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“愛でる”人増加で密かなブーム、「ウニ殻」図鑑の著者が語る魅力

 近年で密かにブームとなっている「ウニ殻」をご存じだろうか? 死後の“ウニ”の棘が抜け落ちた「ウニ殻」は、その意外な美しさから装飾品としてインテリアやアクセサリーになっていたり、SNSでは「キョクヒャー(ウニやヒトデ、ナマコなど棘皮動物好きの総称)」や「ウニャー(ウニ好きの総称)」といったマニアたちが日々語り合っている人気のジャンルだ。そんなウニ殻に特化した図鑑『ウニハンドブック』(文一総合出版)が10月に発売。マニアの間で「狙いたいウニが複数」「読めば読む程凄い図鑑」と話題になっている。日本で10名ほどというウニの生態や分類の研究者の1人であり『ウニハンドブック』の著者である田中颯さんに、著書の反響やウニの魅力、研究者の道すじを聞いた。

『ウニハンドブック』は生物モチーフのクリエイターからも反響

――『ウニハンドブック』が発売されてからの反響はいかがでしょうか?
田中さん 今までのウニを網羅した立派な図鑑は、絶版で入手も閲覧も困難なものばかり。日本産のウニの手頃な図鑑はこれまで存在していませんでした。なので、「これでやっと手元のウニ、よく見かけるウニを同定(ある標本・個体に学名当てること、種を当てること)することができるようになった」という声をウニのコレクターさんや地方の研究者の方々から主に頂いております。この声はまさに自分がこのハンドブックを書く最初のモチベーションでありましたので嬉しいです。

――想定外の反響もあったそうですね。
田中さん はい。ウニのビジュアルが綺麗だったから購入したという声も結構頂いています。これらの声は、生物モチーフのクリエイターさんや、これまで生物とあまり接点を持っていなかったような方など、幅広い方から来ています。こうしてウニに対する興味が広がることは大変嬉しかったですね。

――ウニの興味深いところはどこですか?
田中さん 近年キャベツを食べるウニが注目されたように、生態がおもしろい種類が多く、生きているときの見た目は案外愛嬌があります。このように、ウニはもとより十二分に愛されるポテンシャルを秘めた動物だなぁと思っておりますので、私はハンドブックや研究活動を通して、社会とウニの接点・視点を増やし、ウニを楽しめる人が増えてくれたらと思っております。
――では著書のメインテーマでもあるウニ殻の魅力は?
田中さん ウニ殻は見た目の割に軽く、手頃なサイズ。非常に海辺などで集めやすいです。世界の種類は1000種を超えるような多様性を持っており、コレクション性も高いです。正形類といういがぐり状の姿の一般的なウニは美しい極彩色の殻を持っているものも多く、またカシパンやブンブクは奇妙な形状の殻を有するものが多いです。こういった殻の多様性も、ウニ殻の魅力の一つです。

――そもそも、ウニがウニ殻になるまでどのような過程があるのでしょうか。
田中さん 海中でウニが死ぬと、棘の付け根にある筋肉などが分解され、殻と棘の接続が外れていきます。また、殻の内部にある内臓なども分解され、最終的にウニ殻だけが残されます。ウニ殻は軽いため、砂浜などに打ち上がりやすく、私達の目に付きやすいものになります。

――自然の中でそのような変化が起きているんですね。
田中さん はい。ただ、これを再現して漂着したウニを人為的にウニ殻にすることもできます。ウニを半分ほど薄めたキッチン用漂白剤に浸して、棘の付け根の筋肉、内臓系を溶かして外していき、殻だけになったら真水で洗浄。乾燥させて、ウニ殻の完成です。

しょこたんが火付け役? スカシカシパンは「5つの透かし孔が均等に並んだ美しさ」

――ウニ愛が詰まった著書『ウニハンドブック』からは多くのこだわりが感じられます。
田中さん 見分け方と実物大を特に工夫をしました。今までの図鑑の多くはすでに絶版で出版後30年ほど経過しており、その間に研究も進んで新種や初記録種がたくさん見つかっています。また、種ごとの区別の方法も、30年近くの間に更新され続けていました。今回のハンドブックはこの差分を103種分調査し、更に特徴を文章として記述するだけでなく、図版の上に正しく示していくのが大変でしたね。もうひとりくらい、ウニ分類学をやっている研究者がほしいです(笑)。

