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(更新: ORICON NEWS

アイディアの源泉は作品愛、agnam代表取締役社長・中村太一氏

漫画、映画少年

――中村さんが学生時代に熱中していたエンタメコンテンツは何でしたか?
 もともと色んな事に興味がある方で、映画やアニメ、小説、ドラマや実用書とかも好きです。そのなかでも特に、空気を吸っているように触れていたコンテンツは『漫画』でした。仕事が忙しくても月に100冊くらいは読んでいました。今までで、10万冊は読んだと思います。それと、中学や高校は映画をたくさん観ていました。高校になればバイトができるようになりますから、自分の部屋にテレビとデッキを買って、手当たりしだいに映画を借りて。好みの作品でいうと『羊たちの沈黙』や『パルプ・フィクション』『マトリックス』『ファーゴ』とか、だいたいがスリラーかミステリーかSFでした。未知のもの、謎めいたものに惹かれていましたね。

――漫画10万冊は凄いですね。大学時代はテレビを見るよりも映画でしたか?
 そうですね。僕の場合は面白いものはテレビではなく映画にありました。だいたいヤバいコンテンツは、誰もが見られる地上波や図書館には置きにくいじゃないですか。でもそこに本質があるような気がして。今みんながスマホで見ているものの半分近くはヤバいものだと思うんですよね。それは客観的にグロいとかエロいということではなく、主観的に「ヤバい!」と思って見ているというか。つまりヤバいって主観的な感情だと思うんです。だから個々のヤバいにアジャストできるサービスが今は受けていて、NetflixやAmazon プライムビデオ、Spotifyとかみんなそっちにきている。それはエンタメだけじゃなくて、食も健康も恋愛もそうだと思うんです。自分の中の好きなものを好きなときに好きなだけ楽しめる。そんなサービスが、今は特に支持されているという感じはしますね。

agnam代表取締役社長・中村太一氏(C)MusicVoice

agnam代表取締役社長・中村太一氏(C)MusicVoice

――就職先もエンタメ業界を志望されていたのですか?
 そうです。漫画も映画も好きで、それで映画を作っている会社はどこだろうと調べて、テレビ局も受けました。ちょうどそのころ、博報堂DYメディアパートナーズに、『いま、会いにゆきます』や『世界の中心で、愛をさけぶ』などの作品をテレビ局と一緒に組んで、企画から仕掛けているプロデューサーがいる、と聞いて。広告業界に興味があったというよりも、それを作って広げていくところに興味をもって『博報堂DYメディアパートナーズ』に入社しました。

――在職時に印象に残った仕事はなんでしょうか?
 自分で考えて仕掛けた中では、『進撃の巨人』の作中に出てくる、50メートル級の超大型巨人をリアルに出させるという取り組みですね。ただ、巨人を実際に見ることはできないので、それを、プロジェクションマッピングを使ってリアルに出したら面白いのではと。場所決めから人集め、制作までをパートナーのみなさんと協力しながら実現させました。作中のように人々に絶望を感じて欲しいと思って、ビルを見上げる観衆はまさに作中のようで、リアルな体験ができました。

 それと、実写映画が決まった時に、初出しを自動車メーカーのテレビCMでやってしまおうと。これは企画営業から、プロデュース、プランニングまでをやりました。また、リアル脱出ゲームの企画をSCRAPさんに提案しにいって。全国のドームツアーやアジア、アメリカ、全世界で10万人が参加をしてくれて。僕は自分の仕事を規定してなくて、プロデューサーだったり、営業、プランナー、進行役だったり。その時々で必要なポジションをやり切る感じでしたね。

――そう考えるとゼロから企画を考えて作ってきた感じですか?
 確固たるコンテンツやキャラクターがいて、それとこれを組み合わせると凄く面白そうだとか考えるのが好きなんです。すでに強いものがあって、それをどうすれば知ってもらえるか、楽しんでもらえるか、ムーブメントにできるかという考え方ですね。ファンが喜んでくれて、コンテンツホルダーのためにというのが一番です。

――そこから、博報堂を辞められてagnam(アグナム)を立ち上げたんですよね。
 立ち上げて3年目ですね。僕ひとりの会社で、2015年11月に辞めてその翌月に設立しました。会社名を後ろから読むと「manga」なんです(笑)。漫画をはじめとした、エンタメの見方を変えた『新しい楽しみ方』を作りたい、というのが想いです。

――会社を立ち上げた理由は何でしょうか?
 先ほど紹介した大きなプロジェクトをなぜやり切れたのか、と言いますと、僕自身、やはりその作品が好きだからなんですね。本当に好きな気持ちはエンタメの仕事をする上で、『最高のパスポート』になると思うんです。作り手に信用される武器になりますから。どれぐらい好きか、どれぐらい見ているか、どれぐらい考えているか、というのは話すとすぐに分かってしまう。その気持ちさえあれば、身一つでフラットな形でやってみてもいいかなと思ったのが大きいですね。

 それと、昔はいくらそのコンテンツが好きでもそれを仕事にする出口が少なかった。ウェブが発達したおかげで企画や事業をクリエーションする機会が圧倒的にしやすくなったというのが大きくて、僕みたいにコンテンツホルダーの方々とコラボして波を作っていくというのは、昔はなかった仕事だと思うんです。その仕事が成立できるようになったというのは有り難い世の中になったと思いますね。

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