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“廃墟化”した東京を描いた絵が話題 「絶望より希望を感じてほしい」作者の想い
「美しくありたいし、絶望より希望を感じてほしい」廃墟を描きながら感じていること
【東京幻想】高校生の頃、美術の先生のアトリエに寝泊まりしながら大きな壁画の制作を手伝い、絵を描いてお金をもらえる生活に強く憧れたのが最初ですね。その後、大学の経済学部を卒業し、就職をせずに美術系の予備校に通いました。そして、アニメ背景制作会社に就職して、現在は主にゲームの背景制作を中心に活動中です。
――廃墟化した東京の街をたくさん描かれていますが、どのように制作されているのですか?
【東京幻想】どの場所を描くかを決めたら、まず撮ってきた写真を参考に、一日で「現実」の風景を描き起こします。そこから建物を壊したり、緑を生やしたり、「季節」や「時間帯」といった時間軸を変えたりしていきます。
――作品をSNSで発信していく上で、心がけていることはありますか?
【東京幻想】まずは「インパクト」です。どんどんと更新されていくタイムラインの中で、一瞬で人の目に留まる必要があるので…。あと、作風的に「退廃感」や「孤独感」のようなものはありますが、なるべく不快にならないように気をつけているつもりです。できれば美しくありたいし、絶望よりは希望を感じてほしいです。
――SNSの投稿にはコメントもたくさん寄せられていますが、特に印象的だったものは?
【東京幻想】作品中に登場するお店の公式twitterなどがノリノリで絡んできてくれると面白いですね。「うちのお店がまだ残ってる!」とか「うちも壊して」とか。おそらくtwitter担当者(中の人)は若い方なんでしょうけど、「上司に怒られないの?」と思い、逆に心配になります。
「渋谷109」が巨木の根っこで覆われていたら…都心に住んでないからこその“東京幻想”
【東京幻想】「渋谷109」です。これがなかったら東京幻想はなかった。20代のときにアンコールワット遺跡群で見た「タブローム寺院」のように、渋谷109がこんな風に巨木の根っこで覆われていたらかっこいいと思っていました。一番のお気に入り作品は「渋谷のモヤイ像」です。タイのアユタヤにある石造からイメージを拝借しました。最近加筆をして、さらにキュートになったと思います。
――東京幻想さんが好きな街はどこなのですか?
【東京幻想】「横浜みなとみらい付近」ですね。夜の雰囲気が最高です。小学生から大人になるまでずっと横浜に住んでいて、「東京」はちょっと出かける場所というイメージでした。それが東京を主題にした作品を描く上では、ちょうどいい距離感だったんです。
――最近、個展を開催されたそうですね?
【東京幻想】コロナ騒動の中で、多くの方に足を運んで頂いたようで、とても嬉しいです。書店スタッフの方々にも評判が良くて、第2回を検討して頂いている書店様もあり、恐縮している次第です。この息苦しい時代に、皆さんどこか解放されたい願望があって、そういった目線で東京幻想の作品を楽しんで頂けているのかもしれません。
――最後に、東京幻想さんにとって絵とは?
【東京幻想】趣味みたいなものです。飽きたら飽きたで、また筆を休めて、他のことをして遊んでいるかも。絵は自分にとって、心のバランスを保つための一要素に過ぎないです。
イラストレーター、東京幻想さん。
2020年9月はジュンク堂池袋本店にて「東京幻想図鑑」出版記念展を開催中。
「東京幻想作品集」(芸術新聞社)出版記念展に関する情報:@junkudo_ike_art(外部サイト)
東京幻想さんTwitter:@TOKYO_GENSO(外部サイト)