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(更新: ORICON NEWS

才能の火付け役、FIREBUG代表取締役CEO・佐藤詳悟氏

コンテンツの戦いへ

FIREBUG代表取締役CEO・佐藤詳悟氏(C)MusicVoice

FIREBUG代表取締役CEO・佐藤詳悟氏(C)MusicVoice

――エンタメ界のことについてお聞きしたいのですが、動画やTVの観られ方などこの10年で色々変わってきていると思います。佐藤さん自身、エンタメ界のど真ん中にいて、「テレビ」というものに対してどう思われていますか?
 僕は最近、自分の感覚をちゃんと言葉にした上でデータを見るようにしていますが、例えば「TVって最近観られていないよね」という話をよく聞きます。しかし、本当に観られてないのかなという疑念があり、それでデータを見てみるとTVは観らえていて。6割7割くらいは、情報の経路で言うとTVだったりするんですよ。その後にYouTubeとかがあってSNS。大きく割ると20代30代はTVの時間と、いわゆる新聞・ラジオ・雑誌とかの時間と、インターネットの時間みたいのが300だとすると、だいたい120、120とかはインターネットとTVで、残りは新聞とかラジオになっているんです。

 60代になると、300あったとしたら250くらいがTVで、インターネットが少ない。新聞は他の世代に比べると多い。それって何となく僕が思っていたことと一緒で、おそらく家のリビングには人がいて、そこにはTVがあって、そこに流せるのは地上波TV局が主流で、いわゆるリビングにいるときに寂しさとか暇があったときに使っているのがTVと言われているもので、まだ基本的にはTVを観る方が多いと思うんです。今のライフスタイルで言うと。

 このパーセンテージが大きく変わる時期って、リビングにあるTVがインターネットに完全に繋がる時だと思っています。ただ、視るものは変わってもリビングのモニターを観る時間は変わらないんじゃないかというのが、僕の今の感覚です。地域によってはTVにネットが繋がっている家の割合が10%も満たないところもあって、東京23区ですら20、30%。ただ、これが国の政策などで絶対に家のTVに災害情報も含めてWi-Fiを繋げるみたいになったら一気に80、90%くると思うんです。その時期は正直、国レベルの話になってくるので不透明ですが、もしそのままゆっくりと流れていくとしたらたぶん20年とかだと思うんです。結論を言うと、TVとインターネットという議論がそもそも間違っていて、あのリビングにあるTVモニターと外のモバイルフォンという戦いになると思うので、そこに誰が何を流すかという競争になっていく感じになると思っています。

 一方で、例えば大分県に住んでいる人が、ネットが家に繋がっていても、大分の情報は知りたいと思うはずで、そうなると大分のコンテンツは誰かが作るはずなので、ローカル局は早めに地元情報とかに特化したコンテンツ局になるべきだと思います。

成功体験の積み重ね

――佐藤さんが仕事をしている中で、活躍されている同世代の方々とお会いして感じることはありますか?
 頑張っている人ほどラッキーな世代だと思っています。エンタメ業界に最初からいる人は、ある程度人脈もあり、35歳くらいで中堅くらいの層になっています。何となくエンタメ全体のこと、古いものも新しいものも把握していて、コンテンツの作り方や、業界に人脈も出来てきます。そんな方々は、今のような新しい時代になってくるということは理解できていて、その変化を感じている人達が今、活躍をしている気がします。

――新しいものを作ることや、既存の仕組みを変えることは大変労力が必要で、不安な気持ちになったりすることはありませんか?
 あまり僕は変えようとはしていなくて。時代が変わるのでそこにいるというだけで。多分それってけっこう難しいことで。一中小企業が世の中を変えようって、まあまあ難しくて。時代が変わってくるときにそれこそiPhoneみたいのが生まれたらその時代の波に乗れるという感覚なので。波は絶対に来るはずで、その波に乗れるものを用意しておくかどうかということだと思っています。あまり壊してやろうというのは考えていなくて、時代は変わるのでそこにいるという感覚です。

――新しいものをやっていくと、なかには他者からの反発もあると思います。それをリスクと捉えて一歩引いてしまう人もいれば、それをうまく回避して新しいものを作りだす人もいます。佐藤さんはどうですか?
 たぶん2つあって、そもそも波に乗ろうと思っているので、どういう波が来るかというのを考えています。リスクも何もその波が来るか来ないかという判断なので。そもそもあまりリスクを考えない方です。もう一つは、「こうしたい」とか「これを実現したい」と思ったら「どう実現するのか」というのを社会人になってから基本的にずっとやっていたので。例えば淳さんが「こうしたい」と言ったら「それをどうしたら実現できるか」という選択肢を5、6個用意して、それで最適なものを選ぶということをずっとやっていましたので癖になっています。そもそも「できない」という選択肢がないというか。例えばここから上野に行くと決めたら上野に行くしかないので。別に北海道に行ってから上野に行ってもいいんですけど、とにかく上野に行くのは決めているので、そこに別にリスクも何もないというか。あまりネガティブなことは考えないですね。

――30代で色々なことにチャレンジしている、その原動力は何でしょうか?
 僕らで言うと、人間は成功体験の積み重ねで次の行動を起こすと思うんです。そういう意味ではこの業界では小さい幸せというか、やることに対しての結果が早々に見える職業だと思っていて。例えば水野良樹の曲を、当社が営業して取ってきた曲が、1カ月後くらいにはそのアーティストが歌ってくれて流れて、東京ドームとか満員の中で歌われるとかって、あんまり普通の業界だとなかなか得られない体験だと思うんです。そういう意味では光景として目先の動いたものとか作ったものが届いている感が凄く短い時間で訪れるので、それがいいというか、続けられる養分になっている気がします。

 でも、人それぞれだと思います。例えば料理人さんは目の前のお客さんが喜んでくれるのを見て幸せを感じるのでしょうし。結局、他人が喜んでくれるのが原動力な気がします。これ以上求めると言えば、先ほど話した仕組みに対する装置を作ったり、そういうところに投資はしたいと思っています。「作りたいものを作る」というところにお金を使いたくて、その作りたいものでまた新たなサービスを提供できて、その対価でお金が入ってくるという繰り返しだと思うので、そういうのをやっていくのが今は意義になっています。

――そう考えると、新しいものをどんどん生み出している「今」は楽しいのではないでしょうか?
 楽しいですね。でも楽しいって表裏一体というか。「楽しい訳ないじゃん」とどこかで諦めているので。「楽しいだけなんてある訳ないじゃん」と小さい頃から。何でも物事ってマルバツとか上下とか右左とか多分全部が対になっていて、自分は今これ楽しいと思っているけど、楽しくない部分もあるとか、全ての物事は2つの側面を持っているはずだと思っています。

 ◇

 活躍の影に努力あり、という言葉がある。スポットライトを浴びるスターは見えないところで努力を重ねている。それと同じようにスタッフの支えも見えない。しかしその役割は大きい。元来「凄いことをやりたい人のお手伝いをしたい」という佐藤氏は、「楽しいも表裏一体」と述べているところもみても、その両方が分かる裏方、いわば名プロデューサーなのであろう。FIREBUG=火付け役。大輪の華をそれぞれのビジネスに咲かせるまさに火付け役だ。

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