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日本で唯一の「猫城主」豪雨災害で落ち込んだ客足をV字回復、コロナ後にも期待「収まったらまた会いに行く」
西日本豪雨の後、山城に住み着いた猫…SNSで話題になり“役職”をもらう
――“猫城主”というのはおそらく日本唯一だと思うのですが、城主・さんじゅーろーが誕生した経緯を教えてください。
「さんじゅーろーはもともと野良猫で、あるお宅に保護されて飼い猫になっていたのですが、平成30年7月の西日本豪雨の直後にそのお宅を脱走したんです。飼い主さんは災害の爪痕が残るなかを探し回っていたそうですが、なぜかさんじゅーろーは山の中を歩き、6キロも離れた備中松山城に迷い込んだようなんです」
――どうやって生き延びていたのでしょうか?
「飲まず食わずでは生きられないので、何かしらは食べていたとは思うのですが、お城に辿り着いてからは、職員たちがエサを持ってくるようになりしました。それで居心地が良くなったのか、そのままお城に住みつくようになって。備中松山城も豪雨の影響で観光客が激減していたのですが、『お城にかわいい猫がいた』とSNSで広まり、私たちも知らない間にちょっとずつ話題を集めていたようですね」
――そこからなぜ、“猫城主”ということになったのでしょう?
「文化財であるお城に動物を住まわせてもいいのかという問題が出てきて、猫をお城で飼うことに理由が必要となりました。さんじゅーろーの存在により、豪雨災害で激減した観光客の客足がV字回復して、すごく貢献してくれていたので、何か役職を与えるのがいいのではないかと考え、正式に“猫城主”になってもらうことになりました」
城主就任前には脱走騒ぎ? 街をあげての大捜索
「地元のケーブルテレビで取り上げられたことで、飼い主さんもさんじゅーろーがお城にいることを知ったそうです。連れて帰るか、どうするか…ということになったのですが、そのときすでに非公式ながらも備中松山城の人気キャラクターになりつつあった上に、猫ちゃん自身も気に入って住みついていたので、飼い主さんは『高梁市の観光の一助になって、かわいがって大切にしてくれるのなら』と、大変ありがたいことに譲渡してくださいました」
――ただ、城主就任前にも脱走騒ぎがあったんですよね?
「そうなんです。全国誌の雑誌から取材依頼があったとき、さんじゅーろーはまだ半野良の状態だったため、取材時にいなくなると困るので職員が自宅に連れて帰っていたんです。そうしたら、その家から脱走してしまい、19日間の逃亡生活を送っていました」
――よく見つかりましたね。
「いつもはお城から外に出かけていたので、大体どこにいるのかはわかっていたんです。でも、その日は職員の自宅からいなくなったので、さっぱり行先がわからなくなってしまい…。その頃、さんじゅーろーはすでに高梁市内では知名度のある猫だったので、街をあげての大捜索が繰り広げられました(笑)」
――それで、どこで見つかったんですか?
「職員の家の裏山にいるところを発見され、衰弱した様子もなく怪我もしていなかったのですが、念のため獣医さんに診てもらいました。その後、あらためて獣医さんを招き、猫の飼い方や生態について勉強会を開きました。さんじゅーろーが過ごしやすいように生活環境をきちんと整えた上で『再入城の儀』を執り行い、“猫城主”に就任したんです」