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【初対談】フジファブリックと幾田りらが交わす「I Love You」 2020年一番聴いた1曲は?

サブスク時代の音楽と消費 時代の“芯”になる音楽を

――冒頭の質問では、みなさん新しい曲から数年前のものまでさまざまな曲を挙げてくださいました。それは、CDやレコードといったパッケージごとに購入するのではなく、定額音楽配信サービス(以下、サブスク)などで年代関係なく手軽に音楽が聴けるようになった環境があるからだと感じます。
一同 そうですね。

――そうして手軽に音楽にアクセスできる時代だからこそ、消費のスピードも速くなっているのではないかと思っていて、みなさんが考える「音楽と消費」について教えていただきたいなと。
山内 音楽の消費の速さは昔からそんなに変わっていない気がします。自分たちの小中学生時代もたくさん新曲が出ていて、レンタルショップで大量に短冊型のシングル(8センチCD)が並んであった。悲しいですけど、あまり借りられていない曲はすぐにワゴンに並べられて売られていました。そういう意味では今でも変わっていない気がします。

ただ、聴きやすさだけは増しているなと。自分達の曲ですら「あの曲どうだったっけ?」となったとき、サブスクで聴きますし(笑)。

幾田 分かります!

山内 ね(笑)。そういう利便性はあるわけで。だからこそ残る曲が少ないかというとそんなことはない。例えば、ユーミンさんの『卒業写真』はCDの形で売られていなくてもサブスクで残っていると思います。ビートルズの『Let It Be』も。

結局、時代にそぐう強い曲が残っているんです。それに加えて、時代に寄り添いながら、どの時代に聴いてもなぜか当時の風景に一瞬でワープできるような音楽がずっと普遍的で歌われ続けていくのかなと。
――たしかにそうかもしれません。
加藤 時代もそうですけど、好きな曲ってその人にとってずっと残り続けていくものじゃないですか。逆に自分に合わない曲は消えていく。それは昔も今も変わらないなと思いますよね。

金澤 僕が思うのはサブスクが利用されるようになってから、逆に(音楽が)消費されない、捨てられないような気がしています。

加藤 たしかにね。

山内 物としてはないけど、残り続けるもんね。

金澤 必ず残っているから、昔の曲から今の曲まですべてが横並びで聴けるのはすごく良い。年代別のプレイリストとか。

山内 あるよね。僕、94〜96年でベロベロになるまで飲めるわ……。

一同 あはははは。
――好きな年代の曲はいくらでも語り合えますよね(笑)。
金澤 年代別のプレイリストを聴くと、中心に一本の芯があるようにこの年代はこういうサウンドが流行っていたんだと感じられるんですよ。“時代の音”が必ずある。ビートルズなら、「この年代はやっぱりすごかった!」とかね。

山内 60年代はすごいとかね。63年はビートルズが異色の存在で唯一無二だったけど、65〜67年は同じようなバンドがたくさん出てくる。そういうのをパッと思い出して聴けるのがサブスクの面白いところかもしれません。

金澤 だから、我々曲をつくる側としてはそういう強い芯をつくれたらいいなと思います。
――時代を象徴するような曲づくりが重要ということですね。幾田さんはサブスクが主流となっている世代かと思うのですが、どう感じられていますか?
幾田 サブスクが普及し始めてから、自分の世代じゃない音楽にも簡単に手を伸ばせるのは自分の中ですごくありがたいことですね。そういう意味では私にとってプラスでしかないです。

音楽と人の関係はずっと昔から変わらないですし、今YOASOBIや私自身が発表した曲がこれから先も残っていくと考えると未来にワクワクします。

――CDとしての物がなくなってもデータが永遠に残り続けて数百年後の人が聴くと思うと、SFのようで夢が膨らみますね。
山内 昔は廃盤になってしまったCDやレコードにプレミアがついてめちゃくちゃ高い値段で売られていることもありましたしね。それが今は簡単に聴けてしまうのはラッキーですよ。何万も払わないと聴けなかったのに、今はデータとして上げていただいて……ありがとうございますという感じです(笑)。

幾田 でもCDは変わらずあり続けてほしいですね! 私自身、小学生くらいのときは自分でCDを買ったり借りたりして音楽プレーヤーにデータを入れる作業をしているタイプでした。CDが欲しい感覚はみなさんあると思いますし、残り続けるとも思います。

「ギャップが素敵」 「声を出した瞬間にパーンと抜ける力強さ」

――最後に、改めてフジファブリックと幾田さんがコラボレーションをして気づいたお互いの魅力についてお聞かせください。
山内 魅力だらけですよ。

加藤 歌の魅力もですけど、お人柄もとても素晴らしい。レコーディングでお会いしたとき、なんていい子なんだ……と思いました。

山内 ギャップがすごかったんですよ。

幾田 え! そうですか?
――どういったところにギャップを感じたんですか?
山内 物腰柔らかくレコーディングに入ってきて、声を出した瞬間にパーンって抜ける力強さ。ギャップに驚かされます。すごく魅力だと思いますね。「私、歌ってまっせ!」みたいな感じでもないのに。こんなことを僕が言うのも変ですけど、その柔らかさは残しておいてほしい(笑)。

一同 あはははは!

