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エンタメ化で広がる「BLのたしなみ方」、“ニッチ”から浸透へ…アプリ時代のBLマンガに変化

 男性同士の恋愛をテーマに描かれるBL(ボーイズラブ)。近年は、『おっさんずラブ』といったドラマ等の影響で、一般的にも浸透しているように見える。とはいえ、コアファンもいれば、好まない人もいるのは当然。マンガアプリが全盛で、読者のすそ野が広がっている現在、BLというジャンルはどう変化しているのか。LINEマンガでBL作品『ちりぢりゆくの』を連載しているマンガ家・まゆハルさんと、担当編集者に話を聞いた。

連載会議に落ちたBL作品、否定的な意見も「逆に多くの人に届いている証拠」

 『ちりぢりゆくの』は、まゆハルさんが手がけるLINEマンガオリジナル作品。同作は、主人公である超絶美形男子高校生・久野シオが、欲情すると身体がゲル状になって「散る」特異体質の宇宙人ハーフというユニークな設定だ。

――まず、着想のきっかけを教えてください。

まゆハル数年前に少し違う構想を考えたのですが、力不足で設定のみで終わってしまい。そこから描きたいジャンルを変更して、「好きな相手にドキドキすると散る」BL設定になりました。ですが、LINEマンガの連載会議に出したものの、「わかりにくい」となり落ちてしまって…。そこからさらにブラッシュアップし、現在の形態となりました。

――編集者としては、連載会議で落ちた理由はなんだと思いますか?

担当編集LINEマンガの中にもBL作品はあったのですが、数字的にも人気の出やすいジャンルではなくて。でも、まゆハルさんの熱意というか、やりたいという思いの強さを感じたので、連載に踏み切ることにしたんです。ネームや企画を見て、面白くなりそうという予感がしましたし、この作品にしか出せない世界観があると。

――BLは一時ブームが来ましたし、コアファンも多いので人気が出やすいのかと思いましたが。

担当編集LINEマンガの読者さんは、どちらかといえば男女がカップルの恋愛作品を好む傾向があるのか、本当にBLが好きな方は、別の専門的な媒体で読むのでしょうか…。とはいえ、世界的に人気のジャンルを取り扱わないのは変だと思いましたし、この作品が大きなムーブメントを起こす予感がありました。

――そんな葛藤を乗り越え連載がスタートしたわけですが、初日(2022年11月23日)にはランキングの新着カテゴリで1位を獲得。

まゆハル担当さんに、「このジャンルとしては頑張っている」と言ってもらったことを糧に、現在も原稿を描いています。

担当編集BLが好きな方にも、初めてBLを読む方にも好評でしたが、「素晴らしい!」だけではなく、否定的な意味を含んだ感想もあって。でも、いい感想だけ=内輪ウケだと思っているので、多様な感想をいただくことは逆に多くの人に届いている証拠だと思っています。話題性のある作品を世に送り出せたなと、手ごたえは感じていますね。

“山なしオチなし…”だった時代からの変化、エロより「ファンタジーに含有する生々しさ」

――一般作品を好む読者が多いマンガアプリであり、かつコアなファンがいるジャンル。だからこそ、作品でこだわった部分などありますか?

まゆハル一番は「欲情すると散る」という設定です。「キャラクターをいかに愛らしいと思ってもらえるか?」も考えました。文字数(特にモノローグ)を減らして表情で魅せたり、会話やコマすべてのテンポを意識したり…。アプリの都合上、エロ要素を描くのは難しく、縦読みで読みやすいマンガの描き方などを考えるとそこなのかな、と意識しながら描いています。

――編集の視点ではいかがでしょう?

担当編集圧倒的な作品のクオリティです。LINEマンガの読者さんは毎日たくさんのマンガをご覧になっているので目が肥えた方が多いです。生半可な編集じゃいけない。まずは絵がキレイで話が面白く、間口が広くなるように注意しましたね。特に重要なのが、「心の描写や動線は端折らない」ということ。どの読者さんが読んでも、ちゃんと恋愛モノとして読めるように。

――BLであるがゆえ、エロ要素に注目されることが多いと思いますが、BL作品だから伝えられることは?

まゆハル志向が同じだからこそ、感情というより「心の恋愛」だと思っています。ファンタジーに含有する生々しさと言いますか、BLの中の男性は、ものすごいファンタジーなのに、描くことは男と男の丸裸の性なので。

――たしかに、本作の裏テーマの一つに「外見より内面を見て」というものがありました。

担当編集BLというジャンル自体が、全身全霊で「外見より内面を見て」を訴えているように感じます。

――そうしたメッセージ性も大事なんですね。

担当編集いま、世界的にも読み応えのあるBL作品の波が来ていて。かつてはこうした男性同士の恋愛モノといえば、“やおい”(山なし、オチなし、意味なし)と言われていましたが、現在はそんなことはないのではないでしょうか。今後は、より上質で、しっかりとストーリーを落とし込んでいるかどうかが重要になっていく気がします。

エンタメ化により広まるBLの“たしなみ方”、共存の時代だからこそ慎重に

――本作のようにマンガアプリでBLを読む人も多いですが、状況の変化を感じますか?

まゆハル専門誌ではない多くのレーベルがBL作品を扱っていることに、このジャンルの変化を感じています。受け皿が多くなったこと、作家の数が増えたことで、BLジャンルの中でさらにカテゴライズできるほど、新しく面白いBLマンガがたくさん世に出てきていることが嬉しいです。

――『おっさんずラブ』のようなドラマ以外にも、マンガ原作からメディア化される作品も増えています。BLの一般化というか、ディープなジャンルだったものがライトになってハードルも低くなってきたのでしょうか。

まゆハル「BL」という言葉をフィクションの一つとして、ライトに認識する方が増えているように感じます。

担当編集以前はBLというと、ひっそりと楽しむ対象だったと思うのですが、だんだんとジャンルも世の中も成熟して、そういう時代ではなくなった。今は、好きなものを好きと言いやすい時代になった気がしています。世の中が、ドラマやアニメなどで“BLのたしなみ方”を作ってくれて、それを周りがわかってくれた、という感じでしょうか。BLが特別ではないジャンルになり、垣根を越えてより自由になっていると感じています。

まゆハルただ、“エンタメとしての人気”が大きくなったからこそ、制作側は扱い方を慎重に考慮していかなければいけないなと思います。どうしても「受けつけられない」方もいらっしゃいますが、“共存”は歩み寄らない限り難しいので。

――今後LINEマンガにオリジナルのBL作品が増えていく可能性は?

担当編集『ちりぢりゆくの』をきっかけに、「LINEマンガにも面白いBL作品があるよ!」というのを発信していきたいですね。いい作品があれば、めげずに編集会議に出していきたいです! そのためには『ちりぢりゆくの』が天井を突破してくれないと…。ブレイクの準備はいつでもできています!!(笑)
ちりぢりゆくの(外部サイト)』/作:まゆハル
◇「LINEマンガ」にて毎週水曜更新中

“ガチムチ委員長×ツンデレ宇宙人ハーフ”のピュアッピュアでハイテンションなボーイズ・ラブ。超絶美形男子高校生・久野シオは 欲情すると身体がゲル状になって「散る」特異体質の持ちトラウマで男子には心を開かない久野だったが、いつしかクラス委員・相馬湊に心をほぐされ、恋に落ちる…が、久野がドキドキするたび散ってしまい恋人らしいことが何もできない――。好きになる程、遠くなる、焦ったい恋の行方やいかに。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係はありません。

■マンガの続きはコチラから『ちりぢりゆくの』(外部サイト)

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