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声優と女優……唯一無二のポジション確立した戸田恵子
アイドル歌手から声優、俳優業へ
一方、洋画や海外ドラマの吹き替えはと言えば、やはりこちらも錚々たる大スターを担当している。『プリティ・ウーマン』のジュリア・ロバーツ、『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスター、『エイリアン』のシガニー・ウィーバー、『X−ファイル』のスカリー調査官などなど、今さらながら「あれもこれも戸田恵子だったのか!?」と驚嘆せざるを得ないくらいだ(それぞれ同女優で複数作担当している)。しかしながら当時、ジュリア・ロバーツとジョディ・フォスターが同じ声だと気づく人はいなかったし、とうぜん戸田も演じ分けていたのだ。
そして戸田の女優業。1994年に金子修介監督の映画『毎日が夏休み』で本格デビューを果たし、三谷幸喜脚本『総理と呼ばないで』(田村正和主演、フジテレビ系)で連続ドラマに初出演したが、やはり戸田と言えば、『ショムニ』の情報通のOL・徳永あずさ役が有名。『総理と呼ばないで』(同系)ですでにお局的な役だったが、戸田は女優として全国区で認知されたのは相当キャリアを積んでからとなった。その後もNHKの連続テレビ小説に3作出演(1作は『まれ』の語り役)、2時間ドラマでは主役を張るなど、コンスタントな女優活動を行ってきている。
声優も女優の一部と捉える戸田恵子のスタンス
もともと劇団出身の戸田だが、声優業を経て培った“演技力”を女優業にも活かしているのが、現在の活躍につながっている。また、アニメ声優の仕事はほぼアンパンマンのみとは言え、週1回のレギュラー放送や年2回の映画、さらに劇中歌を歌ったり、膨大なキャラクターグッズやおもちゃの声も当てたりしているとすれば、アンパンマン絡みだけでも相当な仕事量。しかし、子どもから親の世代まで、幅広い世代に親しまれるという強力なバックボーンがあるからこそ、女優・戸田恵子の認知度は、上がることはあっても下がることはないとも言えるのである。
考えてみれば、これだけ多くのアニメキャラの声優をしており、女優へと進出し、そしてこれだけの成功をおさめている人物というのも珍しいのではないだろうか。戸田恵子が唯一無二であると言ってもいいだろう。今では、女優としてのポジションを確立させたうえに、“女優として”吹き替えやナレーターの仕事をこなしているようにも見える。戸田は“マルチ女優”としての道を歩き、芸能界でも屈指の“立ち位置”を獲得しているといえるだろう。
(文:五目舎)