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『R-1ぐらんぷり』に見る、ピン芸人成功の難しさ

  • 昨年の『R-1ぐらんぷり』で優勝すると、さまざまな物議を醸したアキラ100%

    昨年の『R-1ぐらんぷり』で優勝すると、さまざまな物議を醸したアキラ100%

 ピン芸人ナンバーワンを決めるお笑いの祭典『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)のファイナリストが先ごろ発表、決勝戦が3月6日に開催される。近年ピン芸人、とりわけ『R-1』出場者には異色の経歴に報道が集まる傾向にあり、ファイナリストを見てもどこか“正統派”とは異なる印象を持つ視聴者も多いだろう。では、そもそもピン芸人による“正統派”とは果たして何なのか? そこにピン芸人大成の難しさが浮き彫りとなってくる。

ピン芸人の話題は“異色”に偏る傾向に

  • 芸人兼OLのカニササレアヤコ

    芸人兼OLのカニササレアヤコ

 “ひとり芸日本一”を決定する『R-1ぐらんぷり2018』のファイナリストが決定。カニササレアヤコ(24)、河邑ミク(23)、霜降り明星・粗品(25)、濱田祐太郎(28)、おいでやす小田(39)、おぐ(41)、ルシファー吉岡(38)、チョコレートプラネット・長田庄平(38)、紺野ぶるま(31)、ゆりやんレトリィバァ(27)の10人がファイナリストとして3月6日に生放送される決勝戦に進出した。『R-1』常連組から新顔までバランスの取れたメンバーとなったが、報道でとりわけ注目を集めたのがカニササレアヤコと濱田祐太郎の2人だ。

 フリーの芸人兼OLのカニササレは、準決勝で「雅楽の演奏家」という設定で、楽器の笙(しょう)を演奏しながらネタを披露。ネタ同様に会社員としての仕事内容も“和風”かと思いきや、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の脳内を操るロボットエンジニアという最新のテクノロジーを使った職業だという。一方、濱田は左目は全く見えず、右目も明るさがわかる程度であるという盲目の漫談家。昨年10月に行われた『平成29年度 NHK新人お笑い大賞』の決勝にも駒を進めるなど、メキメキと頭角を現し自身の経験に基づくネタをテンポよくしゃべり倒してファイナリストの座を勝ち取った。

 また、今回のR-1グランプリの予選段階では、ホリエモンこと堀江貴文がエントリーすることも話題に。ホリエモンは『ドラえもん』の、のび太をイメージしたという衣装で登場し、将来の夢についての作文を読み上げるというネタを行い健闘するも、2回戦で敗退。ホリエモンのニュースも各社が報じ、ひとつの盛り上がりを見せたのだ。こうした異色の経歴や、破天荒な芸について注目が集まる背景には何があるのだろうか。

コンビよりも極端に“武器”が少ない! 実は高度な実力が求められるピン芸

  • 『R-1ぐらんぷり』第1回(2002年)優勝 だいたひかる

    『R-1ぐらんぷり』第1回(2002年)優勝 だいたひかる

 『R-1ぐらんぷり』過去の優勝者を振り返ってみよう。第1回目のだいたひかるの優勝にはじまり、浅越ゴエ、ほっしゃん(現・星田英利)、博多華丸、なだぎ武、中山功太、あべこうじ、佐久間一行、COWCOW多田、三浦マイルド、やまもとまさみ、じゅんいちダビッドソン、ハリウッドザコシショウ、そして昨年はアキラ100%。だが例えR-1で優勝をしても、その後のブレイクに繋がっているのは一部のみ。その理由に、お笑いとしての“ピン芸の難しさ”が挙げられる。

 コンビ芸ならば、正統派漫才のほか、コントならばさまざまな設定で多彩なシチュエーションを作り出すことが可能だ。さらにボケ、ツッコミ、最近ではWボケやツッコミ合戦、ボケとツッコミのスイッチというような新しいスタイルも見受けられる。一方、ピン芸人は、構成・ボケ・ツッコミといった“役割”を自分1人ですべてこなさなければならず、そのうえで分かりやすく笑えるものに仕上げなくてはならない。非常に高度な構成力が求められるのが“ピン芸”なのだ。

