ORICON NEWS
菅田将暉 10年間の原動力「得体の知れないものにビビッていられない」
高校生の役を演じることで、寂しさも感じた
菅田将暉まぁ、これが本当に最後とも限らないですけれどね(笑)。年齢も25歳ですし僕と同じぐらいの年齢のメンツを集めて「これで高校生映画やります」って言ったら、エンターテインメントとして成立するとは思います。でもリアルなところではやっぱり厳しいのが本音かな…と。作品にもよりますけどね。
――観ている側としては菅田さんの制服姿に違和感は覚えませんでした
菅田将暉本当ですか? でも何て言うか、本当の高校生が出す“青さ”みたいなのってヴィジュアルでカバーできるものではないので。高校生役をやりながら懐かしさを感じてしまうっていうことは、つまり自分はもうその年代の人達とは違うゾーンにいるのかなって気がします。本当に寂しいことですけど。
菅田将暉現場が一緒になったのは数日だけだったんですけど、最初は何喋ったらいいのかわからなかったです。その中で浜辺さんが1番いい反応をしてくれたのが動画サイトの話題だったんですよ。僕は「今の子達は好きな音楽とかスポーツの話で盛り上がるのではなく、動画サイトなんだ!」って驚きました。ゲーム、アニメ、動画はやっぱり強いですね(笑)。
――自分の青春時代を振り返ってみるとそこはやはり違いますか?
菅田将暉僕の家はゲーム禁止の家だったので、見事に違いましたね。僕はすごく泥臭い遊びばかりでしたし、「今日は自転車でどこまで行けるかな!?」なんて、本当にアホみたいな日々しか送っていませんでしたから(笑)。
言いたいことを素直に言えず我慢している今の世の中に危機感を覚えた
菅田将暉事務所に僕にとって“軍師”みたいな人がいて(笑)、作品選びに関するコミュニケーションは常に取っていますよ。この映画を撮影していたのが24歳の時でまだ20代前半だったので、「今のうちにちゃんと制服を着てキラキラした作品をやっておかないとな〜」という気持ちもありました。
――20代は演じられる役の幅も広がる年代かと思います。
菅田将暉どの年齢でもその時にしかできない役ってあると思うので。しかも今の世の中は“キラキラ系少女漫画実写化ブーム”という噂じゃないですか。山ア賢人君みたいに自分も映画で壁ドンとかやってみたいな、という願望はあったんですが…結果ありませんでした(笑)!
菅田将暉少女漫画原作でキラキラしていて…という表面的な部分しか知らなかったんですが、やってみるとこの作品が世の中で受け入れられている理由がすごくわかりました。登場人物はみんな素直に言いたいことを口にしてしまうことにより孤立してしまう子ばかりで。最終的にみんな幸せになっていくんですけど、そういう物語が受け入れられているってことは、言いたいことを我慢して他人に合わせている人が多いのかな、と感じたんです。だからこそ春や雫(土屋太鳳)の姿が新鮮に映る。
ひと昔前であれば「誰が何と言おうと俺はこういうのが好き!」みたいな若者の自己主張がもっとあったはずなんです。だから今みたいな“言いたいことも素直に言えなくなっている世の中”になってしまっていることに若干危機感を持ちました。そんな思いを抱きつつも「まぁ、僕もそうだしな」なんてぼんやり考えながら演じていました。
菅田将暉確か、僕が舞台をやっていた当時、何もうまくいかず落ち込んでいて。そんな時に事務所の先輩がニヤニヤしながら「悩んでるね〜」って近づいてきたんです。ワケを話したら「いいんじゃない? 自分ができないことを知れるのは今だけだから」と言われて「おぉ〜なるほどな」と思いました。それからはだいぶ楽になりましたし、「むしろ自分は何ができると思っていたんだ!」って気づけた瞬間でしたね。
デビューから10年間の原動力 「得体の知れないものにビビッてもしょうがない」
菅田将暉僕もこの前ふとそれを思いました。『JUNON』のオーディションを受けた時から数えればもう10年経っているんです。『仮面ライダーW』のお披露目の時に人生で初めて大勢の人前に立ち、バーッとライトを当てられて何も見えなくなって。それで目を擦っていたら「新仮面ライダーの菅田将暉くん、涙を浮かべる」みたいな見出しで美談にされまして(笑)。その頃から考えると感慨深いです。当時は毎日現場に行ってそれでお金を貰って生活することになるなんて思っていなかったので。
――仮面ライダーになっても、俳優の仕事は意識していなかったんですか?
