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(更新: オリコンニュース

物語の力を信じている、週刊少年マガジン副編集長・川窪慎太郎氏

ハードルが下がった分、必然的に愛情は薄くなる

――10代の頃は、テレビをよく観ていましたか?
 よく観ていましたね。家に帰ったらテレビしか観てなかったくらいです。ダウンタウンさん、とんねるずさん、ウッチャンナンチャンさんの番組はよく観ていました。僕の周りは全員観ていましたね。小学生時代の友達とは卒業後も仲良くて、やっぱりみんなその3組はずっと観ている感じでしたね。

――フジテレビ系バラエティ番組の『とんねるずのみなさんのおかげでした』や『めちゃ×2イケてるッ!』など、その頃から続いた人気番組が終了していますがどの様に感じますか。
 僕、先程挙げませんでしたが、『めちゃ×2モテたいッ!』(『めちゃイケ』の前身番組)からすごく好きで最初から全部観ていました。

 先程の3組もそうですが、ナインティナインさんが好きで『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』(ニッポン放送のラジオ番組)も中学生の頃からずっと聴いていたし、『めちゃ×2イケてるッ!』が終わったというのは切ない感じがしますね。岡村さんが最終回で、「めちゃイケは僕の青春でした!」と言った言葉はとても印象深くて。青春は大袈裟かもしれませんが、僕にとっても何か“心に穴が開く”感じがしましたね。

週刊少年マガジン副編集長・川窪慎太郎氏(C)MusicVoice

週刊少年マガジン副編集長・川窪慎太郎氏(C)MusicVoice

――エンタメ界でお仕事をされて、インターネットやSNSの興隆、Netflixなど定額制配信サービスの誕生など業界の変換期のど真ん中を過ごされていると思いますが、そういう変化をどのように捉えていますか。
 基本的に「なるようになるし、なるようにしかならない」と思っていて。変わってほしくないというようなことはあまり思わないです。「昔は良かった」的なことを言うのは、昔からダサいなと思っていたので(笑)。でも、最近映画業界の人と話をしていて、テレビって瞬間的なものというか、『めちゃイケ』を観たければ、土曜夜8時に家にいなきゃいけなかったんですよね。もちろん録画もできましたけど、ビデオに録画して観るというのも今より面倒で。

 それと同じで『もののけ姫』(宮崎駿監督のアニメ映画。1997年7月公開)の時って、劇場に長蛇の列ができていて、観たかったら朝から並ばなきゃいけなかったじゃないですか。今みたいにネットでチケット予約できなかったから。今と違って、エンタメのハードルが高かったですよね。

 業界側の人間だから強く感じるのかもしれないですけど、自分が消費者側に立っても、圧倒的に消費者側が優位というか。取捨選択できるのは消費者だし、好きな時に観られて当たり前だし、逆に好きな時に観れないなんて不便だし。でも、昔は不便だったことも不便と思ってなかったですよね。エンタメへのハードルが低くなりすぎて、参入という意味ではいいのかもしれないですけど。エンタメが安売りされているというか。消費者が見逃しても、「後でネットで観ればいいや」みたいに好きに選べるので、昔に比べると作品に対する愛情みたいなものが必然的に薄れるんじゃないかと。

 だから、今は音楽なんかもそうですけど、アニメや漫画もイベントでの体験が人気ですよね。そこに行かないと体験できない、そこでは発信者側が優位で、そういうものが重宝されているのは必然ではないかなと思います。“夜8時に家に居なきゃいけない”ということが“ライブ会場に行かないと見られない”というものに変わっただけで。本質は変わっていないと思いますが、外側はだいぶ変わったなと。

――エンタメの本質的なものは変わらないと仰っていましたが、具体的にエンタメの本質的なものとはどういうものだと考えていますか。
 基本的に小説や漫画で育ってきたので、僕は小説や漫画の物語が人間や世界に、そのものの存在を変化させるような影響を与えると考えています。僕自身は物語を作れないので、それを人に届けたいという気持ちはあります。それはミュージシャンであれば音楽であったり、映画監督であれば映画だったりすると思うんですけど。物語の力を信じているし、それを届けたいと思っています。

『進撃の巨人』が広がった背景、作者との関係性

――『進撃の巨人』が出版されてから怒涛のように広がっていった感じですよね。当時もその実感はありましたか?
 すごく多くの人が応援してくれたんですよね。『進撃の巨人』は本当にいろんな方々が一緒に育ててくれた作品だと、僕も諫山さんも思っています。当時はTwitterよりもブログが主流で、連載が始まったり、単行本が出たりするタイミングで、読者の方が「これはすごい」という感じで書いて下さって。

 書店員さんも「これを売るんだ」という感じで、渋谷駅の埼京線のホームにあるブックスタンドでも「『進撃の巨人』1巻 50冊売れました」とポップを作ってくれて。最終的には「千何百冊売れました」くらいなっていたと思います。僕の地元に近い駅の本屋でもプッシュしてくれたり。たぶん全国でやって頂けたと思うのですが、一般の方や書店員の方など皆が「『進撃の巨人』を誰かに教えたい」という宣伝をしてくれたということが、僕にとっては印象深かったです。それ以外でも、芸能人の方などが「この作品が面白い。読んでほしい」という事をテレビやラジオやネットで言って下さったことも、大きかったですね。

