭から、ネット発のヒット作を輩出するという点で、先駆け的な存在だった同社。投稿される小説や漫画を長年見てきた中で、今後強化していきたいジャンルや読者層も出てきた。
「現在力を入れている児童書に続くものとして、例えば一気にターゲットを上に向けて『時代小説』や『歴史小説』の分野なども広げていきたいです。おそらくこの先50〜60代で、ある程度時間ができて『ネット上で小説を書いてみたい、発表してみたい』という人が増えていくと予想しています。そういった世代の書き手さんと、それを楽しむ読み手さんは比較的有望な市場ではないかと思っています」(編集本部長・太田鉄平さん)

 全くの趣味で小説や漫画を書いていた人が、突然出版社から声がかかりデビューというのも珍しくなくなってきた時代。「Webコンテンツ大賞」の応募者の推移をみても、自分の作品で一発デビューを狙う人も増えている実感があるという。同社では下は中学生から上は60代と幅広い年代の作家をかかえている。今後、読者と同世代の小・中学生作家が書いた作品が、「〜きずな文庫」から書籍化される日もそう遠くはない話かもしれない。

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