――(笑)。そして実物大はシルエットで表現されているんですね。
田中さん はい。ウニは1 cmから15 cm程度と大小様々な種類がいます。小さな種類については形態を正しく見せるために拡大表示しているのですが、そうすると実際の雰囲気と乖離するため、実物大のシルエットを入れることにしました。

――そんな103種類の中から田中さんイチオシのウニはどれでしょうか?
田中さん スカシカシパンはメジャーですが、やはり今も好きです。平べったいウニであるカシパンの仲間で、殻に5つの透かし孔をもつことが特徴的なウニです。近年、しょこたん(中川翔子)さんが興味を持たれ、かなり知名度が高い方のウニだと思います。殻に5つの透かし孔が均等に並んだ種類は他にはおらず、この整った美しさが魅力的だと感じています。また、自分で発見した新種のコーヒーマメウニはやはり非常に思い入れのあるウニです。

小さい頃は「図鑑を眺めることが好きなタイプ」、大学は東京海洋大学へ

――そもそもこの分野に興味を持ったのはどのような理由やきっかけがあったのでしょうか。
田中さん 小さい頃から生物の図鑑が好きだったのが理由です。実は幼少期から海のようなフィールドに通ったりはしていませんでした。むしろ図鑑を眺めることが好きなタイプです。そこで、図鑑の中のウニやヒトデ、ナマコといった、要塞のような生物を魅力に感じ、これらを研究したいと考えて東京海洋大学に進学しました。

――では大学に入学されてから具体的な研究内容はどのように決まりましたか?
田中さん 入学したときは、具体的に棘皮動物の何を研究したいか特に決まってはいませんでした。そして1年生の頃に国立科学博物館の研究者によるディスカバリートーク(一般講演のようなもの)を見に行った際に、「分類学」という生物に名前(学名)を付けて、それぞれを認識できるようにする学問にはじめて触れることになりました。この学問は、生物の種類を当てるために必須な「図鑑」の作成のベースとなる学問でして、非常に魅力的に感じのめり込んでいきました。

――そしてウニ研究に没頭するようになったのは新種の発見がきっかけだったそうですね。
田中さん そうですね。ただ、新種を見つけた当時は特に研究のことは意識していませんでした。とにかく棘皮動物を理解しようとたくさん生体や殻を見つけたり標本を集めたりして観察。まずはどんな種類が日本近海に生息しているかを明らかにしたいと考えていました。そんななか、関東の至って普通の海岸で、どんな図鑑でも同定ができないウニ(後のコーヒーマメウニ)を見つけ、不思議に思い研究をはじめました。
――新種のコーヒーマメウニはどのように発見されたのでしょうか。
田中さん 実は他の一部の研究者も新種であることが分かっていたようなのですが、死後の殻はそこら中の海で拾えても生体が採集されておらず、誰も研究ができない状態でした。近縁な種類はみな砂浜などに潜って生息するのですが、本種に限っては岩場の上に積もった薄い砂の層のなかに隠れて生息しているんですね。最初は私も砂地ばかり調査して、全然採れなくて、調査最終日にがむしゃらになってそこら中の目についた砂をかき集めていたところ、生体が採集できていました。初めて採集した日は忘れられません。

――そんな田中さん、実は会社員としてお勤めもされていらっしゃるんですよね。
田中さん そうですね。正直今の時代は分類学のような基礎研究が大学や国から軽視されがちで、これ一本でのびのび研究できる環境は失われつつあります。なので、アカデミアに両足をおかず、研究と別の仕事を両立していく在野研究者という生き方が魅力的だな、と思っています。
『ウニハンドブック』
2019年10月25日(金)発売
<定価>本体1,800円+税
<発行>文一総合出版
【公式サイト】(外部サイト)

■プロフィール■
田中 颯(たなか・はやて)さん
1994年京都府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士前期課程修了。タコノマクラ・カシパン目の系統分類が専門。大学生の頃にウニの新種(今のコーヒーマメウニ)を発見したことをきっかけに、ウニの分類学にドップリとはまる。現在はIT企業でエンジニアをしつつ日本産ウニ類の分類の研究をライフワークとして続ける。
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