――コミックス13巻は、初版発行部数275万部で講談社にとって26年ぶりの記録更新となるなど、日を追うごとに大きな反響があったと思います。当時、編集者としてプレッシャーなどは感じましたか?
 プレッシャーは全く感じたことないですね。いいことしかないですから(笑)。みんな名前覚えてくれますし、優しくしてくれるし。やりたいと思ったことにも力を貸してくれます。

週刊少年マガジン副編集長・川窪慎太郎氏(C)MusicVoice

週刊少年マガジン副編集長・川窪慎太郎氏(C)MusicVoice

――現在に至るまで、『進撃の巨人』はいろんなコラボをおこなっていますよね。こういう話はお二人で決めていくのですか?
 そうですね。そもそも諫山さんが寛容な方で、僕もその度量の大きさを尊敬しています。「こんな小さなことで監修とかやりたくない」といったことは今まで一度もなかったですね。基本的に「誰かが面白いと思っていることならやる価値がある」ということが基本スタンスです。

 僕でも諫山さんでも、宣伝部でも代理店でも企業でも誰かが「これやったら面白いんじゃないか」ということは全部やるという感じです。それが多少、漫画のテイストと合ってなくても、ファンに嫌われそうでも(笑)、誰かが心からやりたいと思っていることはやるという。

――その最終決定は諫山さんとお二人で決めるのですか?
 それが、ありがたいことに僕ら編集部で決めます。諫山さんが大事にしていることがいくつかあって、その大事なことに触れるような案件であれば彼に聞くという感じですね。当然、作品の中身に関わる部分であれば諫山さんに聞きますが、1000件あれば900件くらいは編集部が判断しています。基本、諫山さんが感じていることに近づけるように考えてやっています。

――編集部と作家さんの信頼関係における面で、何か意識していることはあるのですか。
 あります。偉そうなことを言いますが、僕は「作家と編集者は対等であるべき」と考えているんですね。誤解を招くかもしれないので、言い換えると「編集者は少なくとも、作家に『対等』だと言えるようにならなければならない」ということです。

 どんなに大作家であっても、これからの作家であっても、「対等だ」と言っても差し支えないくらいのことをしなければならないと考えています。それは、いいアイディアを出すことでもいいし、資料集めをやるということでもいい。

 それができなくても、作家のモチベーションを上手く保てるように努力する、何でもいいので「僕はあなたと対等だ」と言ってもいいような関係であり続ける。そんなことを実際に言ったことはないですけど、いつか、そういうことも言えるように仕事をやるべきだと思っています。

 僕も例えば編集二年目で、十何年もやっている作家の先生に「僕ら対等ですよね」とかは言わないですよ(笑)。もちろん、そこは年月を掛けて、少なくとも対等であろうという姿勢は必要だと思います。ものづくりをするうえで、片方が偉いという関係性なら、もう一方はいらないですからね。

――以前、インタビューで『大きな判断を下すことが多い中で「恐怖心」はないのか』という質問に対して「自分以上に『進撃の巨人』のことを考えている人はいないから、恐怖心はない」と仰っていたことがとても印象に残っています。
 諫山さん以外には、ということですね。それは、そうじゃないですかね。家にいる時も、どこか旅行に行っている時も常に考えていますからね。僭越ながら、話の展開についても妄想していますし、「どうやったら売れるかな?」とか。諫山さん以外で僕以上に考えている人がいたら、それは頭おかしいとしか思えないですからね(笑)。その自負はありますよ。今担当している作品は『進撃の巨人』に限らず、全部そうです。

――その中で『進撃の巨人』という作品は、川窪さんにとってどのようなものですか?
 ただただ、“感謝”ですね。どうしても諫山さんとセットになるのですが、『進撃の巨人』という作品に感謝していますね。僕は頭でっかちの人間で、20歳の頃には「自分は完成された人間だ」と思っていたんですよね。人間的にも精神的にも成熟していると。

 でも、大人になって、「自分はまだこんなに成長できるんだ」と、大人になっても大きく変化させてくれたのがこの作品だったので。それは諫山さん自身の存在もそうなんですけどね。たまに夜遅かったり、週末に打ち合わせをやったりするんですが、彼の方が「土日にすいません」と言って、僕より深く頭を下げて帰ったりしますからね。彼の人間性にはとても感銘を受けました。

 それに全然違うジャンルの方々と知り合うキッカケになったのも、この作品ですし。感謝しかない、感謝すべき存在という感じですね。

――具体的にどう変わったのですか?
 優しくなれたというか。昔よりも他人を受け入れられるようになりましたね。昔は自分に余裕がなかった気がします。余裕ができたかは分かりませんが、他人の存在を受け入れられるようになった。できるだけ大きな心で優しい目で見られるようになったことが一番大きいですね。

――今は人間関係もSNSでデジタル化されている中で、人間らしさの本質というかそういうものについて思うことはありますか。
 僕は本当に社会情勢や世間のことには疎くて、よく分からないですね(笑)。でも、自分のことを大事にすれば、もっといろんなことが大事にされるんじゃないかなと思うんですけどね。

 例えば、僕にとっては家族だったり、何人かの友人だったり大事なものってごく僅かだし、それを大事にしていればいいのかなと。そうすれば、僕の家族や友人も彼らの大事なものを大事にするだろうし、みんなハッピーになれるんじゃないかと思うんです。

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