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オリコンニュース
その時代を撮りたい、カメラマン・太田好治氏
中学生の時、父親を亡くしたことで、物作りをして何かを残すという事を考え始めて。映画の「エンドロール」を見て感動したんですよ。制作者の名前やスタッフの名前が流れてきて、自分の仕事を「エンドロール」を通して誰かに伝えることができて、名前を残すことができる。それは素晴らしいことだなって。だから、エンドロールはずっと見ていました。邦画でも洋画でも、どんな仕事があるのかをチェックしていました。
――高校卒業後、東京に出て来ようと思っていた?
父親が亡くなった後に、過労で母親が倒れてしまって、夢も何もなかった僕は早めに働いて、自立して家族をサポートしようと思っていたんです。それで工業高校に進学して、卒業したら地元の企業に就職するつもりだった。
でも、母親の体調がなんとか回復して「東京に出てもいいよ」と。その時『今村昌平』さんがやっていた『日本映画学校』(注:現在は日本映画大学)のことを知り、自分のやりたいことに近づけるんじゃないかなと思ったんですよね。それで高校を卒業後、上京して『日本映画学校』に入りました。
――プロのカメラマンになりたいと思ったのはいつ頃ですか?
もともと、「写真」を仕事にして生きていけるとは思っていなかったんです。でも、写真家『野村浩司』さんの写真集『短編写真』と出会った瞬間に衝撃を受けた。プロのカメラマンで、これだけ自由に作品を撮っている方がいるんだと。『野村浩司』さんの作品で有名なのは、岩井俊二監督『スワロウテイル』やMr.Childrenの『深海』。90年代の音楽シーンにおいて、「CDジャケット」というジャンルでトップクラスの方です。音楽雑誌やファッション誌の表紙とは違って、CDジャケットは表現の自由度が高く、被写体の顔が見えなくても良いし、ピントが「背景」と合っていても良いわけです。そういう発想が出来るのはとても面白いなと思いました。音楽に歩み寄りながら、作品を翻訳している。同じアーティストだとしても、それぞれのカラーを「人」を通して表現する。それが本当にカッコ良かった。野村さんの作品を見て決めたんですよね。プロのカメラマンになろう。野村さんを目指そうと。本当に大きな出会いでした。
――野村さんとは一緒にお仕事を?
実は野村さんにお会いした時に「弟子にしてください」とお願いしたんです。普通、アシスタントになるには基本的なカメラの「知識」や「技術」が絶対必要です。でも、当時の僕にはそれが全くなかった。そんな僕を野村さんは現場に連れて行ってくれて「太田、あれをやれ、これをやれ」と指示してくれたんですよ。でも、もちろん僕は何も出来なかった。野村さんは「出来ない事」を分からせてくれたんだと思います。本当に悔しくて、泣きました。その現場はずっと心に残っていますね。弟子にはなれませんでしたが、野村さんに出会えた事は僕の宝物です。まだまだ野村さんには追いついていないですけど、今も僕の目標なんです。
――それから基礎を学ぶためにスタジオに就職して、2005年に独立された?
野村さんに「基礎がないからダメだ」と言われ、すぐにスタジオに就職しました。当時はネガフィルムとポジフィルムがメインで、デジタルはようやく認知が始まったタイミング。スタジオでのライティング、アシスタントワーク、現像方法やカメラの扱いなども、色んな事を勉強しました。沢山の現場を経験させていただき、2004年末に独立しました。フリーになり14年ほど経ちましたけど、僕は業界的にはまだまだ新人から中堅の間だと思っています。学ばないといけないことは年々増えていて、どんどん時代も変わっていきます。新しいカメラもライトもたくさん出ているので、まだまだ勉強しなければならない、頑張らなければいけない。常にそう思っています。
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ラプラスの魔女/太田好治氏・撮影 (C)2018「ラプラスの魔女」製作委員会
それぞれカメラも違いますし、技術も違います。撮影に向かう為の姿勢や準備も違います。ですが、人が写っているのというのは変わらないです。例えば映画のポスター撮影なら、撮影の5時間前。ライティングを組んで、スタッフとコミュニケーションを取りながら準備します。ライブの撮影でいうと、午前中から現場に入ります。曲の流れと演出効果、媒体数、それに求められている写真の種類。それを想像して自分なりに考える。楽曲によっての狙いを事前に決めて撮影します。僕は予測では絶対にやらない。全部「理詰め」です。ライブが2日間あるなら、昨日とは違う動きで角度を変えたりします。ライブハウスは「熱気」や「気持ち」を撮って、横浜アリーナや武道館などの大きいステージは「物語」や「テーマ」をしっかり捉える。ただ撮影するだけだとレポート写真になってしまうので、ライブ撮影でも事前準備は本当に大切ですね。
――写真を撮るうえで特に意識していることはありますか?
「写真を撮る」ということは、僕らカメラマンの心の中で描いた「絵」を「写真化」していく作業だと思います。一枚の写真を撮るには必ず『理由づけ』が必要で、「なんとなく」撮りましたという写真は「なんとなく」しか写らない。明日、明後日、仕事が急に入ったとしても自分がそれを撮る「必然性」を考えることが第一優先です。僕はいつも、「なぜ自分が撮らないといけないのか」、「撮るべきなのか」を考えます。その次にカメラを選びます。写真を撮るという事は、人が見る行為に対して参加させてもらう。相手から時間を頂き「これを見てください」「見て欲しいです」というのを提案するわけです。自分が精一杯、出来る限りのことをやらないと「驚き」も「感動」も与えられないですよね。あと、文脈を考えて「絵画的」に撮った方がいいのか「写真的」に撮った方がいいのか、それとも「コンセプト」を撮るのかそれを崩す「躍動感」がいいのか。毎回、何を求められているのかを間違わないようにしています。
――プレッシャーを感じることはありますか?
もちろんあります。毎回、プレッシャーを感じています。怖くて仕方ないし、心配ばっかり。どんな現場でも、何度撮影させていただいた方が被写体でも、現場の中では一期一会です。「何か準備を忘れてたらどうしよう」とか、「カメラがちゃんと動くかな」とか。充分にカメラテストをやっても、本番にうまくいかないことがあります。そのときにどうするか。カメラマンは現場にたった一人ですからね(笑)