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“大河原ザク”に反響、モデラーが“旧キット”を作り続ける理由「貧しかったあの頃に見た憧れを形に」

 1980年発売開始のガンプラは、40年以上の月日を経て劇的な進化を遂げてきた。その一方で、最初期に発売され、塗装や作りもそこまで細かくなくシンプルな作りの“旧キット”も未だに根強い人気を誇っている。モデラーのジオン広告さん(@ms06rzktr)も、そんな“旧キット”でさまざまな作品を残してきたひとり。旧キット独特の風合いを生かした近作の“大河原ザク”をSNSで発表すると「懐かしい」「あー、ガンダムフィルムブックの4巻に載ってる奴だ」などの賞賛の声が上がった。同氏が旧キット魅せられ、作り続ける理由には、幼いころの憧憬があった。

現在のような情報過多ではない時代に、本で見た「ザク」の強烈なインパクト

――先日、SNSで発表された“大河原ザク”にはたくさんの賞賛が集まりました。そもそも、メカニックデザイナーとして、ガンダムに登場するさまざまなモビルスーツ(MS)を生み出してきた大河原邦男氏の描いたザクを作ろうと思ったのはなぜですか?
ジオン広告私は、ロボットアニメ全盛期をリアルタイムで経験してきました。あの頃、同世代の誰もが夢中になったロボは、ほぼ大河原先生のデザイン。大河原先生が自ら制作された正真正銘の量産型ザクを、いつか自分でも作りたかったというのが理由です。
 特に同年代の方々は、幼い頃から毎日当たり前のように見てきたロボットですから、もはや刷り込み。私に限らず、こう思っている方も多いと思います。

――なるほど。“大河原デザイン”のなかでも「ザク」の人気は高いですよね。
ジオン広告そうですね。特に、あの頃は現在のようなネット環境はありませんし、情報は全て「テレビCM」や「本」でした。幼い頃の原体験として、強烈なインパクトがあったのが、小学校低学年で読んでいた『テレビマガジン』や『コミックボンボン』などで見た「ザク」でした。

――幼い頃の思い出や憧れが、今、旧キットでガンプラを作る原動力になっているのですね。
ジオン広告そうですね。幼い頃、私は田舎に住んでおり、母子家庭で貧しかったもので“本物のガンプラ”はなかなか手に入らず、とても貴重なモノでした。買って貰えたキットは全て宝物。なので、あの頃憧れ、欲しかったキットを手に入れて、「あの時ああしたかった、こうしたかった」という無念を晴らすべく、昔出来なかった塗装や改造を行っている感じです(笑)。

40年以上続くガンダム、ガンプラの人気は、偉大な先人たちの並々ならぬ努力の賜物

――“大河原ザク”を制作する際は、どのような物語をイメージされたのですか?
ジオン広告大河原先生の考える「リアルタイプ」というモノを、自分自身で作ることによって理解したい。そう思って作品作りを進めていました。

――実際に制作してみて、大河原先生の考える「リアルタイプ」を、ご自身はどのように解釈されましたか?
ジオン広告私は、当時大河原先生ご自身が「リアルタイプ」について語っておられた記事を今でも読み返すのですが、「実在の戦車や戦闘機のようなマーキング(注意書き)やウェザリング(汚し)を施した、こんなモビルスーツがアニメのように動いたら…」と書かれております。つまり「もしMSが実在したら」というイマジネーションの世界を想像しながら制作を進めました。

――実際、制作してみて、苦労した部分、こだわった部分はどこですか?
ジオン広告塗装やマーキング、そしてウェザリングですね。この銀のドライブラシやハゲチョロこそ私が最もガンプラだと感じる部分です。

――味があっていいですね。本作発表後には、多くの賞賛の声も集まりましたが、反響をどのように受け止めていらっしゃいますか?
ジオン広告やはり「何年経っても色褪せない魅力があるんだな」と、「私に限らず、皆さんの心の中にいつまでも残る『名作』なのだな」と、改めて感動しました。

――本作を含めジオン広告さんの作品からは、MSを作り上げたデザイナーたちへの尊敬の念を感じます。デザイナーたちへはどのような想いを持ってガンプラ制作をされていますか?
ジオン広告この40年以上もの間に起きた、ガンダムやガンプラブームは全て偉大な先人たちの並々ならぬ努力の賜物だと思います。私はほぼファーストガンダムしか知りませんが、やはり当時の熱量があったからこその現在。「あの頃の想い」は大切にしたいと思っております。

――ガンプラを制作するうえで一番大切にしていること、信条をお教えください。
ジオン広告「自分が好きだから作る」ことですね。好きでいるためには「苦痛や困難」は避けたいですよね。数をこなせばおのずとレベルアップしたくなり、壁にぶち当たる訳ですが、その高い壁にのぼろうとは思いません。やれそうな所から徐々にゆっくりやっていけば良い。無理しても嫌いになるだけなので。基本的に趣味である以上自分が気に入っていればいいわけで、出来は適当に妥協しています。他人の評価やコンテストなどの結果ばかりを気にしていては、続きませんよ(笑)。

――素敵な信条ですね。では最後に、ジオン広告さんにとって「ガンプラ」とは?
ジオン広告ライフワークですね。おそらくいくつになっても旧キットを作り続けると思います。

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