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鈴木おさむインタビュー『 “知らない強さ”でタブーにトライしたい』
脚本を読んで大島優子さんは驚いたと思います
鈴木実は全く関係ないんです(笑)。浩介くんはドラマ『昼顔』のような妻に浮気される切ない旦那の役から、コミカルな役どころまで器用にいろいろこなせる人。いつかお仕事してみたいとずっと思っていたので、今回ご一緒することで相手の臓物を引っ張りだすような役を演じて欲しいなと。経験値も高いし、存在感があるところもいいですよね。
美幸役は、うちの奥さんといろいろな女優さんを当てはめて考えていたんだけど、なかなかしっくりこなかった……。そんななか、パッと“大島優子”が思い浮かんだんです。当時舞台の経験がなかったし、ものすごくドロっとしたものをやったらおもしろいんじゃないかなと思って。優子ちゃんもうちの奥さんも栃木出身だし名字も同じってことで縁があるというか。まず秋元康さんにお願いしましたところ「優子をいいと思ってくれたのが嬉しい」と言ってくださったので、正式に話が進むことになりました。
――鈴木さんとAKB48とのお仕事ってあまりイメージになかったです。
鈴木これまでご一緒したことはありませんでした。でも、優子ちゃんとは仕事をしてみたかったので、この舞台で“大島優子の開けたことのない引き出し”をこじ開けたいですね。おそらく脚本を読んで彼女は驚いたと思います(笑)。
――かなり狂気的なお話ですね。
鈴木はい。もともとは、いじめられている女の子・美幸の復讐劇を小説として書き始めていたんです。でも、台詞がある舞台でやったほうが物語をしっかり構築できると思ったので、途中から舞台の脚本に変えました。とにかく劇中で使われる台詞や単語そのものがかなり過激なので、相当ビックリすると思います。
――例えばどんなワードが……?
鈴木本当に過激なので言えないです(笑)。美幸は子どもの頃から惹かれた言葉を日記にメモしたり、造語を作って書き溜めていて。いろいろな漢字や単語を見て、僕らが気にならなくてスルーしていることでも“どうしてこう書くのかな?”と引っかかってしまう。そこで自分で言葉を作っていくんです。例えば顔が晴れると書いて“顔晴る=がんばる”とか。その造語のなかにはヒドイ言葉もたくさんあります。ただ、それを大島さんが無理して言っている感じが出てしまったらおもしろくない。稽古はこれからですが、もしそうなったら多少変えていくかもしれません。
舞台一本で勝負している人には絶対に勝てない
鈴木舞台は演出だけでなく脚本も書くという部分が好きなんですけど、なによりお客さんに生で観てもらえる。お客さんの息づかいを感じられるのが舞台の醍醐味だと思います。舞台の脚本は、空気人形を膨らませて、さらにそこに血液も入れていく感覚というか。僕はもともとが放送作家なので、舞台一本で勝負している人には絶対に勝てない。だからこそ放送作家として学んできた経験と、本来舞台ではタブーとされることでも“知らないという強さ”でトライしてみたいんです。
――音楽は中田ヤスタカさんが担当されていますが、なぜ中田さんにオファーしたのですか?
鈴木物語がドロっとしているので、CAPSULEの曲を使うことで少しポップになるというか。CAPSULEはすごく悲しい曲もあるし、いろいろな心情表現ができる曲が多い。“大島優子が立つ舞台に中田ヤスタカの曲が流れる”というのもおもしろいかなって。メインビジュアルを蜷川実花ちゃんが担当したり、曲を中田さんにお願いしたりといろいろな化学反応が楽しめると思います。
――いままでに観たことがないような舞台になりそうですね。
鈴木僕が脚本と演出を担当した舞台『芸人交換日記 〜イエローハーツの物語〜』(2011年)に出演した田中圭くんが、いまだにあの作品に強い想いを持ってくれていると知ったときにすごく嬉しかったんです。優子ちゃんも浩介くんも今後たくさん仕事をしていくなかで、『美幸-アンコンディショナルラブ-』だけはなんか胸に残っているというものになって欲しい。ある意味、そうならないと失敗だと思って挑んでいます。名演出家、名脚本家と今後仕事をしていくなかで、僕とやったものだけはふたりにとってちょっと違ったなと思ってもらえたら嬉しいです。