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さだまさし、自己模倣は芸術の堕落「もっと不思議な曲や新しい言葉を」

最近の若いアーティストはみんな貪欲で真面目、言ったことをしっかりメモしてる

――最近のさださんは、若手のアーティストとの交流に積極的な気がします。
さだ 落語家の間では以前からさだに可愛がられていたら売れるというジンクスがあるんですよ。もともと、後進に目をかけるのが好きなんですね。還暦の時の記念ライブが全編コラボだったこともあって、最近は若いアーティストともずいぶん親交を深めてますね。最近の人はみんな貪欲で真面目だね。たとえばナオト(・インティライミ)のコンサートに先日も行ったんですが、誉めなくていいから何か気になったことを言ってくれっていうんですよ。こんなところが気になったいけど、どう? って言うと、そうそう、そういうのを言って欲しかったってしっかりメモしているのね。

――意外に勤勉な若者が多いと(笑)。
さだ 若旦那はテレビ局の人に紹介されたんだけど、紹介されて5分間いきなり俺のことを語るんだよ。俺のことを本人に語るんじゃない!って言ったんだけど(笑)。やっぱり、若いアーティストといると楽しいね。そこに噺家が混ざって、俳優や女優が来たりすると、それぞれに世界観があるから、話を黙って聞いているだけでも楽しいみたいよ。

――そうやって後進の世界を広げてあげるのもさださんのこれからの役割ということでしょうか。
さだ そうでしょうね。僕は20代の半ばから老人としか酒を飲まなかったからね。それこそ葦原英了、谷川徹三、山本健吉、森敦、遠藤周作、こういった大作家や文芸評論家の方たちと飲んでさまざまなことを教えてもらっていたんだね。井伏(鱒二)先生の家にも行っているしね。(マネージャーの)廣田も一緒に行ったから、廣田に「どうだった?」って聞いたら、「ババアみたいなジジイでしたね」って言われて。連れて行って損したと思ったね(笑)。

アンコールは客席がアーティストに要求するもの

――最近、T.M.Revolutionの西川さんのTwitterでの発言以来、アンコールのことを考える動きがあります。さださんはアンコールについてどう考えていますか?
さだ 最近の若いアーティストのコンサートを見に行くと、客席がアンコールは当たり前だと思い込んでいるところがある。でも、それは間違いだと思う。アンコールは勝手に始まるものではなく、本編が終わってもまだ聞き足りない客席がアーティストに要求するものだよね。だから、呼ばれないのに出ていく必要はないと思う。もし出ていく前に拍手が鳴りやんだら僕はそのまま帰る。逆にアンコールをやって、まだ拍手が鳴りやまなければ、また出ていく。で、もういいよね、って思いながら袖に引っ込んで、まだ拍手が鳴りやまなければ、また出ていく。

――つまり、その状況いかんで決めていくものだと。
さだ 僕は6時にコンサートをスタートしてアンコールが続いて10時過ぎまで歌ったことがある。10周年記念コンサートの最終日の大阪フェスの時だけど、この時はみんな帰らなかったな。最後にはステージに座って、「お願いだから帰って!」って懇願してみんなに帰ってもらいました(笑)。アンコールは要求されればナンボでもありまっせ、っていうのが僕の考え方。みんな、気持ちはそうなんじゃないの?

――TMR西川さんも「客席から求められ、それにこたえる心と心の呼応がアンコール」と言っています。ただ、Twitterに書き込んだ時の公演では、「アンコールを頂きステージに出ると、スマホを触ったり、着席して談笑されてることがあるので」と、客席がアンコールを本当に要求しているのかどうかがわからない状況が気になったようです。
さだ そういう時は出なきゃいいんだよ。アンコールは本編ではないんだから。そこはビジネスのようでビジネスじゃないところがある。だから呼ばれれば何度でも出るんだよね。

――そこはお客さんとの闘いですか?
さだ サービスだね。リクエストしてくれる限りやります!っていう。お客さんの中には、あれだけ一生懸命やってくれたんだからこれで解放してあげようよという考え方の人も多い訳で。そういう人達の意志を乗り越えて、それでもまだまだ呼ぶんだったら、いいよ行くよっていう覚悟はあるね。でも、アンコールって面白いもので、こちらがすごくいいステージができて、やる気まんまんなのに、いいステージだったからって客席がアンコール1回で満足してしまって、俺はまだ出たいのに出れなくて「最近のお客さんは躾がいいね」ってつぶやきながら楽屋に戻って終わっちゃうってこともあるよね。アンコールも生き物だと思うね。

――会館の使用制限時間もありますしね。
さだ まあね。ただそれは俺の知ったこっちゃない (笑)。呼ばれる限り、俺は関係なくやるよ。ただ、その日中にどうしても終わらなければいけない事情がある時は別だけど(笑)。そういう時は本編を計算して、何度かアンコールが来てもいいように持っていく。だから客席に悟られずに満足してもらいながら無事コンサートを終えることができるし、お客さんにも「もうこんな時間! 楽しかった」と満足してもらえるだけの技量はあるんじゃないかな。

――さすがコンサート回数日本一ですね。
さだ 修羅場も感動もくぐってきたからね。以前、自分自身がすごく感動して絶対に帰りたくないコンサートいうのがあった。でも、しばらくするとみんなぽつぽつと帰っていくんだよね。「ああ、やっぱりみんな帰るのね」って、ステージの袖で置いてきぼりになったような気持ちになったこともあるし(笑)。色々なことがあるからステージは楽しいよね。どうしてもお客さんが帰らなかった時に、その場の判断で「祈り」っていう曲を演奏して、最後のラララのフレーズを客席が大合唱するように煽って、演奏を順次止めて袖に下げて、最後はピアノ1本にして、途中でそのピアノも帰らせて、僕も指揮をしながらだんだんステージを離れて、楽屋に帰って着替えてね。楽屋口を出る時に客席がまだ歌ってて、それを聞きながら「みんな、ありがとう」ってつぶやきながら帰ったこともあったね(笑)。4000回もやっていると、いろいろなことがあるよ。

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