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『AbemaTV』スタッフに聞く、“これをやりたい”で作る「ネットテレビ」その強みとは?
「これはできない」ではなく、「これをやりたい」がAbemaTVのベース
宮本博行38歳の僕が一番上ですね。若いスタッフだと24〜25歳です。
――若いメンバーで番組を制作することの意図は?
宮本博行僕はAbemaTVの立ち上げからいますが、まず“若い人に見てもらえるメディアを作る”ことが目的でした。なので、作り手も若い人でいこうと。また、サイバーエージェントという会社は若いスタッフが多く、その勢いを番組作りにも生かしたいと考えました。ただ、若さゆえのデメリットもあります。番組を作るうえで経験値が足りなかったり、制作会社の方や諸先輩方に意図せず無礼があったりとかもあると思います。ただ、経験値がないから失敗を恐れないし、壁にブチ当たった時の“突破力”が強い。「これはできないね」ベースで考えるのではなく、「これをやりたいよね」ベースで物事を進めていく強みがAbemaTVスタッフの“若さ”にはあります。
宮本博行一番多いのは35歳以下で約7割になります。
――地上波ですと、20代と30代の一部でテレビにまったく接触しない人が増えています。つまり、地上波とネット番組でコアな視聴者層が真逆なんですね。では、AbemaTVと地上波で番組作りに違いはありますか?
宮本博行言い方は悪いですけどAbemaTVはひとつのアプリ。チャンネル数が多いから色んな事にチャレンジ出来ます。“笑い”だけじゃない、様々な意味で面白いものが作りやすい環境だと言えます。つまり“多様な番組が共存出来る”点もネット番組の特徴です。
“下ネタだけだと能がない” それをどう“笑い”に変えるかが勝負
宮本博行こちらから提案もあれば、芸人さんから「こういうのやりたいんだけど」というケースもあります。
――宮本さんがAbemaTVで“やりたいことをやれた”という番組は?
宮本博行世にはびこるバラエティの定番を超えるべく、バナナマン日村勇紀さんが体を張って"新定番"を開拓していく『日村がゆく』という番組があります。これは、情報要素はまったくのゼロで“お笑い要素”だけ(笑)。多分、この内容は地上波では放送できません(笑)。そうした意味でも、作り手が笑いだけを追求した“やりたいことをやっている”番組です。他にも、世の中の多数派は「ブス」ですよね、をテーマに「ブス」の本音をお届けする「おぎやはぎの『ブス』テレビ」も、ネット番組ならではの内容だと思います。
宮本博行いやー、この内容で1時間番組は挑戦ですよ(笑)。しかも毎回アソコを見せてますからね。自慢じゃないですが、多分200本位のアソコがあったとして、僕は日村さんのアソコを見分けられますよ(笑)。
――爆笑
宮本博行他にも、チュートリアル・徳井義実さんがMCを務めている『DTテレビ』(AbemaTV)。これは、モテモテのアイドルも、クールなダンサーも、イケメンのスターも、みーんな最初は童貞だったよねと。そんな、童貞の、童貞による、童貞のための番組もあります(笑)。
――尖った番組ですね(笑)。でも、90年代の地上波では『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)、『ギルガメッシュないと』(TV東京系)など下ネタ満載の番組も普通に放送されていました。
宮本博行下ネタを笑いに変えるっていう手法は、それこそ僕なんかが小さい頃に観ていたテレビ番組の憧れです。ただ、下ネタだけだと能がないので、それをどう“笑い”に変えるかが大事だと考えています。
“ネット番組は予算が潤沢”は間違い!? 予算がなくても“やりたい番組”を作る
宮本博行他のネットテレビの場合、AbemaTVのように編成表があって、アニメやドラマを毎日放送するというわけではありません。そのため、ひとつのオリジナル番組に予算を集中投下出来る利点があると思います。AbemaTVの場合、そこは地上波と一緒で、毎日のレギュラー番組がある中で特番をやっていくという感じなので、いわゆる『戦闘車』や『ドキュメンタル』(共にAmazonプライム)のように、ひとつの番組に巨大な予算をかける感じではないですね。
――『日村がゆく』は予算も少ないと聞いています。ネット番組での潮流は、“予算をかけて好きなことをやる”に加えて、“予算がなくても好きな番組を作る”という流れなんですね。
宮本博行AbemaTVでは『♯声だけ天使』というオリジナルドラマを1月から放送しますが、これは地上波のドラマ並みに製作費をかけています。レギュラー番組がある中で、必要があれば特番的なものにお金をかけて制作しています。
――いま、ドラマを作っていくことの意義は?
宮本博行ドラマだったり将棋の番組だったり、“オリジナル性”が強くないとこれだけネット番組がある中で勝っていけないし、観てもらえません。オリジナル番組を強くしていくのが今後のテーマですね。
「常識がない人に非常識は作れない」様々なジャンルを学ぶ意義とは?
宮本博行まず、民放には“公共性”が求められるということ、そして“伝える義務”というものがあって、そうした中で工夫しながら頑張っている。逆にAbemaTVはチャレンジしていく立場なので、「観る人がいないところを観せていく」という事をやっている。その辺は地上波と良い補完関係があると思います。
――最後に、番組作りに携わる若いクリエイターたちに求めるものとは?
宮本博行常識がある人が良いと思います。一見すると普通のことなんですが、常識がない人に非常識は作れません。
――ある程度常識がないと、ここからが“非常識”という線引きができないと。
宮本博行僕はテレビ番組も好きですけど、映画や小説とかも好きです。そういう風に、なにかひとつのことだけを勉強するのではなく、いろんなジャンルを見て勉強して、様々な表現方法を学ぶことで“常識”が身につきます。表現者を目指すなら、まず挨拶がちゃんと出来ることと、そして色んな意味で常識を身につけることが大切です。