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(更新: ORICON NEWS

才能の火付け役、FIREBUG代表取締役CEO・佐藤詳悟氏

人のコンサル会社

――佐藤さんの現在の仕事内容は?
 面白い人達をエンタメコンテンツで手伝うというのが基本にあります。面白い人は20年くらい前ですと「TVに出ている人=面白い人」という感じでしたが、今はネットも含めてベンチャーの経営者も面白いことをやっている時代なので。芸人さんやアーティスト、ベンチャー経営者とか、何かを産み出している人達ってほぼみんな面白い人達という括りになっているんじゃないかなと思っていて、そういう人達のお手伝いをしています。

 エンタメコンテンツと言っても、単純に「番組を作りましょう」ですと昔とあまり変わらないので、そこにデータやマーケティングを組み合わせています。これから先は人の働く時間も限られてきたり、人工知能が補ってくれる部分は増えていくと思いますので、その部分は装置やシステムに任せて、プロデューサー側ができる「アイデアを提案すること」や「人と人を繋ぐこと」に特化した会社にしていきたいなというのをこの2、3年やっています。

――事業範囲がかなり多岐に渡っていると思います。色んなことをやりたいという思いが、多くの人との出会いを通してどんどん広がっていった感じですか?
 ブレずにいるのは「人のお手伝い」だと思っています。例えば経営者の方が手伝って欲しいと思うのは「会社の業績を上げたい」ということですし、アーティストなら「自分の作品をより多くの人に届けたい」ということだと思います。根本的にはその人がやっていることを世の中に伝えたいとか、その人がやっていることで収益をあげたいというニーズがあって、そこから細分化されてより細かいニーズになっていくと思います。もはや経営者もアーティストも俳優も女優もスポーツ選手も、全ての職種の人達は今、大きく言うとサービス業だと思っています。

 だからこそ、色んなものを作っている人達のお手伝いというのに興味がありますし、その人達がやりたいことを実現していく上で、データや色んな仕組みを作っていくというのがあります。例えばアーティストで言えば「企業と契約がしたい」や「TV番組に出たい」、「自分のファンに課金させたい」とか。そういう細かいニーズになっていくんです。それらの流れを全て、システムとして作っていくという感じです。

FIREBUG代表取締役CEO・佐藤詳悟氏(C)MusicVoice

FIREBUG代表取締役CEO・佐藤詳悟氏(C)MusicVoice

――佐藤さんが力を入れている、そのシステムの流れというのは?
 一つ目としては「出会う」「見つける」という作業があって、2つ目が「育てる」「一緒に作る」という作業で、3つ目が「営業する」「届ける」、4つ目で初めて「ビジネスをする」という感じです。

 基本、ビジネス化していく時はその「1」「2」「3」「4」の順序に従っていくと思うんです。これに優先事項をどう決めていくかがあります。例えば、「1」の要望としては「こういう仕組みやこういうものがあった方がいいよね」というのがあり、そこを叶えるための「QREATORS」(※編注=同社が運営するクリエイターのカタログサイト)を立ち上げています。色んな人達を紹介してくれて、そこにプロフィールが溜まることで、僕達が面白い人達と出会える。そういうメディアを運営しています。

 「2」の「育てる」「一緒に作る」で言うと、音楽事務所で例えれば、アーティストと契約した場合、最初にお金を払って曲を作ってもらう。その換わりに権利を持つということだと思うんです。それは所属というかファンドみたいなもので、単純に「3曲分は500万円出資をするからその権利の分配も含めて5曲分はウチでやらせてね」みたいなことになっていくと思うんです。もしくはそのアーティストに会社を作ってもらって、「その会社の30%の株を下さいね」と。そういう仕組みを今は作りたいと思っています。クラウドファンディングを手掛けている会社と提携するというのも一つにはあります。

 また、検索サイトでタレントを検索したら、株価のようにそのタレントの価値を表示させたり。デジタル上の露出とマスメディアの露出、SNSのパワーのような指標で株価が変動するような。「先々月くらいはデジタルの露出が圧倒的に多いから、3カ月後くらいにはマスメディアからけっこう声がかかる」という“株式情報”など。タレントパワーの見える化というのも検討しています。

 人の名前を入れたら全部その人の露出が見えるような仕組みを開発し始めていたり。営業やPRというのは今、大きく分けて、SNSで発信するか、ウェブメディアかマスメディアに取り上げてもらうかということだと思います。でも、メディアの場合は、そこにいる記者やディレクターにその情報が伝わらないとそもそも取り上げてはくれない。今まではレーベルやプロモーター、芸能事務所のマネージャーが営業しなければいけなかった。そういう仕組みが変えられるようなことも検討し始めています。

 実際にいくつか仕組みを用意していますし、課金サービスもやっています。その一つが「Thirty(サーティー)」(スマホ短尺番組アプリ)です。人が動かなくてもできるものは仕組みにして、人が動くものは動くというものをはっきりさせていこうかと。そのシステムができれば、どのジャンルにも応用が可能だと思っています。

 クライアントに才能があるということが分かったら「3」「4」の部分だけを手伝う。新人発掘でしたら「1」「2」「3」「4」の全部手伝うなど。色んなパターンでその人に合わせて選択して、より良い提案をおこなう。そうした大きいエージェンシーをやっていきたいと思っているところです。そここそ「人のコンサル会社」です。

――「見つけて育てる、いわゆる総合コンテンツプロデュースカンパニー」とFIREBUGは掲げていますが。
 QREATOR AGENTとFIREBUGをくっつけて、変わった人や面白い人のエージェンシーになりたいなという感じです。いきなり「1」「2」「3」「4」全てを作るのは無理ですから、徐々に4つの中の何かをうまく掴みながら、一つひとつ検証して開発していく、現在はそういう段階にいます。

――これまでの事務所の機能や手間をかけてやっているものを、IoT(※編注=身の回りのモノがインターネットと繋がる仕組み)と連動させていくイメージですか?
 僕はプロデューサーやクリエイターが、ロボットや人工知能に置き換わるとは全く思っていなくて、人間の強みはアイデアや感覚だと思っています。それはロボットにはできない部分で。ロボットでもできる部分はロボットや装置に任せて。1日2時間でも人間が考えれば解決するということにはなるべく人間の時間を使った方がより才能が発揮されるのではないかと思っています。「この領域を考えればその人は成功する」という部分を見せられるようなデータ設計にしていきたいと思っています。そもそも才能があるプロデューサーの人達は、感覚としてそれを理解していています。それを仕組み化して、そういう人達が多く生まれる形をとっていきたいなと思っています。

――吉本興業を辞めるときにぼんやり見えていたものが、やりながらはっきり見えてきたという感じですか?
 やりながらですね。根本的なゴールはブレてないと思います。そもそも僕自身が小学校くらいのときから隠れて人をイジったり盛り上げたりするのが好きだったし、映画の大統領秘書官のような人にフィーチャーしたものが好きでした。基本的には凄いことをやりたい人のお手伝いというのに興味を持っていますので、それをビジネスにしたいというイメージです。

――過去のインタビューで「興味が、人」と話しておられて、佐藤さんの根幹でもあると思っています。エンタメが好きというか、人に凄く興味があるという感じですね。
 何でその人になったんだというのに興味があります。例えば、何で「田村淳」という人が生まれたのかとか、何で「水野良樹」という人が生まれたのかに興味があって、それってあまりビジネスではないと思うんです。

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