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最近よく聞く“2.5次元”、その定義とは?
【特集】今さら聞けない『ラブライブ!』入門
“3次元よりの2.5次元”と“2次元よりの2.5次元”が存在する
では、「3次元寄りの2.5次元」で考えてみると、今年3rdシーズンがスタートするミュージカル『テニスの王子様』が代表的な例なのだろう。通称「テニミュ」として人気を博しているが、誰もが知るように、このミュージカルの元となっているのは、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていたマンガ『テニスの王子様』だ(現在続編が『ジャンプSQ.』で連載中)。3rdシーズンとはいうものの、初演は2003年4月。10年以上の歴史を持ち、城田優や斎藤工といった実力派俳優を送り出すなど、「若手俳優の登竜門」として注目を集めてきた。
「テニミュ」の初演から遡ることさらに10年。1993年8月に初演が行われたのが、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』(通称セラミュー)である。こちらはテレビアニメ『美少女戦士セーラームーンR』(テレビ朝日系)の放送中に「外伝」というポジションで開幕したプロジェクトだったが、舞台設定を変えながら2005年まで続くロングランを記録した。2013年の復活後も人気は衰えず、この1月には初の海外公演が上海で催された。
元祖“2.5次元”ミュージカルは“宝塚”! その歴史は意外に古い
このように書くと、この「2.5次元」的な動きは極めて近年、平成に入ってからのことのように思えるが、もちろんそんなことはない。現在も上演され続けているのでおそらく誰もの記憶に深く根ざしているだろうが、宝塚歌劇団による『ベルサイユのばら』は2.5次元ミュージカルの先駆者的存在と言っていいだろう。1974年の初演から40年以上、500万人超の動員を誇り、現在宝塚OGとして芸能界で確固たるポジションを築いている錚々たる顔触れがこの舞台に立ってきた。まさに、日本が世界に誇る一大ミュージカルこそ、元祖「2.5次元ミュージカル」なのだ。
では、このところ続々封切られているコミック原作の実写化映画も「2.5次元」なの? という疑問も出てくるだろう。概念的には適合しているともいえるが、“実写化”という時点で、再び「2次元」化されているため、個人的には「2.5次元」とは言い難いようにも思う(先に引用した「ニコニコ大百科」の見解とは異なってくるが)。とはいえ、この例を「2.5次元」に加えるとなると、その数や歴史もまた大きく広がってくる。古くは、『赤胴鈴之助』や『月光仮面』といった人気マンガの実写化が行われており、あの『サザエさん』も時代時代に俳優によって演じられてきた実績がある。もはや、「2.5次元」の世界は限りなく広いとさえ言えよう。
近年は“2.5次元”を取り巻く環境に変化も
とはいえ、上記の例は、観客が“生身”の演者を観ることを捉えて「2.5次元」とした、いわば「3次元寄りの2.5次元」ということになる。ならば、当然その逆も存在するわけで、アニメやゲームの2次元キャラクターを3次元化するフィギュア、ポリゴンなどの3DCG技術とモーフィングを用いて本来「2次元」のものを「3次元」に映し出した「初音ミク」のようなケースや着ぐるみ(ドーラー)系のコスプレなどは「2次元寄りの2.5次元」というカテゴリーで捉えることも可能だ。3Dプリンターの普及やデジタル処理が容易になった現代においては、あらゆる場所に「2.5次元」が転がっていると言ってもいいだろう。
2月10日、11日に東京・国立代々木第一体育館でライブを行ったでんぱ組.incのリーダー・相沢梨紗は、自身のキャッチフレーズを「2.5次元伝説」と謳っている。さらに、同じく2月18日には、「2.5次元ダンスチーム」を名乗るアルスマグナというユニットもデビューするなど、「2.5次元」を取り巻く環境はめまぐるしい変化と進化を遂げている。言葉の響きこそ目新しく面白いが、その歴史は70年代から脈々と受け継がれてきている、日本ならではの「伝統」に満ちあふれたものだ。宝塚から続く2.5次元は、一過性のものではなく、これからも継続していく。
(文:田井裕規)