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コロナ禍で需要増、72歳“レディコミ”の女帝が語る使命感「壮絶DVに旦那の不倫も経験」

「今でも夢に見ることがある」、元旦那の壮絶なDV体験

──先生はかつて元夫の方から激しいDVを受けていたそうですね。

【井出さん】どうしようもない男でね。心の病気で、季節の変わり目は特にひどかった。私は言葉では何を言われても平気な顔をしてるので、手が出るんです。理由は何でもいいんですよ。たとえば髪を切ったら『俺に黙ってなんで切るんだ』と食卓を引っくり返すんです。そして廊下の隅に追いやられて殴られ続ける。床に顔を押し付けられてね、脂汗がじっとり滲んだ顔が埃まみれになって…。今でも夢に見ることがあります。

──それでも10年ほどは結婚生活を続けられたんですね。

【井出さん】子どもを守るためです。離婚したいと言うと、子どもを殺すって言うんですよ。向こうは働かないですから、私の収入が目当てだったんです。田舎に似合わないランボルギーニなんか何台も買ってね。女を囲って。一番下の娘と同い年の子まで、そちらの方と作ってましたからね。レディコミの全盛期はそれでもなんとか払っていけたけど、やがてブームも去って、だけど借金は増える一方。いつしか首が回らないところまで膨れ上がってました。

──離婚調停には10年ほどかかったとか。

【井出さん】子どもを人質に取られていたのもそうだけど、人間、殴られ続けると思考が停止して逃げることも考えられなくなるんです。だけどあるとき元夫が長女を殴って、失明させかけた。それで決意しましたね。『私が借金をすべてかぶりますから、形だけでも離婚してください』と言いました。『離婚してもあなたの生活は面倒見ますから』と騙しましたね。その後は一切会ってませんから。編集者さんたちも住所を知られないように協力してくれましたね。

──周りの方々には恵まれたんですね。

【井出さん】子どもたちにもね。まっすぐに育ってくれましたし、また元旦那も顔だけは良かったですから、3人とも私よりだいぶ美しく生まれてくれてね。顔で選んで失敗しましたけど、タネだけはアレでよかったかなと思ってますよ(笑)。

依頼が途切れないDVもの、「空想で描いても読者は満足しない」

──昨今は自粛のストレスからくるDVが社会問題化しています。先生も壮絶な体験をもとにした「DVもの」を数多く描かれています。

【井出さん】DVをテーマにした漫画の依頼はずっと途切れないですね。先ほどレディコミのブームが去った頃の話をしたけど、原因の1つは量産されすぎたことによる質の低下もあったと思います。こう言っちゃ悪いけど、稚拙な漫画家も次々デビューしていきましたからね。またそういう漫画家は想像だけで物語を描くんです。だけど実録系においては空想で描いたものでは読者は満足しないんですよ。
私は漫画としてはファンタジーも描きますけど、人生相談をしていたこともありますし、また読者が投稿してくれた実体験を元にしたした本を出したこともあるので、ネタには事欠きませんでした。事実は小説よりも奇なりじゃないけど、空想では追いつけない、想像を絶する体験をされてる方って本当にたくさんいるんですよ。

──ご自身も経験者として、DVを描くときにこだわってることはありますか?

【井出さん】私が決めているのは、必ず希望をもたせた終わり方にすること。復讐劇とか女性が自立する話とかストーリーはいろいろですけど、とにかく読者が苦しみから抜け出すアドバイスやヒントを盛り込むようにしています。それがDVものの漫画を描く原動力にもなっていますしね。

──同じ苦しみを味わってきた先生だからこそ、読者に寄り添った説得力のある漫画が描けるんですね。

【井出さん】本当にね、私にお金があればDVに苦しんでいる女性のための施設を作りたいんですよ。だけどつい数年前に元夫の借金を返し終えたところでね。DVを受けていても経済力がないから離婚できないという女性は多いんです。

──このコロナ禍で、DVを受けながら逃げたくても逃げられない女性もたくさんいると思います。最後に先生からそんな方々へメッセージをいただけますか?

【井出さん】暴力を振るわれた後に甘い言葉をかけられても、絶対にほだされちゃダメ。DVは決して治りません。今は耐えるしかないと思ってるかもしれないけど、旦那にバレないように情報収集をして。私の漫画にも旦那を欺く方法をいっぱい書いてますから、どうぞ参考になさってください。幸せになるためには、ときはズルく賢く立ち回ることも大事です。私の漫画で救われる女性が1人でもいることを、心から願っています。
(文/児玉澄子)

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