金澤 ファンとしてね(笑)。

山内 そう、ファンとして(笑)。突然ゴッド姉ちゃんみたいになってもいいんですけどね(笑)。

――今後の幾田さんがどうなっていくのか楽しみですよね! そんな幾田さんはフジファブリックの魅力についていかがでしょう。
幾田 私もたくさんあるんですけど、最初お会いするまではやっぱりバンドマンなので……何て言えばいいんですかね……。

金澤 バンドマンのイメージってあるよね(笑)。

山内 ド不良ね!(笑)

幾田 そこまでは思っていないですけど!(笑) 実際にお会いするまで分からないことがたくさんあって、でもいざお会いしてみるとすごく柔らかい雰囲気をお持ちで。レコーディング前に「お茶会します?」とお話する場を設けていただいて、気さくにいろいろお話してくださったんです。歌いやすいムードをつくっていただきました。

――へぇ! どんなお話をされたんですか?
山内 「コーヒー飲む?」とか、「そのクリアファイル使ってるんだ!」とか(笑)。たわいもない話しをしましたね。

幾田 そうなんです。お人柄の柔らかさとバキバキにカッコいい音楽をやられているギャップがとても素敵。

レコーディングと今日の生配信番組のリハーサルを終え、フジファブリックさんの音楽という大きな渦の中を自由に泳がせていただいている感覚があってとても幸せでした。……魅力ではなく感想になってしまいましたね(笑)。フジファブリックさんの音楽そのものが魅力だと思います!

フジファブリック一同 ありがとうございます!
プロフィール
フジファブリック
山内総一郎(やまうち・そういちろう Gt. / Vo.)、金澤ダイスケ(かなざわ・だいすけ Key.)、加藤 慎一(かとう・しんいち Ba.)によるロックバンド。2000年、志村正彦を中心に結成し、2004年4月シングル『桜の季節』でメジャーデビュー。2009年 志村が急逝し、2011年夏より山内、金澤、加藤の現在の体制で再始動。2010年にリリースしたアルバム『MUSIC』収録曲『夜明けのBEAT』が『モテキ』のTVドラマ版(2010年)映画版(2011年)のオープニングテーマとして起用されるほか、次々と数多くのアニメ主題歌も担当。2019年にはデビュー15周年を迎え、10枚目となるフルアルバム『F』、初のPLAYLIST ALBUM『FAB LIST』をリリース。さらに”フジファブリック 15th anniversary SPECIAL LIVE at 大阪城ホール2019「IN MY TOWN」”を大成功に収めた。2021年2月にはTVアニメ『Dr.STONE』 第2期オープニングテーマ『楽園』、3月には11枚目の新作アルバム『I Love You』をリリース。JUJU、秦基博、幾田りら3組のアーティストとのコラボレーションを果たす。
公式サイト(外部サイト)
幾田りら(いくた・りら)
2000年9月25日生まれ。東京都出身のシンガーソングライター。2019年11月16日に発売した2ndミニアルバム『Jukebox』の収録曲『ロマンスの約束』がYouTube100万回再生を突破。2020年にはテレビCMやアニメーション映画での歌唱も話題になり、12月には新曲『ヒカリ』を配信リリース。2021年3月配信限定シングル『Answer』をリリース。東京海上日動あんしん生命あんしん就業不能保障保険のCMソングに抜擢。YOASOBIのボーカル・ikuraとしても活動しつつ、アコースティックセッションユニット「ぷらそにか」にも所属。
作品情報
フジファブリック 11thフルアルバム『I Love You』
2021年3月10日発売
15周年を経たフジファブリックが前作『F』から約2年2か月ぶりのフルアルバムをリリース。前作から今作までの期間、メンバーそれぞれがアーティストとして、人間として、様々な節目を迎えた。16年目にして“今のフジファブリック”だからこそ伝えられる想い、“愛”をテーマにニューアルバムをリリース。
この記事について
この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。
俳優・歌手・芸人・タレントらの趣味嗜好を深堀りしつつ、ファンの「好き」を応援。今後、さらに気になる人の「これまで」と「これから」をお届けしていきます。
⇒この記事をオリジナルページで読む(3月25日掲載)

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