(更新:)
ORICON NEWS
女芸人に“優しい笑い”は許されない?ヨゴレ役不可避、“かわいい”面白さの壁
「かっこいい」が許される男性芸人、ベテランも「かわいい」は許されない女性芸人
一方、女性芸人では、「吉本べっぴんランキング」が2010年から開催されるも2015年に廃止。そのランキングの1位も、2010年は友近、2011〜2013年はアジアン・馬場園梓、2014〜2015年はスパイク・小川暖奈と、何となくピンとこない感もある。「かわいい」「美人」は、相席スタート・山崎ケイの「ちょうどいいブス」や、ブルゾンちえみの「キャリアウーマン系」のように、ネタの“前振り”的な要素が強く、その枠を超えると芸人としてはマイナスになる場合が多いようだ。おかもとまりや福田彩乃、荒牧陽子などは水着写真集を出したり、女優業にシフトしたり、スキャンダルに巻き込まれたり…「女をウリにしている」「偉そうになった」としてバッシングされることもある。
しかし女性芸人に目を向けると、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)を代表として、「女だって男以上に体を張る」と限界に挑戦し続けた森三中をはじめ、イモトアヤコ、ガンバレルーヤのほか、久本雅美、大久保佳代子、いとうあさこの“独身・自虐・非モテ”ネタ、近藤春菜の「角野卓三じゃねえよ!」的な男性に例えられるイジられネタといったように、パワハラ・セクハラが問題視される今の時代にあっても、その基本フォーマットはあまり変わってないのである。
MCにまでたどり着いた女性芸人となると、最近では近藤春奈ぐらいしか思い浮かばないが、そもそも女性MC枠は田中みな実や加藤綾子、高橋真麻といったフリーアナウンサーに牛耳られる場合が多い。
“女性としての幸せ”と“芸人としてのキャリア”の葛藤に揺れる芸人たち
さらに、「ブスネタ」をウリにしていた女性芸人にも“意識改革”が始まったようで、アジアン・隅田美保などは「ブスいじりのせいで結婚できないのが嫌」と訴え、テレビ出演を控えるまでに。尼神インター・誠子も、2年前に30代に突入したあたりから「30歳になったので結婚もしたいし女子も全力で頑張りたい」とたびたび発言しており、相方の渚も「今どついたら、どついたほうがかわいそうになるので、ボコボコにできない悲しさはある。ブスネタは受けなくなった」と突っ込みづらいホンネを明かす事態となった。
ガンバレルーヤ・よしこも、「好きな人がいると面白いことが言えなくなっちゃう」と発言しているように、日々体を張って、容姿イジリも笑いに変え、変顔や自虐ネタを連発している彼女たちも、当然芸人である前に女性なのだ。今年30歳を迎えるよしこにしても、いずれは先輩女性芸人たちと同じ葛藤に向き合う日が近いのかもしれない。
“いじられてナンボ”に新風なるか、3時のヒロインら“幸せな女”芸人の台頭に期待
3時のヒロイン・ゆめっちは渡辺直美を憧れの人に挙げており、福田は女性のツッコミやMC枠を開拓したいと意気込みを述べている。先述の「女をウリにしている」といった批判に晒されるのは、往々にして芸人としての結果が伴っていない際に起こることが多い。その点、彼女たちは定期的に新ネタを卸し、昨年の『女芸人No.1決定戦 THE W』での優勝という結果も残している。“芸人としての本懐”をしっかりと貫いてさえいれば、例え多角的な展開を提示しても、批判より称賛が勝るということを先人たちも証明してくれている。
新たな時代を築きつつある彼女たちが、渡辺直美や横澤夏子のように“女性”としての自分を封印することなく、“芸人”としてのキャリアも確立できる流れができていくことを期待したい。そして、山田邦子や久本雅美といった先輩たちが越えられなかった“壁”を乗り越え、視聴者の抵抗感や偏見が吹き飛ぶような、女性芸人発のお笑い新機軸を開拓してほしいものだ。