 『R-1ぐらんぷり』は開催当初、サブタイトルに「The Freestyle "WAGEI" Bout」を冠していた。参加者のお笑いへの手法はまさに“フリー”で、芸人たちが“ピン”でできることならなんでもアリの大会だ。異色の経歴や、他者ができないオンリーワンの特技を武器にするのは自然な流れであり、その結果「異色」とも評されるのはある意味仕方ない。ピン芸人の悲しい宿命ともいえるだろう。

“異色”はオンリーワンを貫いた結果、しかし諸刃の剣でもある

 “異色”の際たる例が2016年度の『R-1ぐらんぷり』王者・アキラ100%ではないか。オンエア時のキャチコピーは「見えたらごめんなさい!」であり、「絶対見せないdeSHOW」と題してさまざまなアプローチでお盆で股間を隠すという芸を披露。見えそうで見えないハラハラ感をあおり、ネタ中は悲鳴のような歓声があがった。だが、この裸芸がさまざまな物議を醸した。噺家の桂歌丸は「言っちゃ失礼ですけど、裸でお盆持って出てきて何が芸なんですか。私は違うと思うな。ああいうのを見て、面白いな、うまいなと思われちゃ困る。日本の言葉を使って笑いを取るのが芸人。『笑われている』ことになんで気が付かないんだろう」とアキラ100%を痛烈に批判。SNS上でもこれはお笑いなのか、といった意見も散見され、また、放送倫理・番組向上機構(BPO)が公式サイトで公開している「視聴者からの意見」でも青少年に悪影響があると苦情が寄せられたことも報じられた。

 ネットではYouTubeや多くのメディア、時にはTV番組でもでアキラ100%のネタをスロー再生し、本当に見えていないのかを検証するといったことも数多く見受けられるが、いまだ「見えた」という事実はない。何をもって“お笑い”とするかは難しいところだが、アキラ100%の裸芸は、は少なくとも“技術”としては芸といえるだろう。事実、多くのR-1王者がその後も継続的に活躍する例が少ない中、優勝から1年経った今も芸能イベントで引っ張りだこであることからも需要はあるようだ。

 さまざまなピン芸の形があるが、古典的な「漫談」「モノマネ」「1人コント」フリップなどを用いた「小道具芸」…やりつくされた中で自分だけのお笑いスタイルを突き抜けた結果、“異色”と称されることもあるのだ。

体を張ったピン芸は決して“異色”ではない! 如何に“独自フォーマット”を構築するかで明暗

  • 出川哲郎

    出川哲郎

 一方、お茶の間人気を獲得したピン芸人の例を見てみよう。活躍目覚ましいピン芸人の代表格として、ケンドーコバヤシ、バカリズム、劇団ひとり、陣内智則らが挙げられる。

 ケンド―コバヤシは、博識を武器に『アメトーーク!』(テレビ朝日系)などトーク番組で存在感を発揮。知らない人にもニッチなジャンルを面白おかしく紹介する“プレゼン企画”では外せない芸人となった。バカリズムは『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)で過去最多優勝タイ(ネプチューン堀内健と並ぶ3回)を果たしており、画力を生かしたフリップ芸や大喜利の実力者として知られている。陣内智則はBGMと音楽を駆使した“1人コント”を武器にネタ番組には欠かせない存在になり、今回の『R-1ぐらんぷり2018』の審査員も務める。劇団ひとりは芸名にも表れている通り、様々なキャラクターを演じ分ける一人芝居風の“憑依型”の笑いを披露し、その演技力は芝居のフィールドでも引っ張りだこだ。

 また、ベテラン芸人を例にとっても、出川哲朗や江頭2:50の強烈なリアクション芸は、現在のバラエティになくてはならない貴重な芸であることは周知の事実。つまり、体を張ったリアクション芸は決して異色でも色ものでもなく、ピン芸人にとっては、ある意味“正統派な芸”なのだ。そこにどのような自己流のスパイスを加え、視聴者に飽きられること無く、よりソリッドに芸を構築していくかで明暗が分かれる。

 先述のアキラ100%や彼ら売れっ子ピン芸人のように、自分だけの“お笑いフォーマット”を見つけられる稀有な才能でないと継続的な活躍は難しいのかもしれない。今年の『R-1ぐらんぷり』でも、傑出した力を携えたピン芸人による、新たなお笑いフォーマットの提示に期待したい。

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