菅田将暉思ってなかったです。16歳ですからね。洗濯すらできない普通の高校生だったんで。想像してみてください。普通の高校生が明日から撮影所に通うんですよ。これはもうパニックです(笑)。とにかく勢いで突っ走ってきました。やることがいっぱいありましたから。
菅田将暉自分が作ったものが残ることですかね。自分がいいな、カッコいいな、素敵だなと思ったことを共有できている感覚というか…。美味しいものって人に伝えたいじゃないですか。そして実際に「美味しかった」っていってもらえたら嬉しいですよね。そしてその人がまた伝えていく。そのスタートにいれるということでしょうか。
――高校時代からの10年間、大変なこともあったかと思います。そんなつらいときはどう乗り越えてきたのでしょうか。
菅田将暉自分が「もっとできる」って考えているから挫折をすると思うんです。僕は逆に「はなからそんなうまくいくわけない」と考えられるようになった。だから結局は目の前のことをがむしゃらに頑張るしかないんです。批判の声とか気にしていてもしょうがない。たとえば、ネットで「春は絶対菅田将暉じゃないよね」と書かれてもその書いている人をきにしてもしょうがない。そこを気にして時間とカロリーを使う意味はないです。「お化けが怖くて夜歩けません」って言っているのと同じです。得体のしれないものにビビっていても本当にしょうがないじゃないですか!
菅田将暉全く想像してないですよね(笑)。日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞の瞬間は頭が真っ白になりまして。でもとりあえず選んで頂いたことはわかると。これは、受け取った意味を考えないといけないと思いました。並みいる先輩たちを差し置いて選んでいただいたわけですから。しかも、そんな受賞後の第1発目となるのが『となりの怪物くん』っていうポップな作品なのが個人的に超ツボで。権威ある賞を頂いた直後なのでハードな作品にいくかと思いきや、オレンジのブレザーを着て笑顔でいるわけですから。このギャップは相当おもしろいと思います。
俳優仲間の音楽活動をもっと盛り上げていきたい
菅田将暉これからは“自分のためだけに時間を使うこと”は終わってきたのかなと。やっぱり映画館に人をもっと呼びたいって思いが強くあります。ちゃんと僕らが前に出て「映画っておもしろいよ!」って呼びかけて、みんなを引っ張っていかないとって。
――“やらなくてはいけないこと”の1つに歌手活動も含まれているのでしょうか?
菅田将暉音楽に関して言えばあれは完全に僕のワガママです(笑)。好きなことには間違いないですね。
――現在は継続的な音楽活動をする俳優は希少ですよね。“昭和のスター”のように、俳優でありながら歌手としても成功を収める、そんな姿も想像できるのですが。
菅田将暉たまたま最近はあまりやっている人がいなかっただけじゃないですか? ただ、ありがたいことに僕の周りには「一緒に音楽やろうよ」と言ってくれる人達がたくさんいて。
ここ1カ月くらいで5人ぐらいの人から「(音楽を)一緒に作ろうよ」って声を掛けてもらっていて。やっぱりみんなもの作りが好きなんですよね。俳優仲間でも歌が好きな人っていっぱいいるので、僕自身も“俳優が歌う”ところをもっと見たいです。僕がある種の窓口的な人物となって、みんながやりたいことをできるようになる…っていうのであればそれは自分にしかできないことなのかなと思います。自分もその人達と過ごす時間が大好きなので、お互い楽しくやれるうちは続けたいですね。
(文/kanako kondo 撮影/RYUGO SAITO)
映画『となりの怪物くん』
イケメンで成績優秀なのに超問題児の春(菅田将暉)とガリ勉&冷血な雫(土屋太鳳)は恋人はおろか、友達もゼロ。2人はある日、雫が春の家にプリントを嫌々届けに行ったことで出会う。それ以来、春は雫を“友達”と認定し、「シズクが好き」と告白! はじめ無関心だった雫も、次第に春に心惹かれていく。そして春と雫の周りに個性的な友達が増え、春のライバル・ヤマケン(山田裕貴)の登場など2人の世界は変わっていくが…。
監督:月川翔
原作:ろびこ『となりの怪物くん』(講談社「KCデザート」刊)
出演:菅田将暉、土屋太鳳、古川雄輝、山田裕貴、池田エライザ、浜辺美波、佐野岳、佐野史郎/速水もこみち
主題歌:西野カナ「アイラブユー」(SMEレコーズ)
オフィシャルサイト:http://tona-kai.jp/
(C)2018 映画「となりの怪物くん」製作委員会 (C)ろびこ/講談社