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(更新: ORICON NEWS

喧嘩凸トーナメントに見る、エンタメとしての“口ゲンカ”の可能性

 幕張メッセで開催されている大型イベント『ニコニコ超会議2018』内で28日、ネット上での喧嘩動画をモチーフにした対面型口ゲンカイベント『超喧嘩凸トーナメント』が開催された。口ゲンカをステージ上で“ショー”として行った取り組みを見てみると、若者に人気のラップバトルとの共通点が見えてくる。

ニコ超でネット上の口ゲンカがリアルショーに

 ニコニコ超会議の「超配信者ブース」内のイベントとして、昨年に続き今年も『喧嘩凸トーナメント』が開催された。ニコ生をはじめとする配信プラットフォームでの有名人、野田草履、よっさん、NER、関慎吾、ジンギスカン、ほなちゃん、ノエル、海老原助蔵8名が参加し、(1)笑い・馴れ合い禁止(2)大声で一方的に喋ること禁止(3)同じことをループで繰り返すこと禁止(4)ただの悪口禁止(5)個人情報の暴露禁止(6)暴力禁止というルールの元、口喧嘩を繰り広げた。勝敗は、ニコ生視聴者の投票により決まり、唯一の女性参加者であるほなちゃんが準決勝で泣き出すというハプニングがあったが、決勝戦でノエルを打ち破ったよっさんが優勝を果たした。

 対戦では、視聴者数第一主義を批判したり、世の中に必要とされているのか、迷惑をかけるスタイルはいかがなものか、といった配信者として・人としてのスタイルについて批判が飛び交った。ブースには200人以上の観客が集まり、白熱の口ゲンカを見守った。

ジャンルとして下火になるも、形を変えて“ケンカ動画”は存在

 ニコニコ大百科(仮)によると、“喧嘩凸(けんかとつ)”とは、インターネット放送を通じて口喧嘩をする目的とし凸(通話)する行為を指す。中には、単純な罵り合いに終始する“不毛なバトル”もあるが、相手の配信者が行っている企画や、行動、考え方などを批判するテーマが喧嘩凸の人気動画だった。競技ディベートをストリートファイト感覚で行っている感覚にも近く、ひと昔前のゲームセンターで対戦格闘ゲームの“乱入待ち”のような感覚で、「喧嘩凸待ち」といった生配信を行う配信者も多数存在する。

 “喧嘩凸”の人気の理由として、企画配信に比べて手間がかからない、視聴者が集まりやすい、高度な議論や論破を目的としない限り口喧嘩自体は難しくない、といった理由が考察されている。つまり、配信者にとって手っ取り早く視聴者を集められる動画として、一つジャンルになっていたのだ。

 しかしながら、配信者同士のトラブルも度々発生し、運営側が過激な喧嘩凸動画をBAN(禁止・追放)する事態もたびたび発生。(今回のイベント優勝者のよっさんは過去アカウントBANされている)。現在は、一昔前に比べると、喧嘩凸(Skypeや電話での直接通話)は下火になっているが、代わりに直接対決を避けて、批判のメッセージ動画を配信するような傾向にある。その喧嘩凸が『ニコニコ超会議』でリアルイベントとして行われていたのだ。

フリースタイルダンジョンと喧嘩凸の共通点は“即興的論破”

 対面式口ゲンカともいえる今回の『喧嘩凸トーナメント』は、若者世代に人気を博している『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)のMCバトルと共通点がある。同番組は、交互でラップによるMCバトルを繰り広げ、審査員が判定を下して勝敗をつける。チャレンジャーが「モンスター」と呼ばれる強豪ラッパーと戦い、勝ち抜いて賞金獲得を目指すという内容だ。

 現在では、ラップに詳しくない人でも、MCバトル=ディスり合っているというイメージが浸透しているが、それは表面的な一面にすぎない。MCバトルの基本は「ヒップホップにかける想いの強さ」だ。つまり比べる相手が必要であり、その題材として目の前の対戦者をディスっているのである。攻める糸口を見つけて、“即興芸”としての熱い駆け引きが、視聴者を引き付けているといえる。

言いたいことも言えない世の中だからこそ、観客にカタルシスをもたらす口ゲンカバトル

 優勝者のよっさんに話を聞いたところ、今回の口ゲンカは、あくまでショーとしてのものと語る。「ネットでのケンカ配信はつい見てしまうものですが、知らない相手とケンカすることは単純に視聴者から嫌われてしまうことになります。相手のことを知らないと喧嘩はできない。今回は対面で喧嘩をしましたが、過激なことも言いましたが、本心ではない。結構頭を使って、エンターテイメントとしてやったつもりです」(よっさん)

 また、準決勝でよっさんに泣かされてしまったほなちゃんは次のように喧嘩動画の魅力を明かした。「私は普段“プロクレーマー”として企業の方に凸(突撃)しています。今回は“悪口”に聞こえて泣いてしまいましたが…相手のほころびを見つけて、そこを論破していくのが基本です。そういった喧嘩動画が人気なのは、今の世の中、“言いたくても言えない人”が多いから、見ていてスカッとするのではないでしょうか」(ほなちゃん)

 独自に観客に話を聞いたところ「喧嘩凸を知らなかったけれど、見ていて面白かった」(10代女性)、「普段ここまで熱い言い合いをしている人はなかなか見られないから新鮮だった」(20代男性)という声も。今回の『喧嘩凸トーナメント』は、新たなエンタテインメントとしての可能性も秘めていそうだ。

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