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(更新: ORICON NEWS

声優と女優……唯一無二のポジション確立した戸田恵子

 現在放映中の月9ドラマ『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(フジテレビ系)で、主人公・石原さとみの母親役を演じる戸田恵子。現在58歳のベテラン女優で、『ショムニ』(同系)のお局的なOL役が印象に強いが、最近では三菱電機のCMで女優・杏の義母、夫のオードリー・若林正恭の母親というちょっと小うるさそうな姑役でもおなじみ。今ではすっかり戸田恵子=女優というイメージだが、そもそも彼女は錚々たるアニメの主人公や洋画のヒロインなどの吹き替えを担当してきた超大物声優でもある。そんな戸田恵子の女優・声優としての“立ち位置”について、改めて検証してみたい。

アイドル歌手から声優、俳優業へ

 戸田はデビュー当初はアイドル歌手だったがさっぱり売れず、人気声優の野沢那智に出会い、野沢の劇団に所属したことをきっかけに声優業に進出。1979年、『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)のマチルダ役で一躍有名になり、以降『ゲゲゲの鬼太郎』(フジテレビ系)の鬼太郎役(3代目)、『きかんしゃトーマス』(同系)のトーマス役、そしてなんと言っても『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)のアンパンマン役でその名を馳せることになる。特に子どもたちにとって戸田は、四半世紀(放送開始は1988年)にわたって超スーパースター(の声)なのだ。

 一方、洋画や海外ドラマの吹き替えはと言えば、やはりこちらも錚々たる大スターを担当している。『プリティ・ウーマン』のジュリア・ロバーツ、『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスター、『エイリアン』のシガニー・ウィーバー、『X−ファイル』のスカリー調査官などなど、今さらながら「あれもこれも戸田恵子だったのか!?」と驚嘆せざるを得ないくらいだ(それぞれ同女優で複数作担当している)。しかしながら当時、ジュリア・ロバーツとジョディ・フォスターが同じ声だと気づく人はいなかったし、とうぜん戸田も演じ分けていたのだ。

 そして戸田の女優業。1994年に金子修介監督の映画『毎日が夏休み』で本格デビューを果たし、三谷幸喜脚本『総理と呼ばないで』(田村正和主演、フジテレビ系)で連続ドラマに初出演したが、やはり戸田と言えば、『ショムニ』の情報通のOL・徳永あずさ役が有名。『総理と呼ばないで』(同系)ですでにお局的な役だったが、戸田は女優として全国区で認知されたのは相当キャリアを積んでからとなった。その後もNHKの連続テレビ小説に3作出演(1作は『まれ』の語り役)、2時間ドラマでは主役を張るなど、コンスタントな女優活動を行ってきている。

声優も女優の一部と捉える戸田恵子のスタンス

 こうしてみると当たり前だが、戸田は顔が出るぶん世間では女優として認知されている。戸田自身も最近は、アニメの声優活動はほぼアンパンマンのみで、仕事の軸としては女優に移しているようだ。戸田自身「アンパンマンは丸い顔だからある程度優しい声で」と言うように、キャラクターの第一印象を大切にしながら、それぞれのキャラを自然に演じ分けているし、実際トーマスとアンパンマンが同じ声だと気づいていた子どもはほとんどいなかったのである。

 もともと劇団出身の戸田だが、声優業を経て培った“演技力”を女優業にも活かしているのが、現在の活躍につながっている。また、アニメ声優の仕事はほぼアンパンマンのみとは言え、週1回のレギュラー放送や年2回の映画、さらに劇中歌を歌ったり、膨大なキャラクターグッズやおもちゃの声も当てたりしているとすれば、アンパンマン絡みだけでも相当な仕事量。しかし、子どもから親の世代まで、幅広い世代に親しまれるという強力なバックボーンがあるからこそ、女優・戸田恵子の認知度は、上がることはあっても下がることはないとも言えるのである。

 考えてみれば、これだけ多くのアニメキャラの声優をしており、女優へと進出し、そしてこれだけの成功をおさめている人物というのも珍しいのではないだろうか。戸田恵子が唯一無二であると言ってもいいだろう。今では、女優としてのポジションを確立させたうえに、“女優として”吹き替えやナレーターの仕事をこなしているようにも見える。戸田は“マルチ女優”としての道を歩き、芸能界でも屈指の“立ち位置”を獲得しているといえるだろう。

(文:五目舎)

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